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Book Dive  作者: カオス
12/28

動き出す物語3

{???side}



眩い光が視界を覆い尽くすこと数秒。徐々にホワイトアウトは収まり、過去に良く見ていた景色が広がっていた。



懐疑的な気持ちに落胆しながらも、膨大に並べられた本棚に近づき、一冊の本を抜き取った。



 すると、途端に奇妙な機械音が鳴り響き、本棚が左右へと自動ドアのように開かれる。さらにその先には下へと続く階段が現われた。



はやる気持ちを抑えて階段を下りると、新たな部屋へと行き着いた。



 その部屋の光景を見た瞬間、私は浅いため息を吐き出した。



「あの子は私の秘密に気がついてしまったようだな……。しかし、私の全てを知ったわけではないはずだ。――この家は残して置くべきではなかったな……。このままではあの子にまで危険が及ぶかもしれない。スキルブックの出現が止まっているのは不幸中の幸いか……」


 

 ――ピー ピー



 電子音が脳内を流れる。どうやらスキルブックがメールを受信したようだ。



そのメールの主は支配者の本の研究を任せている助手。西村 駆。(にしむら かける)からで、次に内容が流れた。



『急ぎの連絡がありました。どうやらデスワールドにてエスポワールと戦闘を行い、ベータ、イプシロン 、デルタ、イータは死亡。さらにその戦いには例の人物達も参戦していたようです。さらなる調査を依頼しましたので、用事が終わりましたら此方の世界に戻って下さると助かります。では――』



 私は西村君の電報に目を丸くする。そして、言葉を漏らした。



「立て続けに色々なことが起きている。何か嫌な予感がする……。一刻も早く研究を続けなければ」



 私は脳裏に浮かぶあの子の笑顔を振り払い、地下に残っていた資料を全て処理してスキルブックを出す。



『ダイブ イン 闇の館』




{神崎side}



疲労に満ちた表情で休む中、高崎がおもむろに立ち上がりこう言った。



「それでは皆さん。そろそろ集合ですので行きましょうか?」



「――ん? もうそんな時間か?」



「はい。おそらくエスポワールの皆さんはもう揃っているかと」



 雨宮は立ち上がり身体を伸ばした。その後俺達は高崎の案内されて黒津地達が待つ部屋へと向かった。



そこは真っ白の壁に囲われ中心に円卓のテーブルがある部屋で、そのテーブルには既にエスポワールの面々が席に着いていた。



黒津地は俺達を見るなり口を開く。



「おぉ、来たな! まぁ、座ってくれ!」



 黒津地の指示を受け円卓のテーブルへと腰掛けると、彼が口を開いた。



「――早速始めるが、まずは今回の戦いでギリス政府の勢力を大きく削ってしまった事についてだ」



 雨宮が俺に話せと目配せしてくるため、俺は口を開いた。



「まるで削ることが駄目なような言いようだが?」



「そうだ……。神崎と言ったな? お前も知っていると思うが奴らとエスポワールは今冷戦状態にある。今回の事が原因でその状態は解かれ、本格的な戦争へと移行するだろう」



「それの何処が駄目なんだ? お前達はそのため に戦っているんだろう?」



「あぁ。俺達の目的はギリス政府を根絶すること。いずれは戦争をしなければいけなかっただろう。しかし――時期が早すぎた。まさかこんな形で戦争が開始されてしまうとは誤算だった。俺達はもう少し体制を整えて戦争に挑むつもりだったんだがな……」



