動き出す物語2
雨宮は先陣を切って戦闘音が鳴り響く外へと足を踏み出した。外へと出ると黒津地、内村、永遠の三人が他の男達と対峙していた。
黒津地は俺達に気がつくと驚きの声を上げる。
「――おまえら! 何故出て来た!?」
――あいつらがギリス政府か。ガンマのように狂っているようには見えないな……。
「この天才の葛西様が一緒に戦おうっと言ってんだよっ! 感謝しやがれ!!」
「おまえら……。――――ありがとう」
「――銀さん。お喋りをしている暇はなさそうですよ……」
「わかっているさ……幸良」
俺達の出現に傍観していたギリス政府の連中の一人が口を開く。
「なんだそのガキどもは? お前らの新しい仲間か?」
黒津地はそいつの言葉には返答せずに小声で指示を出す。
「――お前ら良く聞け。これから三方向に戦力を分散する。乱闘はこちらにとっても好ましくないからな。――神崎といったか? お前は隼人と共に行け。そこの忍者は永遠だ。そして、そこの黒髪の女は俺と来い」
「俺と鈴は忘れてるぞ!?」
「きみ達は見たところ戦闘できるレベルではない。だから俺達の拠点の防衛にあたってほしい。拠点の位置はここから北西に 行った所だ」
「俺だって戦えるっ!」
「りく君! 鈴を守るんだろ?」
「――――わかったっす」
「よし……。それじゃ頼むぞお前ら!!」
黒津地が声を上げると其々永遠と高崎は右方向へ、内村は左方向へと走り出した。
俺も遅れを取らないように全力で内村の後を追う。どうやら黒津地と雨宮はその場に残るようだ。
ギリス政府の連中も此方の作戦通りに俺達を追ってくる。
――この内村って言う男。なんていうスピードだ……。能力を全開で使用しているにも関わらずどんどんと距離が離されて行く。
ギリス政府の連中も内村に負けないくらいの速さで追いかけて来る。
俺達はそのまま走り続けた後、広く開けた荒野に出たところで内村がやっと足を止めた。
俺は息絶え絶えになりながら膝に手をつく。
刹那、背後で感じる気配。俺の身体は確認する暇もなく吹っ飛ばされる。
身体中にはしる衝撃。地面を転がりながらも視界に捉えたのは敵の攻撃を終えた姿。
「ぐっ………………」
――攻撃されたのか? 能力を発動していたおかげかダメージは緩和出来たようだ。しかし、一発が重過ぎる……
吹っ飛ばされる俺に見向きもせずに内村は敵を見据えた。敵は肩まで伸びた緑色の髪をしており、手にはたくさんの指輪をはめていた。
顔をニヤニヤと歪め、口を開いた。
「かろうじて死ななかったところを見ると、ただのガキではないな? 高ランカーの俺の攻撃を喰らったんだからな」
「ふん。ランクDが高ランカーなのか? もしそうならランクCの俺はどうなんだろうな? ……ベータ」
――ベータ? 二番目のギリシア文字。奴も幹部の一人か!
内村が馬鹿にしたような口ぶりでベータに言い放った。ベータさらに笑みを深め、返答する。
「ははは っ……。お前がCランクか! まさか俺より上になっていたとはな――。だが、忘れてはいないだろう? 以前俺に惨敗したってことを?」
「何時の話をしている? ――過去の栄光にすがりやがって」
「まぁ、いい――。お前がどのくらい強くなったか見せてもらおうじゃねぇか!? っは!!」
ベータが片手を内村に合わせ一声上げると、彼の背後の地面に埋まっていた岩が振動し始める。
そして、地球の重力を無視し岩は浮遊し
始めた。
人間の体程もあるような岩は物凄い速さで内村へと飛来する。内村は一度舌打ちを打つと、襲い掛かる岩を軽々と避けた。
しかし、その岩はまるで生きているかのように内村を追尾する。
「やはりお前の能力。念力は厄介だな……」
「昔の苦い記憶が蘇ったか?」
――奴の能力は念力か。それならば内村の能力は……?
