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VOICE ~唄声~  作者: 溝川 里澄
1章~始まりの唄~
3/5

始まりの音

「で、その人探しとやらの話を聞かせてもらうか、ジェス・シェイディ」



「フルネームで呼ぶな、キユウ・クラウディ。ジェスで構わない。では、本題に入らせてもらう」



 ジェスが言うと、ほかの2人も真剣な面持ちになった



「俺たちは6大貴神(ろくだいきしん)と呼ばれる者を探している。その6大貴神にはそれぞれの属性がある。火・水・風・光・闇・音の6つ。俺たちはそれぞれを「貴神」と呼んでいる。そして、その中で最強を誇り最も重要で、6つの神を(まと)め上げる「音」を司る神、「音貴神(おんきしん)」がいる。その音貴神がお前だ、キユウ・クラウディ」



 正直なところ、俺はもっと単純で面倒な人探しだと思っていた。だが、どうやら状況が違うらしい。もっと複雑で面倒で根気の要る人探しだった



「……だいたいは理解できた。だが、ひとつ聞いていいか?ジェス」



「あぁ、構わない」



「その6大貴神は何時の時代に、何故生まれた」



 すると、今まで黙って話を聞いていたウォレスが口を開いた



「そのことに関しては俺から説明するね。まずは時代から話そっか。100年位前に(さかのぼ)るんだけど。そのころ世界は暗黒魔法帝国(ブラック・スペル)によって支配されてて、そのせいで世界は闇に包まれてた。俗に言う「暗黒時代」だね。そして、そのブラック・スペルの暴走を止めるべく誕生したのがさっき話した6大貴神。6つの属性を持つ6大貴神はそれぞれの力を振り絞りブラックスペルの暴走を止めようとしたんだよ。これを世間一般では「魔法大戦争(マジシャンズ・デュエロ)」って呼んでる。この戦争は約90年続いた。知ってるよね??あ、ブラック・スペルの連中も6大貴神の連中も、不老だったってことを頭の片隅に置いといてね。そして10年前、世界中を闇に包んだブラック・スペルは滅んで、それと同時にマジシャンズ・デュエロも幕を閉じたんだけど、6大貴神へのブラック・スペルを滅ぼした代償は大きかったの。その6人は世界中に散り散りになっちゃったんだよね。すべての6大貴神たちには、男女問わず1人だけ子供がいたんだ。6大貴神の力を受け継ぐ子供だね。でも、親と一緒に子供たちも散り散りになっちゃったの。中には戦争中に親を無くした子供もいるわけ。俺が教えるのはここまで。それ以降の説明はジンに任せるよ」



 10年前。それは、俺の悪夢のような日と丁度重なる



「あぁ、わかってる。今ウォレスが話してくれたように、10年前にブラック・スペルは滅びた。だが最近になってまた復活したらしい……。ブラック・スペルが暴走し始めるとまたあの暗黒時代に突入する恐れがある。故にブラック・スペルの暴走を食い止める必要がある。そのためには、また6大貴神の力を借りなくてはならない。それと、その6大貴神の重要な存在、音貴神は女だった。そしてその子供も女。だが、残念なことに音貴神は10年前のマジシャンズ・デュエロの際に、音貴神の夫と言われる男と共に命を落としている。まだ4つだった幼い娘を残して……な」



「その音貴神の娘が俺だと……言いたいのか??」



「そうだ。(こく)な話だがキユウ・クラウディ、お前はすべてを纏め上げる音貴神の血を引いているんだ」



 俺の母さんがマジシャンズ・デュエロに出ていた6大貴神の一人……。信じたくない現実を突きつけられて、俺は押し黙ってしまった



「なぁ、キユウ・クラウディ」



 長い沈黙を破ったのはレインだった



「俺等の貴神探しに付き合う言うんやのうて、お前の母さんの意思を継ぐって言う理由でええから、一緒に来ること、考えてくれへん??」



《母さんの意思を……継ぐ??》



 レインが何を言いたいのか、その場で理解することは難しかった。だが、俺の中にある何かが、貴神を見つけ出し、ブラック・スペルが暴走する前に食い止めなくてはならない。そのためにはこいつらと共に行く必要があると言っている気がした



「……わかった。俺には、母さんの意思を継ぐとか言うキレイゴトが言えた立場ではないが、お前たちに付いて行く」



「感謝する、キユウ・クラウディ」



「キユウ……」



「え?」



 ジェスの拍子抜けした声が聞こえて、俺はそっと微笑んだ



「ジェス、俺の名はキユウだ」



 俺の一言にレインとウォレスは目を丸くしていたが、ジェスは違った



「笑えるじゃないか」



「え……あぁ」



 そう言って俺は、またそっと微笑む。久しぶりに笑った。笑い方なんて、ずっと忘れていた



「改めて、よろしく頼むキユウ」



 差し出された手をそっと握り締めて、俺はたった今、新しい世界に進もうとしている。この先、何があるかは分からない。でも、それでも今は、彼等に付いて行こうと思える

握った手の温もりから、始まりを知らせる音が聞こえた

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