交差していた互いの気持ち3
{神崎side}
「銀が死んだ………………?」
整えられた黒髪に黒いスーツを身に着けた男の声が室内に響く。
俺達が黒津地に託された本の中にダイブした後、即座に多くのエスポワールの人々と思われるダイバーに身柄を拘束された。
そして、目の前に座る人物。一ノ瀬 陣の元へと連行された。
「あぁ。突然ギリス政府が襲撃して来たらしい……」
「――他の皆さんはどうなったんですか?」
一ノ瀬は今にも泣き崩れそうな表情で問う。
「あの現場には黒津地以外のダイバーの姿はなかった。奴が言うにはギリス政府に捕まった可能性が高いと――」
「そう……ですか――――」
室内にはどんよりとした空気が漂う。暫くして、一ノ瀬は顔を上げ、悲壮感を漂わせながら言葉を漏らした。
「銀から君達には世話になったと聞きました……。私からも改めて御礼を申し上げます。部屋を用意しますので、今はゆっくりと休んでください……」
一ノ瀬はそれ以上は喋ろうとせずに悲痛な面持ちで黙る。俺達が部屋を出ると雨宮が言葉を漏らした。
「これからどうすればいいんだ――――」
「まずは心を休める時間が必要だ。特に鈴と葛西には な」
「俺は大丈夫っすよ。それより、鈴が……」
「………………私も大丈夫です」
鈴はそう言ったが今にも倒れそうにフラフラとしており、血色もとても悪い。
部屋に着くと鈴は倒れこむようにベッドに潜った。俺達は鈴を休ませた後、雨宮に与えられた部屋に集まる。
「葛西は本当に大丈夫か?」
「――俺は大丈夫っす。神崎先輩と雨宮さんは大丈夫なんすか?」
「今回は流石に厳しかったが私も問題ない。――――神崎。君こそ一番つらいだろう? 以前にあんな事もあったしな……」
――あんな事か。ガンマの事を言っているのだろう。たしかに俺は以前ガンマをこの手で殺した。何時かはこの罪を償なわなければいけないだろう……。
「俺もギリス政府の連中と同じで人殺しだ……」
『違う(っす)!!』
葛西と雨宮は口を揃えて否定の言葉を放つ。
「神崎はギリス政府と同じなんかじゃないっ!!」
「そうっすよ! 先輩は俺達の命を救ってくれったっす! 先輩は俺の憧れっす!!」
俺は上手く言葉が出せなかった。そして改めて感じる仲間の暖かさ。
――俺は何を言っているんだ……! 俺にはこんなにも素晴らしい仲間がいるじゃないかっ――。
「――――俺は自分が孤独だと感じていた。誰もこんな殺人者を信じてくれないと何処かで思っていた……。だけど違ったんだな。俺は一人じゃなかった。――――ありがとう」
「――まったくだ! もうそんな事言うんじゃないぞ? わかったな!?」
――例えどんな理由があろうとも、人を殺したという事実が変わるわけではない。俺は――人殺しだ。一生この罪を背負っていかなければならない。
だけど――そんな俺には見捨てないで信じてくれる仲間がいるんだ。
暗い話題を変えるように葛西が口を開いた。
「それにしても、ギリス政府はこんなにも狂った奴らだったんすね」
「そうだな。私も戦争とはこんなにも残酷なものな んて思わなかった。――――りく君はこれからどうしたい?」
「俺は……本音を言うと鈴をこれ以上危険な目に合わせたくないっす。だけど、このままみんなを見捨てることも出来ないっす」
「神崎はどう思う?」
「俺はどんな事が起ころうとこの世界に残るつもりだ。この世界を救うわなければいけないしな」
雨宮は目を丸くして、口を開く。
「まさかきみからそんな言葉が出てくるとは……」
「――そんな言葉って、お前も俺を巻き込んだ時に言っていただろう?」
「あの時のきみは真剣には捉えていなかっただろう?」
「まぁな。実際今でも世界が危機に陥っているとは考えられないがな」
――本当は何か目標がないと立ち直ることが出来ないからなんだが……。
「俺達って今までたくさんのダイバーに会ってきたじゃないすか? もし、現実世界に危機が迫っているなら誰かしらその言葉について話が出てもいいと思うんすよ。
だけど……、今まで一度もそれはなかった――。一つ雨宮さんに聞きたいっす! 雨宮さんは何処でそんな
情報を得たんすか? あの高崎って奴からすか?」
雨宮は何故か急に黙り込みむ。そして、口を開こうとした瞬間――――――――室内に侵入者を告げるサイレンが鳴り響いた。
さらに扉を叩く音と共にエスポワールの隊員が姿を現しこう言った。
「ギリス政府からの襲撃だ!! きみ達は直ぐに避難の準備をっ!!」
俺達は慌てて鈴の部屋へと駆け込む。鈴は相変わらず落ち込んだ様子で座っていたが、俺達が来ると少し安心したような表情を見せた。
「鈴っ! 大丈夫か……?」
「――りくちゃん。私は大丈夫だよ。それよりこれは……?」
「ギリス政府の連中が襲い掛かってきたらしい」
葛西がそう答えると、鈴はギリス政府の名を聞いてなのか、とても困惑した表情をした。
俺達が避難しようとした矢先、警報が鳴り止む。そして流れてくる放送。
『ギリス政府の者が数名侵入。だが 、幹部クラスではなかったため捕縛に成功。これから緊急集会を始める。直ぐに大広間に集合せよ。繰り返す――――――――』
俺達も慌しく行きかう人々に着いて行き、大広間へと足を踏み入れた。
大広間は既に殆どの人間が集まっており、前方のステージの上に立つ人物。
エスポワールのボスである一ノ瀬に目を向けていた。
彼は俺達が来たのを確認すると、マイクを使って声を出す。
「皆さん揃いましたね。今回召集をかけた理由は、皆さんもわかっているでしょう。先程のギリス政府の襲撃についてです。
幹部ではなかっため、一人の犠牲も出さずに処理することができました。しかし……、今回なぜ急に我々の本部の場所がばれたのか? その事につい
て皆に意見を聞きたくて、集会を開きました」
一ノ瀬はそう言うと脇に立っていた強面の男を呼ぶ。
その男は黒いスーツにサングラスをかけたSPのような男。彼はマイクを受け取り、口を開く。
「俺は名は獄道 慈門。さて本題に移ろうか? ボスからもあったように今回何故我々の拠点が襲撃されたのか?