「――なるほど。だが、それは相手も同じなんだろう?」



「おそらくな。だが、悪いことばかりではない。今回の戦闘で奴らの幹部を二人倒すことが出来たのは運が良かった。これで後幹部の数はボスを含め23人となった……」



「幹部はまだそんなにいるのか? 今までにどれくらい倒してきたんだ?」



「幹部を倒せたのは今回で初めてだぞ?」



俺は目を丸くして言葉を漏らす。



「初めてだと? 俺ですら既に一人倒したのにな……」



「――なんだって!? きみはギリス政府の幹部を倒したのかっ? いったい誰を??」



「名前はたしか――――ガンマ」



 俺の言葉を聞き、エスポワールの連中は驚きの声を上げ、内村が口を開く。



「本当に幹部を一人殺ったのか……? もしそれが本当ならばあの奇妙な能力といい。お前はいったい何者だ――?」



「俺達はただの無所属ダイバーだ。前回はたまたま勝てただけさ……」



「奴はどんな能力だった? 戦ったならわかるだろう?」



「あぁ。たしか……精神干渉マインド インターフェアレンス……だったはずだ?」



「――――情報通りの能力だ。どうやらこいつの言っている事は本当のようだ」



 内村は考えるように深く俯く代わりに黒津地が口を開いた。



「この事実が本当ならば凄い事だ……。まだ聞きたい事は山ほどあるが、深くは詮索しない。共闘してくれた借りもあるからな」



「そうしてくれると此方も助かる」



「――よし。それなら話を再開するぞ? 今回で新たな情報を手に入れる事が出来た。――――幸良頼む」



 幸良と呼ばれた男は立 ち上がると、テーブルの中心にあるボタンを押す。すると、円卓のテーブルの中心にはめ込まれた丸いガラス玉から光が溢れる。



 ――これはホログラムってやつか……?




「まず初めに、ベータ戦を内村さんに取り付けていたカメラが録画していると思うので、今から流しますね」



 永遠がホログラムを操作すると、先ほど体験した戦いの場面がホログラムを通して写される。



時折、動画を止めながら永遠が説明を入れる。



「注目すべき場面はここですね。最後ベータの身体から異常なBDエネルギーが放出され、突如彼の能力が大幅に変化しました。彼はこの現象を能力の進化だと言っていましたね」



 黒津地は頭を掻いて言葉を漏らした。



「能力の進化……。科学者達は能力の進化は可能だと言っていたが、実例は見たことがないな――」



「内村さんはどう思います?」



「信じたくはないが……、あの力は進化としか言えないだろう」



 永遠が黒津地に視線を飛ばすと、彼は腕を組み唸る。



「うーん……。まだ正確な事はわからないな。この事は科学技術チームにも伝えておくが、皆も自身の能力について探求して見てくれ」



「銀さんの指示に従いましょう。それでは次の議題です。今回の戦闘でギリス政府との戦争は避けられません。そこで私達には二つの選択肢があります。一つは本部に戻り、仲間と共に戦争の準備を行う。もう一つは本 部には戻らずに独自に行動を起こすかの二択です」



「――普通に考えるならば前者だろうな。――だが、俺達には本部から独自に行動できる権利もら与えられている」



 黒津地達はそう言って頭を悩ませる。俺は最初から疑問に思っていたことを口にする。



「一つ聞きたいんだが、俺達の前でそんな作戦の話をしていいのか? 俺達から情報が漏れる事もありえるんだぞ……? ――――まさかその戦いに参加させようとしているんじゃないんだろうな?」



「――――ん? きみ達も参加してくれるんじゃないのか?」



 俺は惚けた顔をする黒津地を睨み、立ち上がる。



「ふざけるな。今回はお前らに協力しただけだ。これ以上俺達がお前らの手助けをするつもりはない!」



「そうか……。しかし、高崎君に聞いたが、きみ達はギリス政府に用があるらしいじゃないか? きみ達が協力をしてくれるのなら、その件についてはエスポワールが全力で支援しようじゃないか! ――どうだ?」



 俺は咄嗟に隣に座る高崎に鋭い視線を送る。すると、彼は小声でこう言った。



「安心して下さい。詳しい内容は言っていませんから」



「だがっ……!」



「まぁ、落ち着け神崎。言ってしまった事はしょうがない。せっかくだから奴らの協力を仰ごうじゃないか?」



 雨宮はそう言うとニカっと笑って言った。



「その提案、受け入れようじゃないか!」



「おぉ! それは此方にとってもありがたいことだ! これからよろしく頼むよ」


黒津地はにこやかな笑みを浮かべる。



「――話を再開しましょうか?」



 永遠は俺達に一度視線を向けると話を再開する。



「それでは先程の事について決を取りたいと思います。エスポワール本部に戻る選択に賛成の人は手を――――。次に独自に行動する選択に賛成の人は手を――――。はい……、ありがとうございます。満場一致で独自に行動すること決まりましたね!」



