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9.矛盾

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 会社側が提出した書面の中に、入社後3ヶ月の9月下旬時点での考課表があり、その中に「7月入社以来、技術的には水準高く仕事をこなしている」という記述があった。少なくともこの時点では一定の評価があったわけであり、これは会社側の主張する入社以来の勤務評価の低さへの重要な反証になるだろう。


 あとは3月のユーザークレームの件だ。前に書いた通り、このユーザークレームの際、自分たち技術チームは始末書を書かされていた。渋々書いたものだったので、自分でもどんな文面だったか覚えていなかったのだが、会社側は自分の書いた始末書を証拠資料として出してきていたので、改めて目を通してみると、


 「3月20日の不具合の件につき、技術チーム内でのチェック体制の不備があったことについて、その責の一部があることを認めます」


 と書いてあった。これだ!と思った。これはどう見ても自分がミスをしたことについて認めて謝罪している文面ではない。チーム全体の責任の一部についてしか認めていないのだ。これを会社側が受け取ったということは、会社側もこの時には、不具合の原因が自分のミスによるものではないと認識していたことになる。我ながらこの責任回避能力は大したものだ。


 また、審尋の間、既に会社を辞めた人たちと何度か連絡を取っていた。本当の自分の仕事振りがどうであったかを陳述してもらえれば、と思ったからだ。しかし、みんな会社にいる時にはいろいろ苦労していたので、自分の行動については理解してもらえたが、やはり再びあの会社とかかわるのはちょっと…という感じだった。それは無理もないだろうと思っていたので、しつこく頼むつもりはなかった。それでも、みんなからは、応援しているから頑張って、と言ってもらえたので、成果はなくても連絡を取ってよかった、と思った。


 そんな中、一人だけ陳述者を書いてもいいと言ってくれた人がいたので、その人に自分のやった作業や勤務態度等に問題なかったことを書いてもらった。しかしその後、その人からやっぱり匿名にしてほしいと連絡があった。弁護士さんからは、匿名だと証拠能力が低いから提出するのはどうかと言われたが、せっかく書いてもらったので何とか生かしたいと思い、匿名のまま一部を自分の陳述書の中に引用することにした。


 その他にも、様々な会社側の非難、中傷、揚げ足取りに対して、できる限り反論していった。気がつけば原稿用紙数十枚にも上る程の量だった。


 そうした苦労を重ねて出来上がった3通目の陳述書は、これまでで最も長文となったが、これが最後の書面提出となるだろうという思いで、頑張って書いたつもりだった。陳述書の最後には、裁判官、会社側の経営陣、そして社内の人たちみんなに向けて自分の正直な気持ちを綴った。たぶん、この陳述書が今までの人生で一番真剣に書いた作文だろう。この陳述書を7月28日に裁判所へ提出した。


 できるだけのことはやった。あとは裁判所の決定を待つだけだ。いい結果が出ることを信じて…。

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