表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まるハート  作者: nimb02
1/1

石川丸


石川丸


そして、すべてはこうして始まった。学校で一番優しい女の子が、僕に目をつけ、僕の人生を目

まぐるしい出来事の渦へと変えてしまったのだ。僕はただのゲームとスイーツ中毒で、のんびり

とした生活を送っていたいだけなんだ!それ以上でもそれ以下でもない。

さて、最初から話そう。私の平穏な生活を、この教室で一番賑やかな生活に変えてしまった、優

しい少女・戸坂結衣がどんな子なのかを紹介しよう。なぜ? それはすぐにわかるはずだ。

それはごく普通の日のことだった。廊下を歩いていると、いつものように誰に対しても優しく、

明るく、親しみやすい彼女がいた。 ある人には何かを渡したり、別の人とは話したり、彼女がそ

れをこなす様子は本当に素晴らしかった。私はいつも遠くから、目立たないように見守ってい

た。私は決してそんな注目を浴びたくはなかったが、彼女は違った。まるでスポットライトが彼

女を追いかけているようだった。すぐに誰かが彼女に近づき、何かを頼むのも時間の問題だっ

た。彼女にできないことなんてあるのだろうか?

ユイ、いや、戸坂ユイは常に呼ばれていて、先生たちでさえ彼女に頼っていた。言うまでもな

く、彼女は学級委員長だ。そして、まさにその瞬間、私の人生は変わり始めた。私は自分の席

で、目立たないように、スマホで静かに漫画を読んでいた。すると突然……誰かが前の席に座っ

た。 その席の持ち主ではなかった。彼女、遠坂ユイだった。しかも横向きに座ったせいで、彼女

がそこにいることに気づかないわけにはいかなかった。

「私もこの漫画、好きだよ、マル」

私は黙り込んでしまった。なぜ彼女が私に話しかけてくるんだ?彼女はそんなことしたことがな

い。いつ私のスマホで何を読んでいるか見たんだ?ああ、私が物語に没頭している間に、彼女は

他にも何か話していたようだ。

「ねえ、誰かいる?」

その時、彼女は私をじっと見つめていて、私はただ一言しか答えられなかった。

「……うん」

すると彼女は、笑顔で楽しそうに、小さな手を私の手の上に重ねて、私だけに聞こえるよ

うに小声で言った。「この物語のヒロイン、私の一番のお気に入りなの!石川さん、あなたのお気

に入りのキャラクターは誰?

返事ができるまで、数秒以上かかってしまった。私は彼女の手が私の手の上にあるのを見つめ、

スマホを見て、また彼女の方へ視線を戻した。まるで一秒も経っていないかのように、彼女は私

の返事を待ち続けていた。

「……ヒロインです」

「やっぱり!」

彼女は、たった今質問したばかりの人にしては素早く答えた。どうして分かったんだろう?彼女

は間髪入れずに話し続けた。

「彼女、すごくいいよね。強がってるふりをしてるけど、実はいつもみんなのことを気にかけて

るんだ。それってすごく素敵じゃない?

「……うん。」

私は何を言えばいいのかよくわからなかった。いや、わかっていたのかもしれないが、言葉が出

なかった。彼女の持つ自然体さと、放つエネルギーがあまりにも強烈だった。他の人はどう思う

だろう? でも待てよ、何か違うものもある。たとえ私がもっと長く黙っていても、不快な気持ち

にはならない。

- いつもここで本を読んでいるの?

- …うん。

- じゃあ、私ももっと頻繁に来ようかな。

それが冗談なのか、それとも約束なのか、私にはわからなかった。でも、その言葉のおかげで、

どれくらいの間だったかはわからないけど、しばらくの間、彼女の顔ばかりを見つめてしまっ

た。またしても、あれは冗談だったのかと自問した。約束だなんてあり得ないと思った。普段は

いつも黙って、静かに、一人でいる。なぜ、一度も話したことのない人が、そんなことをするん

だろう?

