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Book Dive  作者: カオス
19/28

全面戦争の開始1

{神崎side}



「――――ふはっ。はぁ、はぁ……。やっぱりこれが限界っすよ~」



 体育館のように広々とした空間に葛西の荒い息が漏れた。



「りくちゃん凄いよ! もうそんなに使えるようになるなんて……」



「確かに。葛西は才能があるかもな」



 俺達がそう言うと、したり顔で能力の練習を始めた。



 あれから俺達はギリス政府の事やBDエネルギーについて色々と教えてもらった。



そして、今は能力の練習のために拠点に存在する訓練場に足を運んでいた。俺は改めて教えて貰ったことを頭に浮べる。



 ――ギリス政府の勢力は現段階ではおよそ、3千。その中でダイバーは22人。他の連中は様々の小説からギリス政府の仲間となった犯罪者ばかり。


そしてエスポワールの勢力は2千弱。ダイバーの数は35人。さらに俺達と高崎の組織プロトポロスだ。


数的には少し負けているが、ダイバーの数では此方が上。



 ギリス政府の拠点は既にわかっているが、拠点がある小説には厳重なプロテクトで守られており、ダイブするだけでも相当なリスクを要するらしい。



さらに奴らは雨宮以外にも多くの人質を拘束しているため、例え壊滅に追い込めなくてもその人質を助 けることが今回の最優先の目的となるだろう。



 そしてBDエネルギーについて。このエネルギーはどうやら個人で有するの量が違うらしい。



鈴は平均的な量。葛西は平均よりもはるかに少ない量。そして、俺は平均の数倍多いBDエネルギーを持っているらしい。



葛西はその事を聞いて落胆していたが、BDエネ

ルギーを増やす方法もあると聞いて、実践している。



 その方法はBDエネルギーを極限まで使う事で、収納量が増えるというもの。能力の向上についてはひたすら練習するしかないそうだ。



「葛西の能力は使い勝手がよさそうだな?」



「でしょ! そうなんすよ~。俺の能力――模造せし世界にかかれば何でも創れちゃうんすよ!!」



葛西は能力で自身がイメージした物体を作り出すことが出来る。大きさや機能に比例してBDエネルギーを消費する仕組みらしい。



当然、高性能の物体を創造しようとした場合、相当量のエネルギーを浪費する。



 鈴は俺達二人を恨めしげにじっと見てこう言った。



「二人ともいいなぁ……。私に能力なんて――」



「何を言ってるんだよ! 鈴の能力はこの世界の中でも珍しい能力って言われていたじゃないか!」



「そうだけど……」



「俺達には鈴の能力が必要なんだよ?」



 俺がそう言うと鈴は頬をプクーッと膨らませる。



「――大翔さんには言われたくないです!」



「そうっすよ! いったい先輩の能力はどうなっているんすか? たしか……、感情によって能力が変化するとかでしたっけ?」



「あぁ。信じないとは思うが、俺はデスワールドで自身の心の中を見たんだ。そして、この能力が強い感情、意志によって変化していることに気がついた」



 二人が能力を見せてくれと言うので、俺は意識を集中させ身体の奥底に眠るBDエネルギーを感じ取る。



 ――まずはバランス的に向上する白の力。



 身体から溢れていた透明なエネルギーに色が付いていき、 白い光へと変化した。



「これが最初に芽生えたバランス的に身体の能力が向上する力だ。トリガーは強い意志だろう。そして――――」



 

俺は白い光を赤へと変化させる。すると、二人は目を見開く。



さらに俺は赤い力を黄色へと変化させ、最後に先程新たに得た哀しみの青い力へと順々に変化させた。



「これが哀しみの青い力。守りに特化した力だ。本当はもう一つあるのだが、どう頑張っても呼び起こすことが出来ない」



「もう一つの力って?」



「――圧倒的に攻撃に特化した狂気の黒い力」



「狂気……?」



「あぁ。暗黒魔王ユゼルと戦闘を行った時に俺は一度狂気にのまれた……。そこで生まれたのが狂気の力だ」



「狂気にのまれたって、大丈夫なんすか!?」



「今はなんともない。だが――、それ以来その力を感じることさえも出来なくなってしまったがな……」



「そんな恐ろしい力はないほうがいいですよ! ――大翔さんには似合いません!」



「そうだな! 先輩はボケーっとしているのがお似合いっすよ! ははっ」



「おい。それって褒めてないだろう?」



「ははは。――ばれました?」



 葛西はそう言って舌を出す。それから俺達は雨宮がいない悲しみや不安を埋めるかのように能力の練習を続けるのであった。



 ――三日後。俺達はエスポワールのボス一ノ瀬と共に第一拠点オーニラへと足を運んでいた。



 俺達も含め幅広い年齢層の人間達がテーブルを囲む。



知っている顔は一ノ瀬、高崎、獄道の三人しかおらず、場違いな感覚に見舞われていた。そんな中、一ノ瀬の声が室内に響く。



「それでは今からギリス政府との戦争の会議に入ります! 今回、最優先目標は人質の解放です。そこで拠点を守る防衛部隊。


人質を解放する潜入部隊。直接戦闘を行う攻撃部隊の三つの部隊に分けます。攻撃部隊

は高崎さん達プロトポロスに任せます。


そして防衛部隊はエスポワールが担当しましょう。最後に潜入部隊には神崎さん、葛西さん、西村さん、獄道さん、私の四人です。みなさんそれで構いませんね?」



 この事は予め知っていことだ。本当は鈴には防衛部隊に入って貰うつもりだったのだが、鈴は決して首を縦には振らなかった。



そのため、俺達と行動を共にすることになったのだ。



 一ノ瀬の提案に誰も反対意見はない事を確認すると、獄道が口を開く。



「今回は此方が奴らの本部に襲撃する形になるため、大きなリスクを背負うことになるだろう。特に攻撃部隊は注意してくれ!  潜入部隊は攻撃部隊が敵と戦闘を行い次第、他の小説を経由して潜入する。