「今回の議題はこんなものかな? それでは決行日は1週間後の明朝だ。神崎君達は現実世界に戻ってもいいぞ。ただしダイブポイントをここに設定してくれよな? ――よしっ、解散!!」




黒津地の掛け声と共にエスポワールの他のメンバーは続々と部屋を後にした。俺達も同様に会議室を抜けた。



その際、高崎は用事があるとかで姿を消し、鈴と葛西は先程いた部屋に戻った。



俺が外の空気が吸いたいと言うと雨宮も同じ気持ちを抱いていたらしく、外へ出る。



「今更だがこの世界に朝は来ないんだな……」

 


 俺は何気なく言葉を漏らす。



「――ふふっ。突然どうしたんだ?」



「だから今更だがって言っただろう?」



 雨宮はまたクスリと笑うと天を仰いだ。



「それにしても神崎は変わったな……」



「お前こそ突然何を言っているんだ? 俺が変わった……?」



「あぁ。以前のきみはまるで人形のようで、生きている感じがしなかった。だけど今のきみからは暖かさをちゃんと感じ取る事が出来る」



「――暖かさ。たしかに、最近の俺の身体は何か変なのは確かだな。だけど、この感覚は不思議と嫌ではない。こんな感覚を抱くようになったのも雨宮に会えたからだ。お前が俺の世界に色を与えてくれた。――――ありがとうな」



 雨宮は俺の言葉を聞くなり顔を真っ赤にさせ、上ずった声を出す。



「き、きみこそいきなり何を言っているんだ!? そんな恥ずかしい事言われたらびっくりするじゃないか!!」



「ははは。どうした? 顔が真っ赤だぞ?」



「――うるさいっ! もう神崎なんて知るかっ!」



 雨宮は顔を風船みたいに膨らませ中へと入ってしまった。



 ――何故だろう。雨宮を見ていると安心する。雨宮は俺にとって大事な存在だと思う。最近ではそれと同じくらい鈴と葛西も大事な存在になってきている。あいつらがどう思っているかはわからないが・・・。



「やっと一人になったな――――」



 突如として響く声。俺は咄嗟に上空を見上げると――――



「お、おまえは……。暗黒魔王ユゼル……!」



襟に金のきらびやかな装飾が施されたマントを羽織った黒髪の男――。



ユゼルは無表情の顔を綻ばせ口を開く。



「我の名前を知っているのか?」



「それがどうだって言うんだ? いったい俺に何のようで来た!?」



「我があの蛇女と戦闘している時、貴様達もあの場にいただろう? まさか、我が気がついていないとでも思ったのか?」



 俺はあの時の事を思い出し、口を紡ぐ。



「貴様の存在に気がついた瞬間、我は理解した。貴様が我と同じ力を心に秘めていると言うことを……。そして、我と貴様は同じだと直感が告げた。貴様は我の求める答えを知っているはずだ――。この心に疼く力は何なのだ……。教えろ! この気色の悪い力は何だ!!」



 ユゼルは胸を押さえ、感情を荒げる。俺は彼の態度の変わり様に反射的に身構えた。



「お前は何を意味のわからないことを言ってる!?」



「我にもわかぬから貴様に問いてるのだろう!! ――くそっ。もういい。話し合っていても答えが導き出せないのならば、戦って見つけるまでだ。我は今までそうやって生きてきた……」



