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 前回、「都市伝説」という言葉が出ましたが、私自身、都市伝説には疎いです。それこそ、口裂け女ぐらいしか知りません。ドッペルゲンガーは、都市伝説なのかな?

 「都市伝説」という設定は、何かと便利なのでしょっちゅう使ってしまいます(笑)。

「あのさ、じろじろ見ないでくれない?」

「見ていない。」

「学校での話だよ。」

 茶髪になった松本は、そこそこ学校で話題になった。校則で髪を染めることは禁止されている。校則を破る勇者は、少なからず注目される。何があった?

「なんで茶髪はだめなのかな。異質なものは、やっぱり排除されていくのかな。ペンギンと私たちは共生できないのかな?」

 質問が多すぎる。しかし、問題はない。今言うことはただ一つだ。

「何があった。」

「なにもないけど、何か?」

 松本の口元が笑っている。その表情は、いつもの松本のものだった。何も変わってないのか?

「君は許せないの、優等生の福山君?」

「ある集団の中で異質なものが排除されるのは、自然の摂理だ。」

 それを聞くと、松本は笑いだした。おもしろいから、というよりも馬鹿にしているような笑い方だった。なんだ?質問に答えたように聞こえなかったか。ぴたりと笑うのをやめた松本が指を突き出す。

「君に言われたくない。一人で生きている、福山君には。」

 まただ。正確には一人で生きている人間などいない、と言おうと思ったがそういう意味ではないことは分かる。代わりに、ずっと頭の片隅で気になっていた疑問が浮かんだ。まずい、抑えろ。そう思ったが、手遅れだった。

「俺とおまえは違うのか?」

「何?」

「友達、じゃないのか?」

 2,3秒、間があったかと思うと松本の口元が緩んだ。

「君はもっと大人になるべきだね。」

 その一言で、俺はすべてを悟った。それでも、松本の言葉は続く。

「話しているから友達ってわけじゃないでしょ。君だってそう思っているんじゃない?生活に支障がないくらいの会話はする。でも君は―」

 そこで一度言葉を切る。息を吸った。

「誰ともなにも共有してない。」

「天使だ。」

 無意識に言葉を発していた。松本が自分の後ろを見る。何をむきになっているんだ、俺は。

「天使を共有している。」

 松本がこっちをみる。その顔は明らかに不機嫌そのものだった。

「そんなもの共有してどうするのさ!」

 そう言うと、鞄に手を突っ込み携帯をとりだした。どうやらメールらしい。先程の不機嫌な顔に明るさが戻る。

「悪いけど、私急ぐね。君とは違って私には、友達、がいるから。」

 携帯に画面を見たまま、松本は走り去った。一人取り残される。

「だから嫌だったんだ。」

 河原に目をやる。少年が一人で、ピッチングの練習をしていた。河原の土手の斜面に横になる。

「最悪だよ、俺。」

 うっすら夕焼け色になった空を見上げる。カラスか何かが空を飛んでいる。もう変われない。そう思うのは何度目だろうか。ゆっくり目を閉じる。


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