俺達の目的は人質の解放だ。心してかかれ! 防衛部隊は敵を一人もこの世界に入れぬようするのが役目だ。


ここが落とされるのは戦争の負けを意味する。覚悟して取り組んでくれよ! 皆! やっと奴らを滅

ぼす時が来た! これは正義の戦いだ! 己の目指す正義を忘れるな! 必ず勝利を収めるぞ!!」



 獄道の熱気の篭った言葉に俺達の心まで高ぶり、皆と同じく拳を高く振り上げていた。



「それでは皆さん武運を祈ります! 作戦決行日は3時間後の0時! それでは解散!!」



 一ノ瀬がそう言うと部屋には俺達と獄道、一ノ瀬を残していなくなる。俺達はテーブルに写された地図に視線を落とす。



「これが私達が潜入するギリス政府の本部です。奴らはファンタジー小説に存在した巨大な国を縄張りとしています。


そして、おそらくこの城に人質が存在すると思われます。攻撃部隊が本部と、他のギリス政府の拠点へ攻撃を開始したと同時に、城へと潜入します。

いいですね?」



「――他の拠点へも攻撃するのか?」



「はい。相手の戦力を分散する作戦です」



「此方の戦力も分散してしまうことにならないか?」



「たしかにそうです。しかし――、本部にだけですと、その隙に他の拠点の奴らが私達の拠点を攻撃して来ないとも限りませんから」



「もし相手が自分の城を捨てて、俺達の拠点に一斉攻撃を仕掛けてきた場合はどうすんすか?」



 葛西の一言に一ノ瀬は呆れた表情を見せてこう言った。



「それはないと思いますよ? 本部を捨てることは戦争の負けを意味します。なぜなら、本部には膨大な資金、資源、データが詰まっていますからね。そ


れに、おそらく奴らの本部に支配者の本があると思います。そんな大事な物を捨てることがあると思いますか?」



 一ノ瀬の言い分は最もだ。しかし、葛西はまだ納得していないようすだったが、渋々頷いた。



「次に役 割について話します。神崎さん達はなるべく戦闘を避けて、人質の救出に専念してください。敵と遭遇した場合は私と獄道さんが対処しますので。――特に西村さんは命を大切に。貴方が私達の頼みの綱なんですからね?」



「はい。頑張ります!」



 鈴は真剣な面持ちで答えた。一ノ瀬は柔らかな笑みを浮かべ頷き、こう言った。



「――そろそろ時間ですね。それでは……行きましょう!」



『はいっ!!』








{雨宮side}



「やっと会えたな。真理奈……」



 私の目の前には白髪が混じった初老の男性。彼は私を此処まで連れ来た男に言葉を放つ。



「お前はもういい。ご苦労だった」



「はい――。私はこれからエスポワールとの戦闘に参加します」



「あぁ。頼んだ……」



 男が出て行くと初老の男性は口を開く。



「久々だな……。大きくなった――」



「……………………」



「そんな怖い顔をするな。――お前のためでもあるのだから」



「私のためだと? ――ふざけるな。世界を破壊することが私のためだと言うのか?」



 私が鋭い視線を向けると、彼は心底疲労した表情を見せる。



「破壊するんじゃない。――作り直すのだ。平等の世界に……」



「平等な世界? たくさんの人の屍の上に作られた世界が平等だと言うのなら、私はそんな平等はいらない。あんたは間違っている!」



「お前にはまだわからないだろう……。それよりも良く私の事を調べたな? 何処でそんな情報を手に入れた?」



「……………………」



 私は答えない。彼の中では既に答えは出ているのか喋りだす。



「答えないか……。まぁ、だいたい答えはわかっている。美恵子がお前に教えたの だろう?」



「――気安く母さんの名前を呼ぶなっ!」

 


「ふん――。やはりか……。美恵子は私の考えに気が付いていたんだな」



「そうだ! 母さんは私にあんたを止めてくれと頼んだ! 母さんは最後まであんたを信じていた……! 死ぬ寸前まであんたの事を信じていたんだ!! なのに、なのに……! 


あんたはその気持ちを踏みにじった! 勝手に自分が正義だと思って、支配者の本を使用して多くの命を奪った! ――なんでこんな事するんだよっ! ――――父さん」



 父さんは此方に視線を向ける。彼の瞳にはなんとも言えぬ感情が詰まっているように感じ取れた。



「お前もいつかわかるだろう……」



 父さんがそう言った瞬間。私の意識は急激に遠のいて行く。



視界がブラックアウトする間際、彼に視線を向けると、彼の右手には光り輝く一冊の本が握られていた。



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