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Book Dive  作者: カオス
14/28

動き出す物語5

{神崎side}



 ――ここは何処だ? さっきまでユゼルと戦闘していたはずだが……。



 俺は何時の間にか見知らぬ空間に仰向けに寝転んでいた。



周りを確認するために起き上がると、視界に移ったのは壁も床も天井も白で統一された空間にポツンと存在する木製のドア。!



その他には何もないようだ。俺は少しの間ボーっとドアを見詰め、頭の中の整理を始める。



 ――何もない白い空間。あるのは木製のドアのみか……。これもユゼルの魔法の一つなのか? ――いや、狂気にのまれてしまったユゼルがこんな魔法を使用するとは思えない……



「――――考えてもわかるわけだはないか。――――扉の先に行くしかないよな? はぁ……」



 俺は近づきドアノブに手をかけ開けようとしたが、ドアの上部に文字が刻まれている事に気づき、手を止める。書かれていた文字をは...



「好奇心……? どう言うことだ?」



 ドアには小さい文字だがはっきりと『好奇心』と刻まれていた。



何故こんな文字が刻まれているのか理由はわからないが、別に気にすることでもないだろう。と楽観的に考え、改めてドアノブに手を伸ばし開く。



すると、ドアの先には白い空間と同じような 空間が広がっていた。だが一つ違う所は白ではなく真っ赤な空間だということ。



「――目が痛くなりそうな部屋だな。しかも、また木製の扉が一つか……」



 俺は開いた扉を閉め、真っ赤に染められた空間に足を踏み入れる。


中心まで移動し周りを見渡したが、木製の扉以外には何もなく、扉の前へと移動する。



「また文字が……。次の文字は…………『憤怒』。――なるほど。もしかしたら刻まれている文字と、部屋の色が関係しているのだろうか? 勝手なイメージだが怒りの感情は赤色だからな。……まぁ、次の空間を見ればわかるか」



 そう言って扉を開け放つ。そして次に視界に入ったの黄色一色に埋め尽くされた空間。また木製のドアに刻まれた『喜び』の文字。



「やはりか……」




自分の考えがあながち間違っていない事を確認するとさらに扉を開ける。



次の部屋は青一色の空間。そして木製の扉に刻まれた『哀しみ』の文字。次の部屋は黒一色の部屋。刻まれた文字は『狂気』。



俺は前の部屋と同様に扉を開こうとドアノブに手をかけた。しかし、今回の扉は鍵がかかっているのか開くことがなかった。



「ん? 開かない? ――くそっ。よりよってこんな黒一色の部屋で止まるとは……」



 ドアを蹴破ろうという考えが一瞬頭を過ぎったが、すぐに無駄だろうと思い、俺は床に座り込む。



そして今まで出てきた言葉を思い浮かべる。



「好奇心。憤怒。喜び。哀しみ。そして、狂気……か。楽しみを好奇心だとするなら、喜怒哀楽が揃っているな。それに狂気か。うーん――。わけがわからないな? この空間はいったい何だ。……まさか此処が死後の世界って言うんじゃないだろうな……?」



 ――喜怒哀楽と狂気に染められた其々の空間。これを聞いて思いつくと事は――待てよ? 喜怒哀楽に狂気は全て人間の感情だ。


狂気以外は一応俺も感じた事がある感覚。ユゼルとの戦闘で感じたあの気持ちが『喜び』ならばだが。ってことはこれらの部屋は俺の得 た感情を

表しているんじゃないだろうか……? 



「――もしそうなら、その感情を得ることで扉は開かれていくっていうことか? だからこの狂気の部屋の扉は開かれない。ここは俺の心の中……? 


――――ふん。まさかな。例えそうだとしてもここから出られるわけではない。はぁ……。早く戻らなければいけないって言うのに……」



 俺は自身の不甲斐なさに浅いため息をつき、乾いた笑いを声を上げる。



さらに黒一色に染められた部屋に刺激されたのか、頭の中には狂気にのまれたユゼルの顔が浮かんできた。



「暗黒魔王ユゼル――。あいつは自分の心に芽生える光に苦しんでいたんだろうな」



 ビクンっ――――突如電撃が走ったように身体が震え、脳内に流れ込む映像。



「――くそっ。なんだこの映像は!? それにこの感覚は……? これは……怒り? こんな強い怒りは始めてだっ――。突然どうしてっ……!?」




 頭に流れた映像はどす黒いオーラを全身から放出させ、狂ったように笑いながら武器を向ける俺の姿。



そして、その剣先は全身がボロボロになった暗黒魔王ユゼル。今にも俺はユゼルの喉元に突き刺そうとしていた。



 ――このままではユゼルを殺してしまう……。だが、ユゼルは俺達の敵だ。 殺すべき存在ではないのか? ――いや、違う! ユゼルはギリス政府の連中のような事は一度もしていない。ただ自分に芽生える光に苦しんでいるだけなんだ……。それに俺はもう――――人を殺したくなんかしたくないっ!



