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Book Dive  作者: カオス
16/28

交差していた互いの気持ち2


 ――――翌日。



 俺達はリビングでテーブルを囲むようにして集まっていた。中心には雨宮のスキルブック。



「それじゃ行こうか?」



「――みなさん。少し待ってください」



 鈴が俺達を制止したので、葛西が不思議そうに言葉を漏らす。



「どうしたんだ鈴? ……まさか、あの事をみんなに?」



「――――うん。いずれは言わないと思っていたか」



「あのこと? いったいなんの事だ??」



 俺がそう訪ねると、鈴は間を置き口を開く。



「――真理奈さん。大翔さん。私は今まで二人に嘘をついていましたっ! 本当にごめんなさいっ……!」



「嘘……? 何のことだ??」



「実は私がこの世界に来たのには理由があったんです。――私には幼い頃に行方不明になった兄がいるんです」



「行方不明の兄……?」



「――はい。何年も前の話です。周りの人はみんなもう兄の事は諦めてしまいました。だけど私にはそんな事できませんでした。


そんな時にあの本が目の前に現われたんです。私の直感がその時言ったんです。兄はこの世界にいると――。


だから、真理奈さん達に着いて行く事を決めたのも、本当はこんな理由があったからなんです! ――ごめん さい。今まで隠していて……」



「――りく君も知っていたのか?」



 雨宮の言葉に葛西は頷いた。彼女は俺に目配せした後、呆れたようにため息をつく。



「――確かにきみ達が隠していた事には落胆したが……それだけだ。別に気を落とすような事ではない。逆にきみ達に明確な理由があって私は嬉しいよ。きみ達はきみ達の目的に専念してくれ、私も精一杯力を貸そう!! 私達は仲間だっ!」



雨宮の眩しいくらいの微笑みに、葛西と鈴も笑顔を取り戻した。そして彼女は自身のスキルブックに手を置いた。



俺達もその綺麗な手に自身の手を重ねる。彼女は俺達を見回した後、言葉を放った。



『ダイブ イン 未来世界』



『2200年。人類の科学は星星を移動できるほどに進歩していた。世界では未だに戦争はなくならず、さらに激化する一方であった。日本は新たな武力であるロボット軍団を有したことで国際連盟を脱し、世界の主権を握ることになる。


しかし、戦争ありきの国に反感を持つ群集が立ち上がり、国内は張り詰めた緊張感に包まれていた。そんな中、ある天才科学者が世界の戦争の概念を覆すほどの発明をしてしまうのであった――――』