俺は未だに激痛が走る身体に鞭を打ち、なんとか立ち上がろうとする。
ベータは既に俺への興味は失っているため、攻撃される心配はないだろう。
しかし、このまま地面に這いつくばっているわけにはいかない――。
ベータが再度声を上げると、背後に生えていた木々が先程の岩のように宙に浮かぶ。その数10本の木々が内村に襲い掛かった。
内村は流石にその数を見て顔を歪め、立ち止まる。そして、言葉を放つ。
『古来より消えることのない聖なる炎よ。闇を打ち消し、光を灯す力を我に与えよ。能力――無限の炎』
そう言葉を放った瞬間。内村の身体中から溢れ出したBDエネルゴーが真っ赤な炎へと変化する。そして、襲い掛かる岩や木々を含めて飲み込んだ。
さらに炎はベータへ襲い掛かる。彼は即座に地面に手を当てる。すると、突如地面が振動し、彼を守るように浮き上がった。
内村は炎が浮き上がった防壁ごと飲み込んだのを確認して炎を消すと、そこには何も残されていなかった。
木々は勿論のこと大きな岩でさえ溶けてしまっていたのである。
――ベータの姿がないってことは殺ったのか? しかし、こんな簡 単に……?
俺は内村へと視線を飛ばす。彼の顔は依然として厳しい顔つきをしており、言葉を漏らす。
「――おい。いつまで隠れているんだ? 早く出て来い」
直後、目の前の焼け焦げた地面が浮かび上がり、無傷のベータが姿を現した。
「まさかここまで能力の質も向上していたとは――。正直、驚いたぜ?」
「俺をなめすぎだ。お前もそろそろ本気を出したらどうだ?」
「――黙れ。調子に乗ってんじゃねぇぞカス
が!?」
ベータは懐から何本ものナイフを取り出し、能力で宙に浮べる。
柄の部分には緑の宝石のような物がはめ込まれ、金の装飾が施されたナイフはベータの周りを円を描くように回った。
「そんなに死にたいのか? いいだろう。さっさと殺してやるよ!!」
内村はベータの単調な攻撃に呆れ果て、身体中から炎を放出させた。そして、襲い掛かるナイフを飲み込むように炎を操る。しかし――――
「なんだと……! 炎が飲み込まれている!?」
炎がナイフに近づくと柄に取り付けられた緑の宝石が輝き、襲い掛かる炎を吸い込んでいくのだ。ナイフは炎を吸い込みながらも内村へ突き進む。
彼はそれを回避しようと試みる。しかし、ナイフはベータによって操られているため、何処までも追尾されてしまう。
――厄介な能力だ。くそぉ・・・。俺が動ければ注意を此方に向けることも可能なのに――。なぜ能力が発動しなくなってしまったんだ……?
なおも迫るナイフを避け続ける内村。時折、隙をついて能力でベータへと攻撃を行うが、瞬時にナイフに吸収されてしまう。
悪戦苦闘する内村をで見詰めベータが口を開いた。
「もうお前に勝ち目はない。勿論お前の仲間達もそろそろジ・エンドだろうな。特に銀の野郎なんかとっくに死んでいるかもな? なんせあいつの相手は――殺人鬼デルタなんだからな」
「――殺人鬼デルタ。あいつか……!」
ベータの言葉を聞いた内村の顔は先程までの冷静な表情を一変させた。さらに彼は攻撃の手を止めずに喋り続ける。
「まぁ……、あのおっさん一人ならば勝利の確率も上がったかもしれないが、そこのガキの仲間も残っていたよな~? あ~あ……。もう死んじゃって いるだろうな~。――もったいない。俺が犯してやろうかと思っていたのに……」
――こいつは何を言っている? 雨宮を犯すだと……?