頭に蘇るガンマの首をはねた時の感覚、そしてガンマが最後に残した言葉――『これでお前も俺と同じ殺人鬼だ』。



さらにベータの狂気染みた笑顔。俺は頭を両手で抱え必死に抵抗する。



「くそっ……。やめろっ。やめろ! 殺すなっ! ころすなあぁぁぁあぁぁ!!!」



 心の底からユゼルを助けたいと思った瞬間。溢れていた闇が消え去り、映像の俺も武器を落とし狂ったように叫びだした。



そして身体から出る黒いオーラが消え去ったところで映像は途切れる。



「――はぁ、はぁ。はぁ……。や、やったのか……? 俺はもう二度と人を殺したくはない んだ――――」



 俺は弱弱しく言葉を漏らす。遠のいていく意識、視界はぼやけ、倒れそうになる身体。俺は咄嗟にドアノブを掴んだ。



すると、先程まで鍵がかかり開くことのなかった扉が開かれた。そして、次の部屋の空間には――――



 目の前には異質な扉が存在していた。扉からは圧倒的な威圧感を感じ、身体を支配する。



その巨大な扉は今までの木製の扉とは違うことは明白。



室内の空間は今までのように単色ではなく様々な色が見え隠れし、奇妙な空間を作り出していた。



そして中心に聳え立ち鎖が何十にも巻きついた鉄製の扉――。



 俺の身体は吸い寄せられるように右手を無意識に伸ばした。



しかし、その右手は届くことはない。俺の意識は鋭い刃物で刈り取られるようにブラックアウトした。



 感じる浮遊感と共に視界に写った一筋の淡い光。



その光は次第に俺の全身を包んでいき、視界が全て白に染まる頃には俺の意識は現実世界へと完全に引き戻されていた。



「――戻ってきたのか? うっ……全身が異常な程痛い――」



 瞑っていた目を開けるとそこにはユゼルの魔法によるものなのか、荒れ果てた大地が広がっていた。



そして地面にうつ伏せに倒れこんでいる暗黒魔王ユゼルの姿が目に入る。



「ユゼル………………!」



「ぐっ……。ま、まさか……。貴様がそこまでの狂気を秘めていたとはな――。しかもその狂気に勝つとは……」



「――やはり俺は狂気にのまれていたのか」



「さぁ、止めをさ…………」



 最後まで言い終わらない内にユゼルは苦しそうに咳き込む。ユゼルの身体には多くの傷がついており、出血が多量し ていた。



その姿をみた瞬間――失われていたユゼルとの戦闘の記憶が、突然頭の中に溢れた。



狂気に呑まれた俺の姿――。飛び散る鮮血――。砕け散るルーインソード――。



そして――――悲しそうな表情で戦うユゼル。



「おい! しっかりしろ!?」



「げほ……。――ふんっ。貴様は…………敵である俺を助けるのか……?」



「黙っていろ! お前が現実世界に帰りたいだけだ」



「この魔法は……俺が死ねば自動的に開放される――」



「例えそうだとしても! 俺は死にそうな奴をほっとけないだけだ」



「――おひとよしが。俺は貴様と戦ってもこの胸に疼く気持ちを理解することはできなかった……」



「ユゼル……。俺もお前と戦ってみてわかったよ。本当はもう気がついているんだろう? ――その気持ちに」



「――――――――」




ユゼルが俺の問いに答えることはなかった。彼は身体を支えようとする俺を振り払い、起き上がった。



そして真っ赤に染まった両眼を向ける。その目は狂気に自身が囚われた時のような弱さはなく、何かを覚悟した強さを秘めていた。



「貴様の名はなんと言う……?」



「――俺の名は神崎大翔」



「神崎大翔……か。――ふん。おかしな名だ……今回は狂気に打ち勝った褒美として見逃してやろう。だが、次会う時は必ずお前を――――倒す!」



「いいだろう。何時でも掛かって来い! 何度でも返り討ちにしてやるよ!」



「減らず口を…………。――――この魔法は次期解ける」



 刹那、周りが歪み始め、俺は質問を口にする。



「お前はどうするんだ?」



 ユゼルから返答はなく、次の瞬間には元いた場所へと帰還していた。



最後に垣間見えたユゼルは清清しい程自然な笑顔を浮べていた。そして聞こえる大切な人の声。



「――神崎!!」



「……なんだ。雨宮か」



 俺は雨宮の顔を見ると心から安堵、それが何故か恥ずかしくてそっけなく言葉を漏らした。すると、雨宮は真剣な顔つきで怒る。



「なんだとはなんだ!? 私はとても心配したんだぞっ!!」



「 そっか――。心配してくれたのか……」



「当たり前だ!! ――私達は仲間だろっ?」



「仲間か……。ふふ――そうだな! ありがとう! 雨宮!!」



 俺が笑顔でそう言葉を口にすると、雨宮はとても驚嘆する。



「神崎――――。いったいどうしたんだ? きみがそんな自然な笑みを見せるなんて……」



「別に普通だろ?」



「いや、いつもの神崎じゃない!! 頭でも打ったのか? おい! 大丈夫か!?」



 雨宮は身体を急激に近づけ手を俺の額に当てる。突然の行動に俺は身体を仰け反らせる。