- …わかった。

私は同意した。なぜかは分からない。冗談か約束か分からないまま、長い間黙り込んでいた。自

分が何をしているのか分からなかったけれど、その状況に居心地の良さを感じたから、何かを承

諾してしまったのだ。スマホを見た。画面上では、誰かがヒロインに同意していた。なんという

皮肉だろう。

再び前を見やると、案の定、彼女はまだそこにいた。微笑みながら、私の手から自分の手を離し

ていた。

「また後でね、もうすぐチャイムが鳴るから」

「……うん」

これほど多くの視線が自分に向けられていると感じたことはなく、とても居心地が悪かった。 な

ぜかスポットライトが私に向けられた。何が起きたのか理解するのに時間はかからなかった。教

室の中で彼女が私の手に触れたことを思い出したのだ。当然、彼女と一緒にいた誰かがそれを見

ていたのだろう。その時、誰かが私の名前を呼ぶのが聞こえた。ゆっくりと、一音節ずつ、その

一つひとつに激しい怒りを込めて。彼は間違いなく鼻の穴から炎を噴き出していたに違いない。

「イ・シ・カ・ワ!」

誰なのか見極める間もなく、ユイは立ち上がり、自分の席に向かって歩き始めた。再び、私の名

前が音節ごとに引き裂かれるように呼ばれたが、今度はもっと大きな声だった。

「イ・シ・カ・ワ!」

その時、ようやく私は振り返った。山崎だった。彼は私を激しい怒りの眼差しで見つめていた。

私は動かなかったし、何も言わなかった。ただ彼を見つめるだけだった。すると彼は振り返り、

自分の席に戻ろうとしていた戸坂ユイの背中を見つめ、私に向けたものとはまた違う怒りを込め

て、その場を立ち去っていった。

チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。その瞬間、私の平穏な生活は終わり、想像もしてい

なかった人生が始まった。

授業はぼやけた記憶のように過ぎ去った。先生の言葉は単調な耳鳴りへと変わり、頭の中で鳴り

響く執拗な鼓動のBGM となった。

「イ・シ・カ・ワ!」

山崎の視線が、私のまぶたの裏に焼き付いていた。それは炎だった。それは苦痛の予感だった。

そして、戸坂結……彼女は窓際の席に座り、何事もなかったかのように振る舞った。私の机に寄り

添い、私の手を握っていたあの瞬間が、まるで何気ない火曜日の日常の一コマだったかのよう

に。彼女は教科書を取り出し、何かをメモし、髪に差し込む日差しが金色の光輪を浮かび上がら

せていた。 私の秩序を破壊するという秘密の使命を帯びた聖女。

チャイムが鳴り、昼食の時間だと告げた。私の筋肉が硬直した。その時が来た。図書館に隠れる

か、廊下で立ち向かうか。図書館なら安全だった。

私から見れば、図書館は安全な場所だった。そこは静かで、山崎が好む雰囲気とは正反対だ。彼

は以前、何度か追い出されたことがあるので、また騒ぎを起こさないよう、常に誰かが目を光ら

せている。

私は本をまとめ、帰る準備をした。一番乗りで席を立った。目立たないように出て、廊下で人混

みに紛れるつもりだった。歩きながら、軽く手を握られた。トサカ・ユイだった。彼女は微笑

み、またしても私だけに聞こえるような声で話しかけてきた。

「じゃあね、石川。また後で。」

「うん」

今回は、普段より早く返事が出てしまった。どうしたんだ?たとえ短い返事だとしても、普段は

こんな風に振る舞わないのに。

私が反応する間もなく、彼女は手を離した。私はただ首を振り、そのまま歩き続けた。廊下は普

段より空いていた。たぶん、みんなまだ荷物をまとめていたのだろう。私にとっては好都合だっ

た。

なんとか図書館に着いた。適当に漫画を1 冊手に取り、できるだけ奥の隅の席に座った。漫画を

開いたが、ページの内容が頭に入らない。あの瞬間が頭の中で繰り返されていた。同じ日に2 回

も、ユイが私の手に触れたこと。それはどういう意味だったのか?なぜ彼女はそんなことをした

のか?そして山崎のあの視線……それは明らかな脅しだった。

「集中しろ、マル、集中しろ」

私は深呼吸を何度かしながら、そう自分に言い聞かせた。これだけのことが起きたのに、まだ一

日の半分しか過ぎていない。残りの半分は、首筋に直接的な脅威が迫り、数メートル先には聖女

がいる状態で過ごすことになる。シミュレーターゲームを十分にプレイしてきた私は、この時点

で選択を誤るとどうなるか、よく分かっている。

「みんな見た?マルがユイに助けを求めてるみたいだ」

「あいつ、彼女に何を求めてるんだ? 食事に誘うのか、それとも一緒に漫画を読むつもり

か?」

声は本棚の向こう側から聞こえてきた。私が見えるはずはなく、誰なのかも分からなかった。声

も聞き覚えがなかったので、騒ぎ立てないことにした。また漫画を読み始め、その漫画に集中し

ようとした。 笑い声が聞こえ、私はまたスマホを見つめた。学校で一番安全だと思われていた場

所も、実はそれほど安全ではなかったのかもしれない。いや、安全だったとしても、それは肉体

的な痛みから逃れるためだけだったのかもしれない。いつから私はそんなことを考え始めたんだ

ろう?立ち上がって、自分を守ったほうがいいのだろうか?