「今行けばまだ間に合うだろうか? デルタの奴はいたぶるのが好きだから胴体ぐらいは残っているかもな!」
ベータの言葉が俺の全身を刺激する。高ぶる動機――俺の中で大事な何かがプツンと鈍い音を立てて切れた。そして体の奥底から感じる力。乾ききった体内をドロドロとした血液が流れ、生まれる感情。
『――こいつを殺す』
「だまれ……」
俺が小さく漏らした言葉にベータは此方に視線を向けた。
「――あん? なんか言ったか死に底無いのガキ?」
「だまれって言ってんだよ………………」
先程はまったく発動しなかった能力が今では身体中から溢れんばかりに漏れ出す。
さらにガンマと戦闘した時は身体中から溢れたのは
は白い光であったが、今回は真っ赤なモヤモヤとした光が身体から放出されていた。
俺の身体の奥底から染み出す感情を体言化しているような感覚である。
俺は激しくなる高鳴る胸を抑え、頭は冷静に保つ。
――やっとこの能力の使い方がわかったかもしれない。おそらくこの能力は俺の強い意思や感情が引き金となって発動するのだろう。
ガンマと戦では『雨宮を助けたい』という強い意志が体言化した白い光。今回は『こいつを殺す』と言う強い怒りが体言化し赤い光となって現われたのだろう。
「なんだその赤い光は!? まさかお前の能力か……?」
――俺の能力は自身の感情に左右されるようだな……。何故、今回白い光でなはく赤い光が放出されたのかはわからないが、推測を立てるならばガンマとの戦闘の時はまだ赤い光が発動出来る状態ではなかったではないだろうか?
ベータは虫の息のはずだった俺が突如として立ち上がったことに驚きを隠せないでいるようだった。
しかし、それでも内村への攻撃を緩めないのは流石といったところか。俺はそんな内村に視線を合わせ頷いた。
――俺が攻撃を仕掛ければ奴はナイフを此方にも飛ばすだろう。それによって隙が作れれば内村が攻撃する事も出来るはずだ。
「――行くぞピーマン野郎」
俺はそう言葉を放つと能力を足に巡らさせ、ベータへと駆ける。
ガンマとの戦闘の後に気がついたことのなのだが、この能力は身体全てを上昇させるより、今回のように一部分だけを強化するほ方が良いらしい。
――ん? 予想以上にスピードが出ない……? 能力が変化したからか?
ベータは襲いかかって来る俺に右手を動かし、内村を攻撃していたナイフを少しだけ此方に飛来させる。
俺は思っていたよりスピードが出せずに内心焦りを感じていたが、一度踏み出した足を止めることは出来ない。ベータの元へと到達するよりも先に迫るナイフ。
その数は5本と少ないが、相当なスピードなため俺は能力で反射速度を上げる。
「――くそっ! 速いなっ!!」
「ふははは! いきがっておいてその程度かぁ!? おらぁ!!」
なんとか初手を避けることには成功する。だが、反射速度も今までのようには上昇せず、ナイフの動きを確実に捉えることが出来ない。
――何故いつものように上昇しない!? やはりこの赤い力が原因なのか……?
無理にスピードを落とそうとしたことにより俺は態勢を崩した。
さらに全方位から俺を貫こうと加速続けるナイフが迫る。逃げ道は一つしか残されていなかった。
「ギャハハ! もう逃げ道はねぇぞ! 死にやがれえぇぇぇ!!」
ベータの笑い声が俺の心を焦らす。それでも意を決し、身体から溢れる赤い力を右手に全て集めた。そして――――拳を地面に振り下ろした。
ドッゴオオオオオオオンンン
赤い オーラに包まれた拳が地面に触れた瞬間、まるで隕石が落ちたかのように大きな衝撃音が鳴り響いた。
そして、落下する感覚と共に体内に入り込む土煙。
「げほげほ……。いったい何が……? ――――なんだこれは?」
何時の間にか深さ3メートルはあるであろう穴のような場所に落ちていた。俺は呆然としながらもなんとかその穴から這い出る。
そして視界に広がっていた景色を見て俺はさらに唖然とした。
目の前には巨大なクレーターのような穴が広がっていた。
「――まさか俺がやったのか……?」
「――お、おまえはいったい何者だ!?」
少し離れた位置からベータの声が聞こえ視線を向けると、彼は額に汗を浮かべ動揺した目で此方を見ていた。
