陰謀のはじまり
「では・・・それとは知らずに敵の本隊とぶつかるのか?」
「こちらの・・本隊合流前の・・二百人足らずの部隊
「それに対して敵四百の別部隊・・
そのすぐ後から来る1万の敵の部隊・・。
今回の戦いでは敵の本隊の移動をどうしても1日いやせめて・・半日
遅らせる必要があるとはいえ・・
この二百人の部隊には四百人の部隊の事のみで
一万の本隊の存在の事実を知らせず
彼らがはさみ撃ちに会い・・おそらくは、全滅するのを承知で、送りだしたのですか?
もっと被害の少ない別の方法もあったのでは?」
「いや、実はな・・・ここだけの話・・。
この部隊の中にいる・・強制参加を命じられた二十一人
今の政治の中枢におられる方々に大変都合の悪い人物達なのだよ・・。
アーシュは・・
以前リアンに会った時に彼がもらした言葉を思いだしていた・・。
リアン・・彼はこの国の支配者の息子の一人で
しかも彼は身分の低い寵妃の息子・・。
正后には息子がいて
腹違い・・母親違いの兄達がいる・・と
仲が悪く、父親の身分が高いだけに・・命を狙われた事があった・・と
彼は酒を飲みながら淡々と話していた・・。
あの時は、平然とよく飲むもんだとも思っていたが・・
では、奴らが消したい二十一人の中の一人・・
その一番は・・
おそらく彼だろう・・。
俺の国でも、よくある事だが・・白の国もどこも、変わらないな・・。
彼らが立ち去り、物陰からアーシュが出てきた
そこを
「アーシュさん!」 「ワン子!エイル! それにその白いネコは!」
「大変なんです!アーシュさん!! リアンさんを止めないと!!!」
「お願いアーシュ!兄さんを!リアン兄さんを助けて!!」
「エイル 質問がある・・この戦いの事を・・・
この戦いで片腕を失ったリアンから詳しく聞いてるのだろう?
この場合・・回避・・または戦局の状況をこちらに有利に運ぶには・・どうしたらいい?」
「あ!」小さな声をあげるエイル・・。
リアン兄さんは二百人足らずの部隊で 地形と大きな魔法の攻撃で
敵 北の巨人族の四百人規模の部隊を攻撃して・・
足止めしてからすぐに撤退それからその後
西に移動して味方 本体の部隊・・2千の部隊と合流して
更に別の作戦に参加するはずだったの」
「それから?」
「ところが敵は四百人規模の部隊だけでなく すぐ近くに敵本体の五千の部隊がいて・・
兄さんの部隊に気がつき すぐに来襲した・・。
「五千?」
「ええ 本来は一万の部隊だったけど・・。
アーシュは覚えてないだろうけど、ちょうどアーシュ達の軍
黒の国が巨人族に攻撃を仕掛けてて
半数は 防衛のために戻ったらしいの・・
その後の話・・ アーシュ達は白の国の王都へ攻撃した敵を倒してれる事になるんだけど
で・・
リアン兄さんのほうは 物見の情報が遅れたおかげで、その五千の部隊に気がつかず・・
兄さん達の部隊は・・ほぼ全滅・・・」
「誰かが 不思議な・・白い光の見たことのない大規模な魔法を放ったおかげで
兄さんは戦いで
片腕をなくしたけど生き延びて・・それから、他にも数十人が生き延びて・・。」
「魔法の光を見て異変に気がついた味方二千の部隊が救援にかけつけたの
二千の部隊には強力な魔法使いや飛竜などの強力な力を持つ幻獣たちが多くいたから・・
敵を殲滅する事が出来た・・。」
「でも、もし・・救援が早ければ・・
半数は助かったはずだと・・兄さん悔やんでいた」
涙を流しながらエイルは 話を続ける
「あるいは、先に二千の部隊に合流出来たなら・・誰も・・きっと・・。」
「エイル・・最悪の場合でも・・リアンは生き延びる運命だ・・。
だから、また・・彼に会えるから そう泣くな・・・。」
「また、この時間の旅から帰還して・・彼に会ったら、彼のために
楽器を演奏してあげたらいい・・」
「酒と・・それからエイルの手料理なら・・たとえ・・いや・・その
きっと喜んで残さずに食べると思う・・。」
横を向き視線は宙をさまよい
「今・・料理の事で 微妙な含みを感じたけど・・気のせい?」
半ばやぶ睨みになるエイル・・。
「気のせい・・」
上を向き目をあわせず
きっぱりというアーシュ
はっ!先の方で煙が上がってる・・
それに兵士の剣を交わす音に絶叫が響きわたる
「もう!始まってるのか! エイル!ワン子!
西にいるという2千の部隊に知らせろ!それで半数の人数は助かる!」
「地上に降り立つのに風の魔法を使う!」
「俺は この戦に加わる!」大鷹から飛び降りるアーシュ!
「いいな!急げ!」
「アーシュ!」「アーシュさん!ワンワン!」
途中まで風の魔法を使いながら
わん子から隠すように
マントを隠れ蓑にして サッと彼の背中から 出現したのは
黒みを帯びた翼
そして地上へと降り立つと
炎の魔法と魔法の剣で敵をなぎ倒すアーシュ・・・
大技の・・炎の竜か 大地の竜を呼び出せば 敵の多くを倒すことが可能・・だが
ズキン!わき腹が痛む・・やはり・・まだ体力が戻ってない・・か・・・。
「レグルス!リアン!どこだ!!」
「大地の槍!」 地面から 槍のような岩が瞬時に盛り上がり、敵をなぎ倒す
崖から落ち・・レグルスの方は上半身を起し
それから足をひきずり どうにか立ち上がる・・そばに倒れてるリアンのそばにゆく・・。
「ひっ!」悲鳴がもれる・・。何本も矢が刺さり・・
そして・・敵の毒を持つ獣に
レグルスをかばって・・
その右腕はかろうじて繋がってるもののなかば食いちぎられいた・・。
更に 崖から落ちた時に 奇妙な形に曲がっていた・・。
気を失ってるのは或いは幸いだった・・・
激しい激痛とショックで持たないかも知れないから
このままでは毒がまわってしまう・・・。
見る見る黒く変色してゆく右腕・・。
腕の上の方を紐できつく縛り・・
念の為に局部の麻酔用に持ち歩いてる眠りの粉をリアンにかける・・
すまん!リアンどの! レグルスは自分の剣をリアンの右腕めがけて 振り下ろした




