過去の時間 エスケープ(過去と未来の戦の輪舞)
廊下には見張りの兵士の死体が転がり
すぐ傍にはアーシュの部屋アーシュの部屋に 忍び込んだのは・・
息も絶え絶えの血まみれの兵士が一人
アーシュの故郷である黒の国の兵士
彼は 黒の国が敵である巨人族に襲われた事と
王宮が陥落した事をアーシュに伝えて、息絶えた。
彼にそっと、部屋の白いシーツをかぶせ思い悩んだ後
「本来なら 俺は捨て石 黒の王や他の子供が生き残るはずだった」
「もし・・もしも・・運命が味方して、生き延びる事が出来たなら」
そうつぶやきアーシュは わずかばかりの荷物をまとめ
部屋の奥に隠していた短めの剣ショートソードを手に取り 部屋の扉を開いた
アーシュは・・
振り返り部屋の中のテーブルの上のチエス盤に
エイルが先程まで座っていた椅子を眺め
感慨深げに ほんの少しだけ見つめて今度は振り返りもせず 部屋を出ていった。
エイルの部屋では リアンが琴を演奏していた。
暖かなミルクがたっぷりと入ったココアが鼻腔をくすぐる。
「美味しいね☆ワン子さん」 うふ
「そうですねワンワン!」
でもワン子は 内心オロオロしていた・・と言うのも先程エイルさん
・・いえ・・17歳の現在のエイルさんの頼まれ事を思い出していたワンワン
「あの子供時代の・・あの時、僕・・いえ私ね心配するリアン兄さまに引き止められて
アーシュに会えなかったのあの日の夜
アーシュはお城から抜け出して それから十年近い時間がたつまでずっと、会えなかった・・。」
「それにお城から抜け出す時に
見張りの兵士に襲われて大怪我をしたらしいの!
もし 城から抜け出せなかったら、アーシュは処刑されてらしいだけど・・。」
「・・せめて アーシュが怪我などしないように
子供時代の僕が守ってあげたいの僕がいれば
見張りの兵士はアーシュには手を出せないだろうし
あの晩・・もう一度だけ 子供時代の僕・・いえ私に アーシュに会わせてあげたい」
「あ!」ワン子はわざとココアをこぼした!
「ああ!大変 タオルは・・・あれ?どこだろう?」
隣の部屋に予備があったから 僕が取ってくるね と
エイルさん扉を開けようとしたエイルさんに「エイル!」
「どうしたの?リアン兄さま」
「まだ、盗賊がうろうろしてるかも知れないから・・部屋から出ちゃ危ないよ エイル・・。」
めっ!と軽くエイルさんを諭し
それから安心させるように微笑むリアンさん
「タオルの代わりの布が何かあったよね・・ハンカチを貸してごらん」
僕の頭の上の小鳥
エイルさんが飛び立ち びっくりしたように部屋をグルグルと回る
「え!どうしたの!小鳥さん!」と子供時代のエイルさん!!
驚いて様子を見てるリアンさん
それから 小鳥さんはリアンさんの顔にアタック!
「うああ!」驚いたふりして! 部屋にあった大きな飾りの壷に手をやり
手が滑ったふりして それをリアンさんの方に転がす ワン子
あ、案の定 壷に足を取られ転がった・・。
狙い?通り目を回してるリアンさんごめんね・・リアンさん
すごく~アーシュさんなんかより(おい!ワン子そこまで言うか!)
良い人なのに、すごく良い人なのに・・・あう・・ワンワン。
温和で優しくて・・・この前 ワン子に美味しい食事をご馳走してくれて
しかも お菓子までくれたのにごめんなさいワンワン!
恩を仇で返してしまいました・・ワン!・・ご、ごめんなさい ワンワン!
「エイルさんエイルさん ええつとリアンさん なかなか目を覚ましません」
(実は軽めの眠りの粉をリアンさんにかけたワン!)
「お医者様を呼んできましょう! 部屋から出ちゃいけないといわれましたがリアンさんが心配ですワン!」エイルさんはうなずいて 僕らは部屋を飛び出したワン!
小鳥さんが こっちと誘導する!
「あ!あの!あの!誰かいますワン見張りの兵士さんみたいでした!
ね!兵士さんにお願いしてお医者さまを呼んでもらいましょう」
そう言ってワン子はもう一人の・・
子供時代のエイルさんを誘導
部屋の角
廊下のコーナーを曲がると
そこには見張りの兵士 ケンタウロスの兵士に
今にも槍で突かれそうなアーシュさんがいた!
「危ない!アーシュさん」 声をかけられ
危うく避けるアーシュさん そうか!
17歳の・・エイルさんが言ってのは・・
この事だっただねワン
だが!次の一撃が来た!
アーシュさんに向かう槍の攻撃!
カアアアアン!カキン!
