10.決定
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8月に入ってから、会社側から4回目の反論書面が到着した。書面の提出は7月中だと言われていたはずなのに、と思ったが、こちらが提出する書面は前回で最後のつもりだったし、今更慌てても仕方ないのでほとんど読まなかった。
8月19日、弁護士さんから決定が出たとの連絡をもらい、いつものように自転車で事務所へと向かった。
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平成15年(ヨ)第×××××号 地位保全等仮処分申立事件 決定
主 文
1 債務者は、債権者に対し、金30万円及び平成15年9月から同16年7月までの間、毎月1日限り、金30万円を仮に支払え。
2 債権者のその余の申立てをいずれも却下する。
3 申立費用は債務者の負担とする。
事実及び理由の要旨
(中略)
前記1,2によれば、本件解雇は未だ有効であることが疎明できておらず、逆に、本件解雇は客観的、合理的理由を欠き、社会通念上是認できるとはいい難く、解雇権を濫用しているとの疎明はされているというべきである。
(中略)
結論
以上によれば、債権者の本件申立ては、主文第1項の限度で理由があるので、事案の性質に照らし債権者に担保を立てさせないでこれを認容することとし、その余の申立ては理由がないのでこれを却下することにする。
平成15年8月19日
東京地方裁判所民事第36部
裁 判 官 ○ ○ ○ ○
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「完全勝利だよ」と弁護士さんから声をかけられ、少しとまどいながら「ありがとうございました」と答えた。
仮払いが認められれば地位保全の必要もないというのが一般的であり、また賃金の仮払いは30万円ぐらいまでしか認められないということも聞いていたので、この決定は結果として望み得る最大のものだった。そして結果以上に、決定の論旨の中で全面的にこちらの主張が認められていたことが何よりだった。
後から聞いた話だが、会社側はこの決定を社員には秘密にしていたらしいが、社内で向こうの弁護士からの電話を取った社員(彼は審尋にも来ていた)が話を聞いて、「えっ!全面敗訴ですか!?」と大声で叫んだため、ほとんどの社員は知っていたそうだ。
決定の通知を受け取った帰り、少し自転車で走りたくなったので、帰り道とは逆方向へ向かってペダルを漕いだ。中野区役所の横のけやき通りを走りながら、この半年間のこと、そしてこれからのことを考えていた。社内にいながら連絡をくれた人、会社を辞めた人にも何人か連絡を取ったり相談に乗ってもらった。まずはみんなに結果を報告しないと。
でも、これで終わりではない。この決定を受けて会社側がどう動くか。おそらくは和解交渉になるだろう。この結果で本裁判に持ち込むというのは常識では考えづらいが、向こうが意地になってくることも考えられる。どちらになってもこちらの心構えはできている。
珍しく気分が高揚しているのを感じていた。夏の木洩れ日が心地よかった。