「お、おい……。いきなりなんだよ!」



「何を怖がっている? ――――やっぱり何か変だなぁ?」



「――大丈夫だって!」



 俺は顔が赤いのを見せないために、そっぽを向きながら話を逸らす。



雨宮からは未だに疑いの目を視線を受けながら俺はふとエスポワールの仮拠点の入り口に目を向けると、見慣れた二人が拠点から出てくるところであった。



「神崎先輩!!」



「……ひろとさんっ!!」




二人は俺を見つけると足早に駆け寄って来る。鈴は大胆にも俺に抱きつく。



俺は彼女の唐突な行動に驚きを感じながらも、彼女の頭を優しくなでた。



すると、彼女は瞳に涙を浮かべて上目遣いで言葉を漏らす。



「大翔さん――。また会えてよかった……。本当に良かったよぉ……」



「はははっ。いきなりどうしたんだよっ?」



 そんな会話をしていると怒りを露にする葛西と雨宮が俺達を無理やり引き離す。



「神崎先輩! 鈴に変なことしないでくださいっすよ!」



「そうだぞ神崎! きみは鈴にまで不埒なことをするというのかねっ!?」



「いや、まてまて。俺が以前に不埒な事したような言い方をするんじゃないよっ! お、おい……。鈴も本気にするんじゃない!」



「まったく……神崎はすぐ変なことをするからなぁ。鈴も簡単にあの変態に抱きつくんじゃないぞ!?」



「そうだぞ鈴! ――まぁ、何かあった時は俺の能力で守ってやるけどな!!」



「――葛西って能力持っていたか?」



 葛西の言葉に俺は疑問を感じ問いかけると、葛西は待ってましたと言わんばかりの表情で口を開く。



「ふっふっふ。神崎さんはまだ知らないでしょうけど、実は俺も―― ――ダイバーになったんっすよ!! しかもぉ~俺の能力はそこらのダイバーより遥かに素晴らしい能力ですぜっ!?」



「そうなのか? でもいったい何時?」



 葛西は鼻高々に語りだした。途中、あまりにも飛躍した話に疑いを隠せなかったが、なんせ証人が他にいないため信じるしかない。



だが、彼が百匹のドラゴン相手に死闘を繰り広げたという話は流石に嘘だと言う事はわかったが。



「――――っていうわけっすよ! どうです? 俺って天才でしょ??」



「まぁ、結果何もわからなかったが、お前達が無事に戻って来てくれてよかったよ」





 葛西は突然狼狽し始め、俺に聞こえる小声で雨宮に話しかける。



「――雨宮さん。なんか神崎先輩変じゃないっすか? いつもはむすっとしていたのに、急になんであんな笑顔を……?」



「りく君もそう思うか。私も変だと思っていたんだよ――。神崎にあんな自然な笑顔が出来るはずないんだ」



「おい二人とも。全部聞こえてるぞ! ――ったく。俺ってそんな無感情な奴だったのか?」



――だが、たしかにユゼルとの戦闘の最中、何か色々と大切なものを手に入れた感覚はあるな。


今ならわかるが以前は持ち合わせていなかった感情の欠片だろう。しかし――――-何故こんな感情を失っていたんだ? 




「大翔さん。何を悩んでいるんですか?」



「ん? あぁ……。なんでもないよ。――鈴も俺は変わったと思うか?」



「そうですね――――。たしかに前の大翔さんよりはなんだか暖かい気がします」



「暖かい……?」



「はい。前もちゃんと私達のことを考えてくれていましたが、今はもっと考えてくれているように感じます」



「そうか……。それならいいんだがなっ!」



鈴と話していると、雨宮が元気な声を出す。



「色々と言いたいこともあるかもしれない が、まずは現実世界に戻って身体を休めようじゃないか!」



「――そうだな。なんだが久々に戻るように感じるな。まだ数もそれ程経過していないんだけど」



「何しんみりしてんすか~神崎先輩!?」



「皆さん! ちゃんとダイブポイントの設定を忘れては駄目ですよ? 特にりくちゃん!」



「何で俺だけなんだよっ!」



 そう愚痴を言いながらも葛西はポイント設定を行う。



「――たしかポイント設定は更新されたページで出来るんだったよな?」



「そうですよ! 大翔さんも忘れずにやってくださいね!」




 鈴は眩しい程の笑顔を俺に向けた。その笑顔に心が温まるのを感じながらポイント設定を終わらせると、雨宮が口を開いた。



「それじゃ帰ろう! みんな近くに寄ってくれ」



 俺達は雨宮の手に自信の手を重ね、雨宮が帰還語を唱えた直後、耳元で俺だけに聞こえる声で葛西が言葉を漏らした。



「神崎先輩。明日話があるので先輩の家の近くにある公園に来てください・・・」



 返答する暇もなく雨宮の声が響き、俺達は眩い光に全身が包まれる。



『アウト オブ デスワールド』



 脳内に流れる無機質な声。



『――おめでとうございます。ダイバーランクがEワンクからDランクにランクアップしました。次のランクはCランクです』



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