予想もしない力を発揮した俺に余程驚いたのか、内村への攻撃が止まっていることに気がついていない。
その隙を逃すことはなく、内村はベータの元へと駆け出す。
「消し灰になれ! インフィニティ・ファイヤー!!」
内村の身体中から放出される炎。その炎はまるで蛇のようにベータの身体に纏わりついていく。
身体に纏わりついた炎は一瞬にしてさらに大きな炎へと変化し、ベータの身体を包んだ。
「ああああぁぁぁぁぁぁっぁぁぁああああああ」
べータは悲痛な叫び声を上げながら必死に炎を消そうと地面を転がる。
しかし、炎はさらに勢いを増して燃え上がった。その度にベータの能力が発動され、周りの木々や壊れ果てた瓦礫などが浮遊し宙を不規則に飛び回る。
内村は完全に止めを刺すためにさらなる連続攻撃を仕掛けた。
炎をサッカーボールくらいの火の玉に形を変換させ、連続でベータへと投げつける。
暫くの間ベータの悲鳴がこだましていたが、次第に聞こえなくなっていく。
「――はぁ、はぁ、はぁ……」
「大丈夫か内村?」
「あぁ……。心配するな。能力を多用しすぎただけだ」
俺は息のあがった内村の元へと近づきベータに視線を向ける。
「――死んだか?」
「あそこまでやったんだ……。死んでいなかったら此方が困る」
「それもそうだな。あれなら確かめるまでもないか……。おい――。今、動かなかった……?」
刹那。焼け焦げ地面に 転がっていたベータの身体から目に見える程の膨大なBDエネルギーが溢れ出した。
突如として溢れ出たエネルギーは彼を中心に波のように広がり、周辺を包む。
その波は俺達をも飲み込む。俺達は能力を過度に使用していたため、BDエネルギーが底を尽きかけていた。
それゆえ迫り来るエネルギーから逃げることは叶わなかった。
「なんだこれは!?」
「――黙ってろ小僧。これは奴のBDエネルギー……。逃げたほうがいいかもしれんな」
そう言って俺達がその場を離れようとしたが時は既に遅かった。
「か、からだがうごかない――。おい内村! どうなってる!?」
「くそ。落ち着けって言ってんだろ小僧!」
「――クックック。そうか……。これが俺が求めていた力………………」
死んだと思われたはずのベータの声が俺の鼓膜を刺激した。内村は顔を青ざめさせ口を開く。
「何故お前が生きている……?」
「お前らのおかげで体はボロボロだ……。能力なしでは動くことも出来ない――」
――なるほど。奴は能力で身体を宙に浮かばさせているのか。
「ふざけるな! お前には能力を使用する力はもう残っていないはずだ!」
内村は動かない身体を必死に動かそうともがきながら怒鳴る。ベータはそんな彼を鼻で笑い、ゆっくりと言葉を放った。
「俺の能力は今まで生物は直接手で触れなければ操ることが出来なかった。しかも、人間に対しては効果が見られなかった……」
「――いきなり何を喋ってやがる?」
「お前も聞いたことがあるだろう? ダイバー固有能力進化の話を……」
――ダイバー固有能力の進化……?
「それは様々な世界から取り入れた技術を利用しても解明できていない謎の一つだ。まさか、お前の能力が進化したとでも言いたいのか……?」
「あぁ。そうじゃなければこの状況を説明できないだろう? ――げほっ。げほっ……。やはり俺の体はもう瀕死のようだな。早く治療しなければ……。そろそろお前らには死んでもらおうか――」
「待て! まだお前の能力の進化について聞いていない! 話せっ!!」
内村は必死に時間を稼ごうとしているのか、質問を投げかける。
しかし、身体のダメージが余程あるのかベータの目は虚ろになりつつあった。
既に内村の質問は届いていないらしく、ベータは右手をゆっくりと胸の位置まで上げ、此方に手の平を向ける。
「さぁ、仲間同士で殺し合え………………」
刹那。俺達の身体が意思とは無関係に勝手に動き出す。そして俺達は互いの首に両手をかけた。
「お、おいっ! っぐ……。やめっ……ろ!」
「おまっ……こそ。げほっ――――」
ベータによって操られた身体をどうすることも出来ずに俺達の両手は互いの首をきつく締め付ける。
