第二章 回想
また回想ですか?
魔理沙が飛び立ってからしばらくした後、アリスは自室で人形作りを始めた。しかし表情は暗く、どこか遠くを見ている様で、全く集中できていなかった。
彼女は、魔理沙の頼み事がフランの為の内容だった事に、ショックを覚えた。魔理沙以外の為に時間を割いて苦労をせねばならない事が、嫌で仕方がなかったが、彼女の頼みなのでやらないわけにはいかないというジレンマに陥っていた。
率直に言えば嫉妬しているのだ。魔理沙に想われているフランの事を。
「ハァ…」
思わず、ため息がでた。
「考え過ぎかもしれないわね…」
魔理沙はただ単に、友人へのプレゼントの作成をアリスに依頼しただけに過ぎない。別に特別な意味もないはずだ。
アリスはそう思い込む事にし、黙々と作業を続けた。しかし、だからといって彼女の悩みの種が尽きるわけではないのだ。
「痛っ…!」
縫っている最中に、左手の人差し指を針で刺してしまった。いつもならあり得ないミスである。
「えっと…、絆創膏は…」
慌てて絆創膏を取り出し、傷口に貼り付けた。
「もう…、寝よう…」
急にやる気が失せてしまったので、アリスはふて寝する事にした。気付けば辺りはすでに暗くなっており、寝室のベッドに倒れこむと同時に、強烈な眠気が襲ってきた。
「そういえば、明日は人里で公演があったわね…」
まどろむ意識の中で、明日の予定を思い出したが、寝坊しないようにしよう、とだけ意識して、そのまま眠りに就いた。