 そう言うとユゼルはエイダと戦闘した時の剣を出現させた。



俺も同様にロングソードを出 現させ、剣先を向けた。張り詰めた雰囲気の中、声が響いた。



「待てえぇぇぇ!!!!」



 声のする方に視線を移すと、先程怒って基地内に消えて行った雨宮がスキルブックを片手に此方を睨んでいた。



ユゼルはイラついた声を上げる。



「邪魔をするな! 今はこの男に用があるんだ! 貴様は消え失せろ!!」



「はっはっは! それは出来ない注文だ? 神崎は私が守るっ! 能力……」



「――させるか!!」



 雨宮が能力を発動させるよりも先に、ユゼルの片手が輝き出したかと思えば、突如彼女は後方へ吹っ飛ぶ。



さらに続けざまにユゼルは言葉を放った。



「これ以上邪魔されるわけにはいかない……。貴様を隔離する! 暗黒魔法――悪魔の結界!」



 刹那。足元の地面から俺の全身を覆う程の黒い壁が現れる。回避することも叶わず、俺の身体は一瞬の浮遊感と伴に俺投げ出された。



「――っく。なんだ!? 此処はいったい……?」



 周囲は先が見えぬ闇に包まれた空間。デスワールドの世界ではないことは確実であり、ユゼルの力によって別の場所に飛ばされた事は明白だ。



突如、目の前に光が集束する。そしてその光が弾けると暗黒魔王ユゼルが姿を現した。



「貴様を隔離した。これで邪魔者はもういない……。戦いを始めるぞ」



 ユゼルは剣の矛先を此方に向ける。射抜くような殺気全身を刺激し、俺は剣構えた。



彼の剣には黒い稲妻が纏わり付き、ドクンドクンと

鼓動する音が聞こえる。



 ――あの剣はたしか……ルーインソードだったか?



 刹那、ユゼルが先に動いた。彼がルーインソード振ると、纏わり付いていた稲妻が襲い掛かって来る。俺は咄嗟に能力を発動させた。



「能力――封印されし意志の強さ(パワー オブ ソウル)!」



 身体からは通常の白いオーラが溢れる。俺は相手の様子を窺うために、回避に専念することを決めた。



 ――俺も何度か戦闘を行ってきたおかげか、突然の事でもある程度の余裕を持つ事が出来ている。しかし、今回の敵の力量は相当なものなのは確実だ……



「暗黒魔法――戒めのシャドウ・チェイン!」



 能力により身体能力を向上させたため、初手の稲妻を掻い潜ることに成功する。



しかし、即座にユゼルは次の魔法を唱えた。ユゼルの周辺の地面から何本もの鎖が出現し、俺を捉えよ うと動き出す。鎖の表面は黒い靄に覆われていた。



「っち。数が多いな……!」



 いくら能力により五感や身体能力を向上させているとは言え、未だに増加を続ける鎖に悪戦苦闘する。



焦燥する気持ちとは裏腹に俺の心は過去に類を見ない程高ぶっていた。



 ――なんだこれは!? 心が躍っているのが感じられる! 戦いってのはこんなにも楽しいものだったのか!?



 しかし、いくらポジティブに感じたところで状況が変わるわけではなく、ユゼルの出現させた何本もの鎖が迫る。それなのにも関わらず、俺の興奮は高まりる。そして――――



『もっと戦いたい』




その気持ちが爆発した瞬間。身体から溢れ出ていた白い光が変化を始めた。



まるで黄色の絵の具を垂らしかのように、白いオーラが黄色オーラへと移り変わる。



それにつられ、身体が嘘のように軽くなっていった。それによって目前にまで迫っていた鎖を俺はなんなく避けた。



「――スピードが上がっただと?」



 ユゼルは俺の急激な能力の向上に驚きながらも即座に次の攻撃を仕掛けてきた。



「暗黒魔法――魔のダーク・ポンド!」



 俺が到達するであろう地点を予測してユゼルは魔法を放ったのであろう。



目の前の地表には知らず内に大きな黒い穴が出現していた。



俺は普段より速すぎるスピードに感覚が困惑しつつも、寸前でなんとか左に飛んだ。



しかし、急な方向転換によりバランスを崩し、地面を転がる。



「この魔法も避けるか……。貴様は先程から何の魔法を使用している?」



「敵に教える馬鹿がいるか?」



「――ふん。いいだろう。準備運動はこれで終わりだ」



 ――今ので準備運動かよ……。なんとか互角だと思ったんだがな――。それにこの新しい力はスピードが桁違いだ。でも何故突然……? 何かきっかけがあったはずだ。――待てよ ? もしかしたらさっき戦いを楽しんだのがきっかけとなって能力が変化した……? もしそうならば――



