7.第ニ回審尋
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第二回審尋の少し前に、再び会社側からの反論が届いた。前回にも増して罵詈雑言の嵐だ。この前の審尋では和解を示唆していたが、やはり徹底抗戦の方針となったようだ。
向こうの主張の趣旨としては、自分との労働契約は最初から6ヶ月単位の契約社員だったということ、自分の勤務評価が相当に悪かったので4月末日で契約を終了した、ということであった。
契約社員かどうかという点については、会社側の主張は明らかに不合理であった。まず、労働契約時に書面での提示が一切なく、この点だけでも法令違反であるが、それには一切言及せず、同時期に入社した他の社員に契約社員として入社したという陳述書を書かせ、それを援用することで契約社員としての有期契約を正当化しようとしていた。
また、会社側が主張する6ヶ月単位での契約であれば、入社したのが2002年7月1日なのだから、2002年12月中には契約更新の話があるべきだし、12月末に契約が更新されているならば、次の更新時期は2003年6月末であり、4月末日で契約を終了したという主張とは矛盾する。これだけでもかなり無理のある主張であるが、この後、さらにとんでもない話が待ち構えていた。
前に書いた通り、在職時には社会保険に加入させてもらえなかったのだが、会社側はこれを契約社員だから社会保険に加入させていなかったとして、有期契約であることの根拠だとしてきたのだった。言うまでもなくM社は各種社会保険の強制適用事業であり、正社員だろうと契約社員だろうと試用期間であろうと、要件さえ満たしていれば加入させなければならない。こんなことを平気で言ってくるのは、会社側の法知識が欠如していることの表れだと思ったが、向こうの弁護士はそういうのは指摘しないのか疑問だった。
こちらは既に、自分の募集時の条件が正社員だった証拠は提出していたし、他に書面での提示もなく、会社側の主張はどれも整合性に欠くので、労働契約の問題に関しては十分対抗できるだろう。
問題は勤務評価の点で、自分もネットで過去のいろいろな事例を当たっていて、解雇を正当化するために会社側がこの辺を突いてくることは予想していたが、やはり自分が無能だ、怠慢だと悪辣に言われるのは気分のよいものではない。そればかりか、自分が全く関わっていなかった作業についてまで、あたかも自分がミスをしたために起こったかのような書き方がされていた。幸い、作業日報は全て保存していたので、この件について自分の責任がないことは証明できるだろう。このことも含めて今後、徹底的に反論していくしかない。
そして審尋の日。前回、会社側は上役しかいなかったが、今回は何人か社員を連れてきていた。一緒に仕事をしていた仲間と久しぶりに顔を合わせたので、「久しぶり〜、元気にしてた?」などと軽く挨拶したが、向こうの反応は芳しくなかった。
今回は、両者揃ってそれぞれの主張をすることになった。さっき顔を会わせた社員が「他のみんなは夜遅くまで残って仕事をしていたのに、彼はさっさと帰ってました」とか「3月のユーザークレーム対応の時、彼の担当部分でミスがありました」などと言ったので、少し驚いた。こういう時に人の本心が分かってしまうのかなあ、などと妙に達観した気分になったのを憶えている。
こちらは、基本的に反論は書面でするつもりだったので、その場でも対応は弁護士さんに任せていた。裁判官からは、次回を最後にしましょうとのことで、3回目の審尋の日程を決めてその日は終了となった。