我々の拠点の位置はばれていなかったはずなのにだ。何が原因か俺が考えた結果――、一つだけ考えられる原因がある。それは――――」
獄道と名乗った男は俺達に視線を移す。
「そこのお前ら、此方に来てくれないか?」
獄道にそう言われ、俺達は多くの隊員の視線が身体に突き刺す中前へと出ていく。
前に出ると、一ノ瀬と獄道の他にもう一人の白衣を
着た女性が脇から姿を現す。
「今からお前達に発信機などが取り付けられていないか確認する。痛みはないから安心しろ」
白衣の女性はポケットから小さい機械のような物を取り出す。
そして俺、雨宮、葛西、西村の順番に機械を使用していく。発信機など持っていないので、俺達は別段心配するわけでもなく終了するのを待つ。
白衣の女性の機械が西村をかざした直後、軽快な電子音が鳴り響く。
「この女性に発信機の反応があります!」
「――なんだと? すぐに調べろ!」
獄道がそう言うと複数の人間が現われ鈴を囲んだ。即座に俺達は鈴を助けようと近づく。
「やめろっ! 鈴に何をする!!」
「一ノ瀬! どういうことだっ!? 説明ろっ!」
「――お前ら!! こいつらを抑えろ!!」
獄道はさらに他のメンバーにも指示を出した。
すると先程まで傍観していたエスポワールの連中が俺達を無理やり押さえつけようと襲い掛かってきた。
俺が能力を発動し鈴を助けようとした瞬間、一ノ瀬の大きな声が響く。
「みんな止まってください!!」
一ノ瀬の言葉でエスポワールの連中は動きを止める。
俺達はすぐに鈴に駆け寄り守るように囲んだ。雨宮は鋭い声を上げる。
「お前らっ! 私の仲間に何をするっ!!」
「雨宮さん達も落ち着いてください。決して悪いようにはしません。――西村さん。発信機がないかだけ確認させてくれませんか?」
「そんな事誰がさせるかよっ! ねぇ! 神崎先輩!?」
「――当たり前だ。客人に向かってこんな態度とは……ふざけるのをいい加減にしろよ?」
「皆さんの気持ちはわかります。ですが、こうするしかないのです。お願いです――。協力してください……」
俺達がさらに反論をしようとする前に鈴が口を開いた。
「本当に悪いようにはしないんですよね……?」
「はい。信じてください!」
「――――わかりました」
「おい鈴! 何を言っているんだよっ!?」
「みんな安心して下さい。私は大丈夫だから……」
そう言うと鈴は白衣の女性と共に別室へと足を進める。
俺の前を通りすぎる時、不安に押しつぶされてしまいそうな顔が俺の視界に写った。
それから暫くして鈴は白衣の女性と帰ってきた。
白衣の女性が一ノ瀬に耳打ちすると、彼はは申し訳なそうな表情で口を開く。
「調査の結果。西村鈴さんの身体から極小の発信機が見つかりました……」
一ノ瀬の言葉に獄門は頷き、他のエスポワールの人々はザワザワと騒ぎ始めた。
それが静まると獄道は言葉を放った。
「残念なことだがきみ達を幽閉させてもらう。きみ達が完全に白だとわかるまでな……」
「なんだって……!? 本当なのか……?」
雨宮は思わず大きな声で鈴に問いかけた。すると、鈴はか細い声で返答する。
「――――はい。でもっ……、私も何故こんな物が埋め込まれていたのかわからないんです……!」
そう言って鈴 は泣き崩れた。雨宮はなだめるように鈴を抱きしめる中、俺と葛西は呆然とした様子で立ち尽くすだけであった。
俺達はその後、俺達は其々、様々な世界に存在するエスポワールの拠点にバラバラに連行されていった。