「ヤマザキ?」

「しっ!図書館で騒いじゃダメだよ」

またしてもその声は聞き覚えがなかったが、漫画への集中が途切れ、背筋が凍った。彼がここに

いる?ありえない。なぜ彼がここに来るんだ?緊張のあまり、拳を握りしめ、数秒間スマホを凝

視した。

彼の声も、見知らぬ声も聞こえなかった。本当に彼がいないか確かめに行きたかったが、私の生

存本能は私をとても大切に思っていて、その場にじっと留まるよう命じた。

正しい行動とは言えないし、そんなことはしてはいけないと分かっていたが、結局、いつもポケ

ットに入れておくシリアルバーをいくつか食べてしまった。誰かに見られたら、当然叱られるだ

ろう。それが食べる唯一の方法だった。

昼食終了のベルが鳴った。僕は真っ先に立ち上がってその場を離れた。本棚のそばを通らなけれ

ばならなかったが、運悪く、彼はそこにいた。彼は僕に気づかなかった。あの聞き覚えのない声

の少年たちと話していたのだ。ベルの音が僕の退出の音を覆い隠してくれたので、僕は急いで教

室に戻った。

急いでみても無駄だった。途中でユイを見つけたからだ。彼女は中庭の向こう側にいたが、まる

で二人の間に誰もいないかのように視線が合い、彼女はとても嬉しそうに私に手を振った。

「おっ、石川くん!」

その魔法のような瞬間は、背後から聞こえてきた威圧的な声によって台無しにされた。振り返ら

なくても、それが彼だと分かった。あの脅しと怒りを含んだ口調は、紛れもないものだった。脅

威がすぐそばにあるにもかかわらず、私は我慢できず、ユイに手を振った。彼女のように嬉しそ

うに、自然にはできなかった。私にとって、そんな振る舞いはまだ無理だったのだ。 それは控え

めな手振りだったが、彼女に応えるには十分だった。

肩に手が置かれるのを感じた。その場の空気を一変させたのは、山崎だった。彼がそこにいると

気づいた瞬間、世界が灰色に染まったように感じた。あの瞬間が、あんなに早く終わってほしく

なかった。 ユイが私に手を振った時、道が開けたように感じ、山崎が私の肩に触れた時、その道

が閉ざされたように感じた。すべてが元通りになってしまい、あの輝きは消え、通り過ぎる人々

がユイの姿を覆い隠してしまったので、本当に悲しくなった。私はただ首を回して山崎を見た。

「もうチャイムが鳴ったよ」

一歩、また一歩と、歩き続けた。もう何の物音も聞こえなかった。いや、聞こえていたのは、自

分の心臓の激しい鼓動だけだった。こんなこと、今まで一度もしたことがないと思う。ユイの姿

が見えなくなったことにがっかりし、衝動的に行動してしまった。後で後悔するかもしれないけ

れど、今はそんなことを考えている場合じゃない。 教室に着くまで、山崎の存在を感じなかっ

た。ある意味、それが腹立たしかった。なぜあの日とはこんなに違う行動をとっているのか、自

分でも理解できなかった。山崎もこれまで一度も私の邪魔をしたことはなかった。学校でも、生

活でも、何においても、彼はいつも私の存在を無視していた。彼がイジメっ子で、多くの人が彼

を恐れているということだけは分かっている。 あらゆる疑問や苛立ちは教室の中に持ち込まれ、

授業も、人々も、あらゆる物音も、単調なブーンという音に過ぎず、時計の針は動いていないか

のようだった。30 分の間に何度時計を見たか、もう覚えていない。そして午後中ずっと、単調な

ブーンという音、視線による威嚇、そして彼女が数メートル先にいるという状況が続いた。

「イシカ」

山崎とユイが同時に私を呼んだ。私は彼女の方を見て、彼の方を見るのを避けた。彼からは脅

し、あるいは何らかの暴力的な行為が飛んでくるだろうと分かっていた。それはあくまで私が彼

に期待していることだが。たいていの場合、私の予想は的中するし、今日の出来事を見ても、今

回だって例外ではないだろう。

「……うん」

私は彼女を見つめ、彼の怒りに満ちた視線をできるだけ避けようとした。でも、もし彼の目にレ

ーザーが出ていたら、その瞬間に私は死んでいただろうと感じた。彼もそれ以上何も言わず、い

つものように一歩も前に出たり、怒鳴り散らしたりもしなかった。彼に何かがおかしい。あの場

に何かがおかしい。

- 後で会おう、いい?

-…うん。

彼女は微笑んで、急いでドアへと向かった。私が知らなかったもう一つの細かな点だが、彼女は

山崎の方を見なかった。怒りで見なかったし、嫌悪感で見たわけでもなかった。ただ、見なかっ

たのだ。まるで彼が存在しないかのように。 いつものように、私が最後に部屋を出た。わざとそ

うしたわけではないが、単調なざわめきが止んで、そのとき初めて皆が出て行ったことに気づい

た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