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都市伝説と悪夢

 天使とか悪魔とか、そういった言葉を使うのがどうも恥ずかしい。神話のような、なにか高尚な話やファンタジーのような空想の世界で出てくるならまだしも、日常を舞台にした物語に出てくるのは、少し場違いというか、なんというか……。


 それでも、当時の私は天使を登場させたかったのです。それには、いろいろ事情があるのですが、まだ言えません。

 

 それでは、続きをどうぞ!

 天使―神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの―

 だからなんだ。家に帰り、辞書を見た俺は落胆する。羽が生えている、という定義はないんだな。それだけが収穫だった。松本が一体何を考えているかは不明だ。

「そういえば―」

 俺は、パソコンの電源を入れネットに接続する。ずいぶん昔に同じような気になる話を聞いたことがある気がしたからだ。検索ワードのところに言葉を打ち込む。

―……堕……天使……都市……伝説―

 昔の話だからか、なかなか手こずったが、それらしいページを見つけた。そこに書いてある文章を見てみる。


 堕天使

 もともと天国にいるはずの天使が、人間の世界をさまよっていることがある。そのような天使を天国 から堕ちた天使、すなわち堕天使と呼ぶ。堕天使は自分の住む世界を探し、世界を飛び回っている。 堕天使のいる世界では奇跡が起きるとも言われているが、あの世に導かれるともいわれる……


 有益な情報ではないな。すぐさまシャットダウンする。こんなものは、現実世界から逃避した人が作り出した産物に過ぎない。いや、そもそも天使自体そうかもしれない。松本は堕天使を待っているのかとも思ったのだが、そんなものは存在しないし、あいつは現実逃避する奴でもない。

「これ以上考えても無駄か。」

 俺は、ベッドに横になる。外の暗闇とは対照的に明るい天井をぼんやりと見る。こんなくだらないことに、ここまで頑張ったのは久しぶりだった。

―もうやめるか。



 ―最悪だよ、福山―

 目を覚ました時、唯一覚えていた台詞だった。全て思い出すにはそれだけで十分だった。

 小学校の頃、大抵の奴には友達がいるし、誰かをからかい、誰かにからかわれる。俺もそうだった。よくからかわれたし、からかってばかりだったし、友達もいた。それが、ある日を境にしてつらくなった。

 小学校の五年の頃だっただろうか、野外活動というものがあった。性にも合わず、班長に立候補した。そういう面倒くさいことはしたくない人が大半だったので、簡単に班長になった。

 そして、俺は裏切った。ある日、俺は呼び出され、単独行動した班員について追及された。班で行動しなければならないのに、単独行動を許したのは班長の責任だ。しかし、俺は信じられないことを口走った。

―僕は止めたんです―

 もちろん嘘だ。みんなが休憩しているなか、単独行動を強く申し出た班員を止めるのが面倒だったから、許した。それだけだ。

 なぜそんなことを口走ったのか。簡単なことだ。当時の俺は叱られることに慣れていなかった。プレッシャーに耐えられず、思わず、責任転嫁しようとした。結局、班員全員呼び出され、注意された。そのとき帰り際に友達に言われたセリフが、最悪、だ。

 叱られたこと自体は、問題なかった。むしろ、教育熱心なその先生のことは今でも尊敬しているし、叱ってくれたことにも感謝しているくらいだ。班員に恨まれたことも当時はつらかったかもしれないが、よくあることだ。

 ただ、その言葉を反芻し、生活していくうちに気がついた。俺は、無意識のうちに、そして必ず友達を裏切っている。そして、そのことが無性に許せなくなった。


 そんなこともあったな。そう思いながら、学校に向かう。前を茶色い髪をした女子生徒が歩いている。その女子生徒が、急に止まり、横を向いた。

 なんだ、松本か。松本は俺に気が付き、顔をこちらに向ける。

「というか」

 素朴な疑問があった。

「昨日までその髪、黒くなかったか?」


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