 浮遊感と共に今回の小説のあらすじが頭の中に流れる。俺は目を瞑ったまま身体の支配権が戻るのを待った。



そして、地面の感触が足に伝わり、目を開けようとした瞬間――――――――鈴の甲高い悲鳴が鼓膜を刺激した。



「きゃぁぁぁぁぁぁ」



 俺は咄嗟に目を見開くと、全身に戦慄が走った。視界に飛び込んできたあまりにも悲惨な光景。



「なんだよ――――。これは………………?」



 近未来を連想させ るテカテカとした壁に囲まれた空間に俺達はいた。



そこには人間が暮らしていた痕跡が多数残されていた。



これだけならば驚くことはないだろう。しかし、一つ普通とはかけ離れた現実が目の前に存在していた。



それは――――いくつもの血まみれの死体が地面に転がっていたのだ。



 鈴は泣き崩れ、葛西は嘔吐し、俺と雨宮もは膝が震えた。



俺の脳内にはガンマ戦った時の記憶が蘇り、人間が出す血の独特の匂いが鼻の奥を刺激する。




雨宮ふらついた足取りで鈴と葛西の近づき、震える手で背中を摩る。



俺はポッキリと折れそうな心をなんとか保ち、辺りに視線を飛ばす。



すると、部屋の奥底に見慣れた男が壁に寄りかかって座っていた。俺は駆け寄り大声を上げる。



「おい! おっさん! しっかりしろおっさん!! 何があったんだ!? ――おいっ!」



 血まみれで寄りかかって座っていた男――黒津地 銀は俺が必死に呼びかけると目をゆっくりと開き、言葉を漏らした。



「お……まえ…………たちかっ――」



「おい! しっかりしろ!! ――鈴!! こっちに来て能力を使ってくれ! お願いだ! はやくっ!!」



 鈴は目の前の現状を受け入れることが出来ないのか動くことが出来ないようだった。



俺は舌打ちを打つと、黒津地を抱えて、雨宮達

の元へと連れて行く。



「――鈴! お願いだっ!! 能力を使ってくれ!! じゃないとっ……」



 そう叫ぶと、鈴は恐る恐る目を開けるが直ぐに目を逸らしてしまった。しかし、彼女は唇を強く噛み、能力を発動させた。



放出された光が黒津地を包み、微量だが回復しているように見て取れた。



しかし、流れ続ける真っ赤な血。彼は自身の 状態に気がついているのか鈴の手を掴み、回復を止めさせた。



「なんで止めるんだよっ!?」



「おれは……もうだめ――だっ。はやく…………にげっろ……!」



「何があったんだ!? 何故お前達がこんなっ……!」



 そう言うと黒津地はかすれ声で語りだす。そして話し終わると、自身のポケットから一冊の本とダイブポイントの数字が書かれた紙を俺に無理やり押し付けた。



「これはっ……おれたちの本部の場所だっ――――。このことを……ボスにっ。つ……た…………え――――」



「おい……。おいっ! おい!! しっかりしろ!! おいっ! ……くそおぉぉぉ!!」




黒津地は息をひきとった。雨宮は膝を着き、鈴は再度涙を流す。



例え短い付き合いだったとは言え、一緒に戦った仲間だった黒津地。



そんな仲間が目の前で死を遂げる。これほどに悲しく、辛いことはないだろう。



暫くの間、言葉が出ずに俺達は放心状態に陥る。



 しかし、現実は立ち直るまで時間を与えてくれる程甘くはなかった。



突如、部屋に響く足音と狂気染みた笑い声。雨宮は即座に理解し、立ち上がった。



「ギリス政府の連中か。みんな……! このままでは私達も殺されてしまう。今はエスポワールの拠点に行こう……!」



「――――そうだな」



「はぁ、はぁ…………。そうっすね――」



 俺と葛西も雨宮に感化され立ち上がる。しかし、鈴は未だに立つことができない。



雨宮は鈴の頭を優しく撫で、慰めるように言葉を漏

らした。



「鈴。この辛い現実を受け入れることが出来ないのは私達も同じだ。――でも、今は逃げなきゃいけない。わかるな? こんな所で死ぬわけにはいかないだろう? だから、頑張って自身の足で立ち上がってくれ……」



「――――そうですね。ごめんなさい」



 鈴はなんとか立ち上がる。その間にも足音はこの部屋に近づ いていた。



雨宮からの視線を感じ、俺は先程授かった本を持ってダイブポイントを設定した。



そして手を前に突き出す。皆がその手を掴んだのを確認すると、俺は言葉を放った。



『ダイブ イン 天国の楽園』



{西村駆side}



カタカタカタ。僕は無心でキーボードを叩く。すると、パソコンに一通のメールが届いた。



おそらくエスポワールの拠点の捜索と新しいスキ

ルブックの事についてだろう。



「エスポワールの二つ拠点の破壊に成功。新しいスキルブックの所有者についてもまだか……。まぁ、これに関しては手を打っている」



 実は僕には妹がいる。名前は西村 鈴。今回新スキルブックについて調べている過程で妹が絡んでいる可能性が見えてきた。



そこで僕は現実世界を失踪する前に彼女に施していた仕掛けの事を思い出し、発動させたのである。



 戦争も始まり、この仕掛けが必ず役に立つだろうと思っている。



その仕掛けとは簡単なものだ。実は鈴には肉眼では確認出来ない程の発信機を取り付けていたのである。



「後は、時が来るのを待つだけ……」



 僕はその後さらに研究に没頭していた。すると、鈴の位置情報のデータが入ったフォルダがパソコンに転送されてきた。



「――――天国の楽園か。ここは確かエスポワールの本拠点があるはずだったな。正確な位置はわからないが。――たしか鈴達はエスポワールの連中と関わりがあったはずだよな? ならもしかしたら…… 」



 僕は直ぐに幹部に連絡を取ろうとするが、彼らがギリスの召集により今は動くことが出来ないのを思い出す。



そこで、仕方なく他の連中に通話を繋いだ。



「――西村だ。お前達に新たな命令を伝える。……許可は取ってあるから心配するな。実はなエスポワールの拠点らしき場所を見つけた。小説名は『天国の楽園』正確な場所は――――」





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