 戦いの最中にも関わらず俺は両目を瞑る。そして、ガンマ戦の記憶を引っ張り出した。



仲間が傷つけられている情景が思い浮かぶ。狂気的に笑うガンマ。



鮮血を撒き散らしながら泣き叫ぶ雨宮――。急激に燃え滾る怒りの炎。



「――――やはり。能力が変化している」



 瞑っていた両目を開くと、先程まで纏っていた黄色のオーラが今はマグマのように赤いオーラへと変化していた。



ユゼルが興味深げに言葉を漏らした。



「また変化したな? 先程よりも強い狂気を感じるぞ?」



「攻撃もせずに待ってくれているとは、意外に優しいな?」



「――黙れ。そんなに死にたいなら今すぐに殺してやる!」



「ふん。初めは戦う気がなかったが、今はこの力をもっとためしてみたくなった」


 


俺達は再度剣を構え、敵の動きを窺う。



 ――これでこの能力が少しは理解出来た。今確認出来ている能力の変化は白、赤、黄だ。白はバランス的に全てが向上し、赤は力が大幅に向上、黄はスピードが大幅に向上するのだろう。


まだ他にも変化の可能性はあるかもしれぬが、今はこの三つだな。ユゼルに勝つにはこの力を上手く切り替えて使用出来るかに掛かっている……。



対峙していたユゼルが一瞬にして姿を消失する。次の瞬間にはルーインソードの剣先が目前にまで迫っていた。



俺は即刻ロングソードを力一杯振り払い防御すると、能力により異常にまで向上した力により彼をルーインソードごと吹っ飛ばした。



しかし、彼はさほど驚きもせずに体制を立て直して黒い稲妻を放出させる。



「――焼き払えルーインソード。雷撃――黒雷斬!」



 放出された黒い稲妻はルーインソードを纏うように集束し、稲妻の剣を生成した。



それによって刀身の長さや太さも通常よりも大き

く変化する。



俺も同様に身体から放出する赤い力をロングソードに纏わせた。



「来い! 何度でも吹っ飛ばしてやる!」



 黒雷を纏ったルーインソードと赤い怒りの力を纏わせたロングソ ードが空気を割きながら衝突した。身体中に走る衝撃。



 ――力は互角か。……いや、此方が押されているだと……?


 

 俺はさらに能力を溢れさせるが、その時には既にロングソードの刀身は叩き折られ、破片が飛び散る。



「くそっ……!」



「そんな安物の武器で我のルーインソードに勝てるわけがないだろう? 貴様もその武器同様に砕け散れ」



 ユゼルは左の手の平を此方に向ける。すると俺の全身は何か大きな物が当たった時のような衝撃を受ける。ユゼルは表情を曇らせた。



「――耐えただと?」



「げほっ。げほっ。げおっ……。ギリギリ間に合ったか――」



 ユゼルの攻撃を受ける寸前、俺は攻撃に特化した赤いオーラをバランス的に身体の能力が向上する白いオーラに切り替えた。



それによって彼の攻撃を耐えることが出来たのだ。



 ――良かった……。一か八かの賭けだったが上手く切り替えることが出来た。それでも相当のダメージを食らってしまった――。


暗黒魔王ユゼル……。ここまでの強さとは……。だが、ここで負けるわけにはいかない。これ以上雨宮に心配かけるわけにはいかないんだ――――!



