第一章 人形遣いと白黒
おひさしぶりです。
いやー、日常パートってきついわー。
妖怪ですら足を踏み入れる事が少ない魔法の森、そこに建っている小さな洋館。
「おお、このクッキー美味いな」
「褒めたって何も出ないわよ」
「ちぇっ」
この館に住んでいる人形遣いのアリス・マーガトロイドは、友人である霧雨魔理沙と、庭でお茶会を楽しんでいた。
「なぁ、紅茶もう一杯淹れてくれないか?」
「たまには自分でやりなさいよ」
「アリスが淹れたのが好きなんだよ」
「な…、し、仕方ないわね、特別よ」
二人はいつも通りに談笑していたが、魔理沙の他愛のない一言にアリスは赤面し、それを悟られないように、そそくさと館のキッチンに向かった。
「ま、まったく…、よくあんな事平然と言えるわね!」
お湯を沸かしながら、アリスは独り言を呟いた。
魔理沙が面と向かって「好き」と言った事に――紅茶が、だが――アリスは悶々としている。
アリス・マーガトロイドは霧雨魔理沙に対して好意を抱いている。表面上は冷たく接しつつも、本心では、常に一緒に居たいと思っているのだ。
「わ、私に向かって「好き」だなんて…、あーもう!!バカバカバカバカ!!」
もう一度云うが、飽くまで「紅茶が」である。
「本当に…、っ!おっととと」
お湯が沸いたところで、アリスは我に返った。
「はい、どうぞ」
「お、サンキュー」
魔理沙は読んでいた本を閉じ、アリスが持ってきた紅茶を飲み始めた。
「これ、何の本?」
何を読んでいたのか気になり、アリスは本を手に取って読んで見ようとした。
「だ、駄目だ!!」
しかし、魔理沙に目にも留まらぬ速さでひったくられてしまった。こんなにも慌てた彼女を見たのは、アリスにとっては初めてだった。そんな反応を返されると、余計に気になってしまうものである。
「ねぇ、一体何なのよ?」
「そそそそんな事より、そういえば今日は頼み事があって来たんだ!」
「頼み事?」
無理矢理話題を変えられてしまった。アリスは、何故、魔理沙が頑なに本を見せたくないのか非常に気がかりだったが、今はその「頼み事」の方が彼女にとっては重要だ。
「…あんまり面倒な事を言われると困るのだけど?(何!?何!?何でもするよ!!)」
いつもと同じく、冷たく接しているが、本心はやはり、何でもやるつもりでいる。
「おお!!聞いてくれるか!!」
「…で、何?(あああ!!笑ってる魔理沙可愛いいい)」
「今度フランの誕生日…、ああ、吸血鬼にそんなのがあるかわからないから、私が勝手に決めたんだが、そのプレゼントに、あいつと私の人形を作ってほしいんだ」
「フランの為に…?」
「そうだ」
「…いいけど」
「そうか!!よろしく頼むぜ!!おっと、そういえばちょっとした用事があったんだ。じゃあな、アリス」
「あ…」
用件を言い終わるとほぼ同時に、魔理沙は箒に乗って飛び立ち、その後ろ姿を、アリスはひどく落胆した様子でしばらく眺めていた…。
アリスのセリフを書くのがいろんな意味できつかったです。