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Book Dive  作者: カオス
13/28

動き出す物語4

{???side}



「――戻ったぞ。……ん? 誰もいないのか?」



 室内に足を踏み入れるが部屋には助手の姿はなく、闇に包まれて閑散としていた。



しかし、パソコンの電源は点灯していることから、休憩でもしているのだろうと勝手に解釈し、私はイスに腰を下ろした。



「――ふぅ。私の計画もやっとここまで来たと言うのに、あの子に秘密が漏れてしまうとはな……」



 西村君がいつも作業を行っているパソコンに目を向けると、一つの映像が写されていた。



「支配者の本――。この本だけが私の夢を叶えてくれる。希望が存在しない現実世界を作り変えるための唯一の手段だ。私は必ず……」



「――何をぶつぶつと言っているんですか?」



「……戻っていたのか。西村君」



「はい。勝手ながら少し休憩を貰っておりました。直ぐに作業を再開致しますので」



「そうしてくれ。それにしても……何かあったのかね? ひどい顔をしているぞ?」



 私が問うと西村君の身体をビクンと固まらせ、強めの口調でこう言った。



「いえ、なんでもありません。そんなことよりあの件はどうなったんですか? 現実世界には戻ったんですよね?」



「ぁ、あぁ。その事なんだが… …実は私の秘密にあの子は気づいてしまったらしい」



「――それは本当ですか? ならこの計画も知っている……と?」



「おそらくな。だが、私が首謀者だということまでは知らないはずだ」



「この世界に探しに来るのでは?」



「それは大丈夫だろう。スキルブックは100冊までしか出現が確認されていないはずだ。例えこの先増加してもあの子の元に渡る確率は非常に低いはず……」



 西村君は眉を潜めてさらりとこう言った。



「実は新しいスキルブックが出現している。という情報が入ってきたんです。まだ確証は掴めていないんですが……」



「――なんだと!? それは本当か!」



「正確な事は私にもわかりません……。再開された原因はおそらく私達が支配者の本に干渉したことではないかと」



「新しいスキルブックの所在は掴めているのか?」



「迅速に情報を集めていますが、まだ……」



 西村君は肩を落とした。私はその後、実験を続けるように命じ、部屋を後にする。



{葛西side}



目の前で膝を着き、悔しさを露にする雨宮さん。彼女から事情を聞いた俺達も、今起きていることにただ拳を握ることしか出来なかった。



雨宮さんは神崎先輩が消え去った場所を見詰め言葉を漏らす。



「――くそっ! しんざき……」



「まりなさん………………」



 鈴は雨宮さんを抱きしめ、俺は天を仰いだ。暗雲が立ち込める淀んだ空。俺の心は悔しさに溢れていた。



 ――こんな時、俺に力があれば……。なんで俺には力がないんだっ! なんでっ……!



