表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

木枯らし小柄なハルとの舞踏会

作者: 渡辺つかさ

 僕が彼女を窓外(そうがい)から見るとき、彼女もまた僕を視ている。


 そんなの僕の勘違いかも知れない。彼女から視える僕は幻にすぎないのだから。それでも期待してしまう。もしかすると彼女には僕が見えているのではないのかと……。


 彼女は一日の大半を同じ部屋で過ごしていた。窓からの景色を恨めしそうに見ては嘆息する、そんな生活を送っていた。


「早く来てくれないかしら」

 それが彼女の口癖。


 望むなら僕が喜んで行ってあげるよ。僕は彼女の目の前の落ち葉に魔法をかけた。これは僕ができる唯一の特技だ。


「えーい!」


 その刹那、落ち葉は舞い上がった。彼女は舞い上がった落ち葉を見て「()(ぎわ)()()()のようで素敵」と、目を輝かせて叫ぶぐらいには、はしゃいでいた。僕はそんな彼女を見るのが好きだった。だから、僕は舞踏会を続けた。きっと、彼女も喜ぶはず。だが、僕の頑張りとは裏腹に彼女の笑顔は徐々に曇って行き、次第に舞踏会から目を逸らすことが増えてきた。


「どうしてなの?僕のこと嫌いになったの……そんなー、僕は君のために……」


 それでも僕は彼女の笑顔を諦めることができなかった。カーテンで遮られた部屋の外で今日もいつもの舞踏会。僕はより頑張った。


 暫くすると僕は体調を崩した。今の僕では落ち葉どころか、ありんこ一匹でさえ飛ばすことは敵わない。こんな僕を見れば彼女はきっと幻滅するはず。だから、決してこの姿を見られることだけは避けねば。イヤだ、イヤだ。


 秋の終わり彼女は突然現れた。会いたかったけど、会いたくない。そんな彼女に僕は謝罪した。

「ごめんね。僕はもう君に舞踏会を見せられないんだ」


 彼女は無言で僕の頬を撫でてくれた。「やっぱり、君は……」僕が喋ろうとしたとき、彼女は人差し指の先を僕の唇に当てて言葉を遮った。そして一言「最期は私が運んであげる」と。


 すべてを理解した僕は喜んで彼女に運ばれた。


「死に際の舞踏会を見せてくれてありがとう。いつも見ていたよ」

 どうやら、彼女の目には最初から僕が映っていたようだ。


「見えていたのならどうして舞踏会を見なくなったの?」


「ごめんね。死に際の舞踏会をするほどにあなたは消えてしまう。それが辛くて……」


「そうだったのか……。でも、君は良いの?僕を運んで?」


「良いのよ。今度は私があなたに(さず)ける番。あなたは消えるけど、春には私が素敵な花吹雪を巻き上げてみせるからね」


()()()()さんだけに贈るとびっきりの春一番。生命の舞踏会を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