武器同士がぶつかり合う!
大きな音
横からもう一人のケンタウロスの戦士が現れた!
アーシュさんに放たれた槍の攻撃を戦士の持つ槍で払う!
「おい! 駄目だろうが!!! その者は 大事な黒の国からの人質!預かりもの!!」
「まだ処刑とは・・殺すと決まったわけではあるまいが!」
女性の声! ケンタウロスのレグルスさんだった・・。
「同じことでしょう!レグルスさま!」
「既に黒の国は滅んだ! その者の運命は決まったも同然!」
血気にはやる もう一人のケンタウロスの戦士。
「何故!かばうのです!
どれだけの多くの仲間のケンタウロスが黒の国の輩に殺されたと思っているのですか!
レグルスさま生かしておけば 必ずや因縁の種になりますぞ! 絶たねば危険です」
「ふん!私はまだ・・魚料理を食ってないんだ」
ぽつり・・とレグルス
「はい?」 怪訝な顔をするケンタウロスの兵士・・。
「いや・・なんでもない・・
おい!そこの!魔法使いの弟子だったな ワン子!
何か軽めの魔法の呪文でも唱えて 血気にはやってる奴の頭が冷えるまで
殺さない程度にやっけてくれないか?」
「すまんが・・私だと・・つい手加減なしで 殺してしまいそうだ・・。」
「ああ!ハイですワンワン!」
「ネコの手ええええ!」
空中から巨大なネコの手が現れ・・
そのネコの手がケンタウロスの戦士を撃つ・・というより頭に直撃☆!
ゴイインン
あ・・ああ 気を失ったワン!
「ふふん! まあ!こんなもんでしょう!大活躍!」
得意になるワン子。
「アーシュ・・」
エイルさんに呼びかけられて
はっ!とするアーシュ
「俺は大丈夫だから・・エイル!お前は部屋に戻れ!」
首を振るエイルさん
「エルトニア姫・・・
彼にアーシュ殿に城を出るまで ついていってあげた方が良い」
「え・・?」 そっおっと膝をつき・・腰を下げて 顔を近づけて目線を合わせる・・。
エイルに顔を近づけて幼いエイルの目線を合わせる優しい声でゆっくりと話かける
「アーシュ殿は・・ここにいれば命が危ない・・・。
城を出れば・・
おそらく生き残りの・・いや、同じ黒の国の人間達が彼を迎えに来てるはず」
「城を出るまで 一緒にいて見送ってあげて きっと、また会えるさ・・。
一緒にいれば、白の国の姫君である・・そなたには 手がだせない」
「後から・・大人達に叱られるかも知れないが彼の命がかかってる。」うなずくエイル
何か言いたげなアーシュ
「たまには・・甘えてみるのも・・楽しいぞおお! 可愛い可愛い恋人だな!アーシュ殿!」
思い切り!にやーんと笑うレグルス
「ばっ・・」真っ赤になるアーシュ
もごもご口をパクパクさせる
「さあ!急げよ二人とも!」走りだす二人
エイルさんはアーシュさんの手をぎゅう!って握りましたワン!
一瞬! アーシュさん 目を見開き 戸惑いの表情を見せたが・・・
少しだけ表情をほころばせて・・その手を握り返したワン!
「ワン子も行くワンワン♪」
「 お前は駄目!」
「 へっ!」にやああああーんと笑う♪レグルス・・。
「私の罪をかぶってもらう♪からな♪」
「へ!」
くるーんと目線をネコの手で倒されたケンタウロスの戦士に向ける
「あやつを・・見張りの兵士を倒したのは・・
お前だろう♪ワン子ちゃん♪」
「ひ!ひどい!!倒せて言ったの 貴方でしょう!レグルスさんワンワン!
そ・・それにきっと!ちゃんとあのケンタウロスの戦士さんだって、証言しますワンワン!」
「それは・・どうだかな?だって私はケンタウロスの三の長。♪♪
命が惜しければ あの者は本当の事は言わないさ♪」
「ひ・ひ・ひ・ひどーーーい!ワンワン!」
かくして・・ワン子は ケンタウロスの女戦士のレグルスさんに連行されてしまいましたワン
そして、レグルスさんの言葉通り・・
かばうエイルさんの為にアーシュさんに白の国の兵士は手を出す事が出来ず・・
城の門で アーシュは なんとエイルさんにそっと口づけをして・・
そして、それから短い魔法の呪文を唱えてエイルさんを眠らせて一人旅立っていった・・。
城や街中が大騒ぎになっている・・。
アーシュが 翼を使って逃げてゆく
追いかけてきた者たちの弓矢や槍の攻撃で 一旦、地上に降りたち
街中を 国境がある山に向かい 走り去ってゆき
それを 木の上から見ている フードをかぶった少年が一人・・。