 俺は周辺を探してくると言い残してトボトボと歩き出す。



先輩が見つかるわけがないとわかっていながらも、時折耳を澄ませては辺りの様子を窺った。



「神崎先輩ならどんな奴にだって負けないっすよね? 俺信じてますから……」



 そう思うと幾らか気持ちが楽になり、再度森の中を歩き続ける。暫くして二人の下へ戻ろうかと思った矢先、俺の視線には一軒の古びた小屋が写った。



そして、ちょうどその小屋から一人の女性が出て来たのである。



「あれは………………」



 俺が目を細めて見ていると、彼女は此方に気がついたのか近づいて来る。



次第にはっきりと見える彼女の姿。その姿を 見た途端、俺の心は急激に高ぶった。



 長い銀色の髪をなびかせ、大きくクリッとした赤い目を持ち、豪華とはいえない服を身に着けた華奢な女性。



彼女は俺を見ると、まるで天使のような笑顔を浮べる。俺の身体は電撃が走ったように衝撃を受け、顔に熱を帯びるのが感じられた。



 俺の視界には彼女以外を写す事が出来なかった。思考が彼女に支配されていく。彼女中心の世界。彼女が全ての理。



直ぐ側まで近づく美しい女性。吸い込まれてしまいそうな程良い匂いが鼻を刺激する。



 動く気力を削がれ、成すがままに彼女に全てを任せる。



彼女は顔を俺の耳元に近づけ、うっとりとした声と共に耳にかかる彼女の吐息。



名の知れぬ天使は溶けてしまいそうな綺麗な声でこう言った。



「――貴方が欲しい。貴方の全てを私に頂戴」



「――貴方が欲しい。貴方の全てを私に頂戴」



 そう言われると、俺は力が抜け崩れ落ちた。彼女は妖艶な微笑を向けると、俺を地面に押し倒し、さらに甘い言葉を投げかけてくる。



「――さぁ、全てを曝け出して。貴方はもう私のもの」



 彼女の手が身体に触れる度に、全身がビクンと反応する。彼女はクスリと小さく笑うとこう言った。



「貴方は私だけを見ていればいいのよ? 他の女の事は忘れなさい。貴方の全ては私。さぁ、これを見て……」



 彼女は懐に手を入れ、隠しながらある物を取りだして言った。



「――これは貴方をもっと気持ちよくさせる物よ。さぁ、この鈴の音色を……」



 彼女が手を開いて、銀色の鈴が現われた瞬間。俺の意識を惑わせていたピンクの靄が消え去った。



そして、脳内に浮かぶ大切な人の姿。俺は即座に、上にのしかかる女性を突き飛ばした。



「きゃっ……! 痛いわ……。いきなり何をするの!?」



「――危なかったぜ。もうその芝居をやめたらどうだ?」



 可愛らしく怒る彼女に俺は冷たく言い放つ。すると、彼女は今までの雰囲気を崩し、怒りに満ちた表情で言葉を漏らした。



「あらあら。まさか私の魅惑から抜け出すと は……。いったい何をした小僧?」



「俺も危なかったぜ……。もう少しでお前に食われるところだった。――鈴のおかげで助かった」



「鈴のおかげだと?」



「そうさ。俺の大切な女性を思い出したんだ! それのお陰で抜け出せた!!」



 銀髪の女性は眉を潜め、言葉を放つ。



「――私の魔法を跳ね返すほどの女性だと? ふざけるな。私は妖艶の魔女アリス! 私より美しい女など存在せぬ!」



「ふん! 俺の大切な女性はお前より100倍魅力的だ!!」



「――くそがっ! これだからガキは嫌いなのだ! 女を知らぬ若造めっ!」



「童貞を馬鹿にしたな……? お前後悔するぜ?」



 普通ならば能力も何もない俺が強がっても無意味なのだが、何故か身体の奥底から溢れ出てくる自信。



それに妖艶の魔女アリスは恐怖を覚え、はたじろぎながら言葉を漏らす。



「な、なんだ……! その自信は!! 力のないお前なんぞ直ぐに殺してやるわ!!」



「はっはっは! お前に俺が殺せるかな? 童貞を馬鹿にしたお前に!!」



 ――何だろうこの高揚感はっ! 何故だか恐怖をまったく感じない! 相手が綺麗な女性だからだろうか? しかも心なしか身体に力が溢れてくるような……



 そう頭で思っている矢先、上空から突如何かか落ちて来た。それは古びた本のようで、俺がその本を手に取ると―――



「――――まぶしっ! ……これは!! スキルブック!!」



 手にした瞬間、眩い輝き共に本に刻まれた『Book Dive』の文字。それを見た時には、俺は今までの溢れ出てくる自信や力の正体を理解した。



妖艶の魔女アリスは目を見開きながら口を開く。



「貴様っ! いったい何をした!?」



 俺は高揚する気持ちを抑えきれず高らかに笑う。



「ふっふっははははははは!! ついに俺にも力が!! ――アリスと言ったな? お前はもう終わりだ! この葛西様が能力を手にしてしまったのだ! 俺は全人類のD・Tを代表してお前を倒す!! 行くぞ!  能力発動――模造せし世界(イミテーション オブ アルケミスト)!!」



『模造せし世界(イミテーション オブ アルケミスト)』



『能力者のイメージしたありとあらゆるものを空間に模造し、生成する能力。生成させるものには何の制限もなく能力者のBDエネルギーさえ消費すればどんな物質、道具といったものでも生成することができる。』



 俺は脳内で流れた電子音通りに、イメージを開始する。



徐々にイメージは構築され、身体から溢れ出ていた力が手に集束していくのが感じ取れた。それに比例してとてつもない疲労が全身を襲う。



 少しすると集まっていた光が弾け、イメージした大剣が姿を現す。その光景を見て、アリスが口をパクパクさせながら言葉を放つ。



「さ、さっきまでそんな力なんてなかったじゃないか! だから力のない私は狙ったのに!! ――くそっ!! お願いだ! 殺さないでくれ!!」



「――それは出来ない注文だね。たしかに貴方は美しくて可憐だ。俺だって女性を傷つけるなんてしたくないさ、だけどお前は童貞を馬鹿にしてしまった……。これだけは誰であっても許してはいけない。――最後に言い事を教えてやろう。童貞を守れない奴は何を守れない。お前は童貞に倒されるんだ。覚悟しろ!!」



 俺はそう言って駆け出す。そして、最高にかっこいい言葉を叫びながら大剣をアリスに振り抜いた――――と思ったら彼女に当たる瞬間大剣は消え去る。



そして態勢を崩し転びそうになる俺。



 俺は咄嗟に何かに掴もうと、闇雲に手を伸ばす。そして何かもの凄く柔らかいものを掴んだと思った途端。



可愛らしく声を上げるアリス。そのまま俺達は共倒れに転ぶ。



「――いってぇ……なんでいきなり消えたんだ? ―――って! ええぇぇぇえ!!」



 目の前には服が乱れたアリ スの姿。そして彼女に覆いかぶさるように馬乗りになる俺。



さらには俺の手は何時の間にかアリスの大きな胸を鷲づかみにしている。



 ――なんだ……! なんだこの素晴らしき感触は……




 俺が無心で軽くフニョフニョすると、アリスはとても素晴らしい声をだしながら息を乱した。



そして弱弱しく言葉を漏らす。



「貴様。よく私が胸を揉まれる続けると、消滅してしまう事を見抜いたな……?」



 ――いや。別にそんな事見抜いてませんけどっ! アリスさんあんた馬鹿なの? ねぇ、馬鹿なの?? ってか、胸揉むと消滅するの

? 


……………………そうだよな。しょうがないんだよ鈴。俺はこいつを倒さなければいけないんだ? 本当はこんな事したくないけど、こうじゃなきゃ倒せないんじゃぁねぇ? いや、まったく興味はないけどさっ! (やっふぅぅぅーーー! やったぜ、やっ

たぜ!!)



 俺は落胆しながらも、空いている手をアリスの魅惑の果実に置いた。



一瞬の静寂が場を支配する。そして、俺は身体の全ての筋肉を張り詰めさせ、全神経を極限まで集中させる。そして、両手をマシンガンの如く高速で動かした。



「――ぁっ、あっ! あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 そして、妖艶の魔女アリスは世界で最も美しい雄叫びと共に昇天した、葛西も同様に素晴らしい感触を得て聖天したのであった。



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