爪が首に食い込み、血が手に流れ、ポタポタと地面を真っ赤に染めていった。
――やばい……。もう息が………………。
息が限界に近づき、意識を完全に失いかけた瞬間。突如として身体の自由が戻り、俺達は地面に崩れ落ちた。
「げほっ、げほっ、げほぉ――――。た、助かった……」
「……小僧。ちゃんと爪を切りやがれ――。げほっ……」
「お前こそ――。それにしても何故急に身体が開放されたんだ?」
「流石に奴の身体も限界だったと言うわけだろう」
内村が見詰めている方に俺も目を向けると、糸の切れた人形のように地面に座り込むベータの姿が視界に写る。
ベータの口からは大量の血が流れ出ているのが見て取れた。
「――本当に死んだのか?」
「おそらく……。だが、気お付けろ。先程のような事があるかもしれないからな――。お前はいつでも戦闘を出来るようにしておけ」
内村はふらついた足取りで歩き出し、ベータの安否を確認した。
「――大丈夫だ。もう完全に死んでいる」
「……そうか」
「落ち込んでいる暇は無いぞ? ――っち。予想以上に時間がかかってしまったな……。さっさと戻るぞ!」
疲労の溜まった体を無理やり動かし立ち上がる。身体の骨がバキバキと今まで聞いたことのないような音を立てた。
内村はそんな俺を放置し、足早に 進んでいく。
――くそっ。奴は人が死んだと言うのに何故こんなにも冷静なんだ……? ――っち。そんな事より俺はいつからこんなに心が動揺するようになったんだ……?
「足にだいぶ疲労が溜まっているな……」
「――ふん。あれだけBDエネルギーを一度に使用したんだから当たり前だろう? お前は能力はいったい何だ?」
「――俺はお前らを信用したわけではない。だから能力も教えない」
「……っち。うざったいガキだ――。さっさと行くぞ! 銀が負けるとは思わないが、敵が敵だからな……」
――先程ベータが言っていた奴の事か……。内村の表情を見る限り、一刻も早く向かわなければならないようだな。
俺は急に焦りが蘇り、歩むスピードも自ずと増していった。それから15分程歩いたところであろうか、前方で白い煙が上がっているのが視界に写った。
「――――あそこか!」
俺達が目的の場所に着くと、デコボコになった地面、燃え盛る木、そして充満する白い煙が広がっていた。
この光景を見ただけでこの場で壮絶な戦闘が行われた事が窺える。俺は不安を募らせながら目を凝らすと、心配の元凶である人物の声が響いた。
「――そこに誰かいるのか!?」
「雨宮か!? 俺だ! 神崎だ!!」
「――神崎か!! 生きていたのか! 今そちらに行くから少し待ってくれ……」
少しすると雨宮が煙の中から黒津地と共に姿を現した。
雨宮は無傷に対して黒津地の服は所々破け、血が滴り落ちていた。彼は悔しそうな表情を溢れ出しながら口を開く。
「――よぉ。無事だったか……」
「当たり前だ。お前らこそあのデルタと戦闘して良く生きていたな?」
「なんとかな……」
内村は安堵の息を吐き、雨宮の代わりに黒津地に肩を貸す。
「――神崎。きみはずいぶんとボロボロだな?」
「まぁな……。俺と違ってお前は汚れ一つないが……?」
俺の言葉に雨宮は高らかに笑う。俺達に聞こえない小声で話していた黒津地が口を開く。
「色々と考えることがあるようだな……。永遠もそろそろ戻ってくると先程メールが来た。俺達もき み達のアジトに戻ろうか――」
「鈴とりく君はどうしているんだ?」
「――実は……アジトとの連絡が掴めていないんだ」
「なんだと……! ならおっさん達のアジトに向かうべきだろう!?」
「――そうだな。大丈夫だとは思うが、まずは念のため永遠も合流しよう。……そんな心配そうな顔をするな! 拠点は俺よりもはるかに強い人が守っているから大丈夫だ!」
黒津地の言葉に雨宮は疑惑に満ちた目で彼を睨む。
「……くそっ。鈴達は本当に大丈夫なんだな?」
「あぁ。心配するな……。状況を確認するためにも早く行こう!」
俺達はその後、仮拠点へと足を進めた。
頭の中では鈴と葛西のことや今回の戦闘で得た様々な情報が錯綜し、俺達に密かに向けられた鋭い視線に気がつく事が出来なかった。




