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11.エピローグ

最終回なので前書きのネタはありません。ていうかネタ切れです。。

 その後、9月の終わりまでに和解交渉も無事まとまり、この事件は全て解決した。伝え聞いた話によると、会社の方ではかなり大揉めだったらしい。しかし、あの決定が出た以上、本訴になっても会社側に勝ち目はないことは明らかだったので、会社側の弁護士がずいぶん苦労して説得してくれたみたいだ。会社側との条件のために和解内容は明らかにすることができないが、自分としては結果には十分満足していた。


 自分が、この経験を通して自分なりに思ったのは、訴えるのも訴えられるのも、そして裁くのも人間だということだ。裁判では裁判官の心証を得ることが大事だ、というのはよく聞く話ではあるけれど、法の知識も弁論のテクニックもない自分ができることは、とにかく正直に、丁寧に、自分の言葉で陳述するしかない。その思いが裁判官に通じたのであれば、苦労した甲斐もあったというものだ。


 では、自分が書いた3通目の陳述書の最後の部分を引用して、あの夏に起こったあの出来事の話を終わりにしよう。


(2003年7月28日「陳述書その3」より)

 最後に、私がなぜ今回の解雇について争うことを決めたのかをお話しします。現在の社会状況の中では、労働基準法に守られているにもかかわらず、会社から不当な扱いを受け、また不当解雇される労働者は少なくないと想像します。しかし、多くの人たちは立場として弱く、会社との争いにかかる時間や労力や費用、敗訴した時のリスクなどを考えれば、諦めてしまうしかないのが現状でしょう。


 私も解雇を通告された時には、それらのリスクに加え、係争を起こせば社内の人たちにもいろいろと迷惑がかかるかもしれないと思い、諦めて別の仕事を探すという選択肢も考えました。しかし労働基準監督署でこの件を相談した時に、担当の方に「違法な会社に対して争うことは自分のためだけでなく、社内にいる人や今後会社に入ってくる人のためでもあるのですよ」というようなアドバイスを受け、大きく勇気付けられました。我々労働者が不法行為に対して声を上げなければ、その会社だけでなく、あらゆる所で同じように苦しむ人たちが後を絶たないのです。そう考えて、最終的に会社との争いを決断しました。


 実際、社内の人たちには、忙しい中で陳述書を書かせてしまったり、裁判所まで来させてしまったりして申し訳ないという気持ちもあります。また彼らの陳述に対して、中には辛辣な反論をしてしまった部分もありますが、彼らの立場上そう書かざるを得ない所もあると思いますし、こちらも事実と異なる部分には反論せざるを得ないので、どうか気を悪くせず、許してもらえればありがたいと思います。


 また、○○会長、○○社長を始め経営陣の方々は、私のことを「とんでもない輩だ」と思っているかもしれませんが、その前に、なぜ今回このような争いになったのかということを考えていただきたいのです。会社側が答弁書で述べたように、法令遵守に細心の注意を払って経営を行なっていれば、このようなことにはならなかったのではないでしょうか。


 私としては、今回の結論がどのような形になるにせよ、この件を踏まえて会社が改めるべきところは改め、結果として従業員の方々がより働きやすい環境が整うことを強く望みます。それが従業員の士気や生産性の向上につながり、ひいては会社としての利益にも結びつくのではないでしょうか。


 最後になりましたが、裁判所におかれましては、長文であり読みづらい点も多々あるとは思いますが、私の偽らざる心情を陳述いたしましたので、ご精読の上、公正なるご判断の程、よろしくお願いいたします。


(完)

ここまで読んでくれてどうもでした。またどこかで!

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