 頭の中には意気消沈し、悲しみの表情を浮べる雨宮の顔が鮮明に浮かび上がってきた。



俺は半分程になってしまったロングソードを握り

締め、深い闇を秘めたユゼルの目を睨む。



すると、奴は突然取り乱し始める。



「そ、その目だ! やはり貴様にも我と同じ力がっ! 教えろっ! この力の正体をっ!!」



「お前は何に苦しんでいるんだ? 俺とお前が同じ力を秘めているだと……?」



「貴様は知っているはずだ! 気の世界には存在することが許されないこの力の事を!」



 ――この世界になくて俺と奴が持っている力……。待てよ――。それってまさか……



 ユゼルは顔を苦痛に歪め、さらに自分に言い聞か せるように喋り続ける。



「この力があるせいで我は……。狂気に勝てるのは狂気のみ――そう。我を誰だと思っている? この狂気渦巻く世界を統べる魔王だぞ? こんな力には負けぬ――。破滅の剣ルーインソードよ……。我の心に潜む悪しき力を喰らえ!!」



 ユゼルはそう言うとルーインソードを上にかかげた。そして――――――――――



 グサッ。鈍い音が耳の奥を刺激した。俺が止める暇もなく、ユゼルはルーインソードを自身の胸に突き刺した。



彼の胸からは多量の鮮血が流れ落ち、苦痛の表情を浮かべながら叫んだ。



「さぁ……、食い尽くせぇぇ! ――狂気よっ! 我と共鳴しろおぉぉぉ!」



 ユゼルの胸に突き刺さったルーインソードがブルブルと振動し、何処からか黒い異質なエネルギーがルーインソードに集まっていくのだ。



そのエネルギーは刀身を伝ってユゼルの身体へと流れていく。それによってユゼルの真っ白な肌は黒く染まる。



 ――あれはなんだ? この世界に渦巻く狂気……? 



 さらに集束する高濃度の狂気。そしてルーインソードの震えが止まると同時にユゼルの全身が狂気に呑まれた。



彼は気色の悪い笑みを浮べると左手を俺に向けて突き出した。



「あひゃ? 暗黒魔法――闇吹雪ダーク・ブリザード



「――まずいっ! 能力変化――黄色!!」



 ユゼルの攻撃が成功する前に、能力を変化させて回避を試みる。



そして、ユゼルを追い越し背後へと移動した。刹那、響き渡る高域の音。ふと元いた場所に視線を向けると、そこは黒ずんだ氷に覆われていた。



彼は黒く染まった顔に赤い両眼を怪しく光らせながらケタケタと気味の悪い笑い声を上げる。



「あひゃあひゃ。良い感じだぁ……。こんなにも狂気を身近に感じられる」



「――まるで別人だな。ガンマの野郎をを思い出す……」



「ガンマ? 誰だぁそれ? まぁ、いいや……。まだ狂気が足りない―。もっとだ……。もっと狂気を!!」



 再度胸に刺さったルーインソードが振動し黒い異質なエネルギーが集束する。



 ――またか……。見る限りではあの剣がユゼルと狂気を繋げているのだろう。ならばあの剣をどうにか出来れば狂気を止められるかもしれない。俺に今の奴を止められるのか? 


――――正直なところ無理だろう。奴は自分の意志をコントロール出来た初めとは違い、今は

説得 も出来ない。だが、帰らなければならないのだ……


 能力を変化させ、スピードを全開まで上げて地面を蹴る。



それによってユゼルは俺を見失い、狂気に呑まれた赤い目をキョロキョロとさせた。俺はその間に背後に移動し、



「能力変化――赤!!」



 即座にスピードに特化した黄色を攻撃に特化した赤に変化させる。



さらにロングソードの折れた部分を補うように赤いオーラで剣を形作り、ユゼルの胸に突き刺さるルーインソード目掛けて全力で振りかぶった。



――――しかし、俺のロングソードはルーインソードに当たることはなく、直前で出現した闇の壁に阻まれた。



「あひゃひゃひゃひゃ……! 暗黒魔法――――闇の交響曲シャドウ・シンフォニー



 突如鳴り響く音楽――。その音楽を聴いた瞬間、全身が震え、心が疼いた。ユゼルの言葉がさらに加速させる。



「わかっているのだろう? 貴様にも大きな闇があることを・・・。大人しく狂気に身を委ねろ!」



 ――なんだっこれは……。胸が…………苦しい――。意識が遠のいて……いく



「あめ……み………………や……」






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