うたた寝をしたせいだ。
彼の好きなあの子はとても可愛い子。
笑顔が可愛らしくて、八重歯が特徴。ちょっとふくよかな体をしてて少しだけ子供っぽい。でも実はすごく不安定で寂しがりやで弱い子。
平和主義でみんな仲良くしたくて、人の悪いとこよりいいとこを探す子。とても良い子、とても、とても。
私とは正反対の良い子で、だからこそ、私はその子が好きで嫌いだった。
「それでも、わたしは××ちゃんのこと嫌いになりたくないよ。××ちゃんは大事な友達だから」最後の日私にそう言ってきたときには思いっきり平手打ちをしたくなったの。
「いい子にするのもいい加減にして。そういうの嫌いだって言ったよね」
そう強く言ってもそうだったね、って少し困ったように言うからそれにすら苛立ちを覚えてしまった。
あの子は彼が好きだった。彼もあの子が好きだった。それでも、付き合うという事には至っていなかったから、私は、面白いおもちゃを見つけたと思って引っ掻き回したんだ。
『良い行いをすれば、良いことが自分にも返ってくる。悪い行いをすれば、それが自分に大きくなって返ってくるんだよ』
昔、めんどくさい朝会で校長先生がそんなことを言っていた。
そんなことわかってた。私はいつか、きっと、大きな罰を受けると。
それでも、まさか、こんなことになるなんて思ってもいなかったの。なんて可哀想な被害者の証言をするほど弱い女じゃない私だからね?分かってたことだったよ、って泣くだけにした。
私は愚かな人間だと思う。
自分でもそう思う位、愚かな人なのだ。
もしもこの話をこれ以上書くのなら私はもっと細かい“本当”を書かないといけない。
書いてもいいのだろうか、と今更私は迷っている。だから今回の原稿はきっとボツになってしまうのだろう。
次捲るページを書く勇気は私にはある。
あるのだけれど、手が動かずこうやって迷いを書いてしまうのだ。
あぁ、なんという紙の無駄遣いだろう。