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16 召喚成功?

「案外平和だねえ」


数日経っても、ストーカーはストーカーらしい動きを見せなかった。

ただし、私とクロシェがデートしてる時になぜか良く遭遇する。

いつも杖持ってるし、きっと彼の魔法練習スポットと私達のデートスポットが被ってるんでしょう。

小さな町だし、場所も限られてるしねー。

もちろん彼以外の生徒も良く見かける。


「このまま諦めると良いね」


クロシェが窓の外を見ながら言う。

今は放課後の部室にいる。

双子とイエスリーとモモフィーちゃんは、図書館へ新しくスライムの本が入ってないか聞きに行っている。

私達は魔法りんごをライムにあげている最中。


「美味しく…なれーーー!」


魔法をかけて、と。

本当に美味しくなってるかどうか、確認した事無いけど、良い食べっぷりだからきっと美味しいでしょ。

ん?

良い事思いついた。

料理に失敗しても、魔法で美味しくしたらいけるんじゃない…?

料理上手になるまではその手でいこう。うんうん。


「「ただいま〜」」


双子達が帰ってきた。

双子の後ろにイエスリーとモモフィーちゃんが並んでいる、いつものフォーメーションだ。

本を持っているのはイエスリーだけみたい。


「良い本あった?」


イエスリーに聞くと、借りて来た本を見せてくれた。


「スライムに関する事が載ってる本は入荷していなくて、小説を借りたの」

「そっかー。どんな小説?」

「冒険モノのラブコメ。このヒーローがアニくんミケくんにちょっとだけ似てて」

「どれどれ… これ?双子よりだいぶ上品な感じだけど」

「「どれどれ」」


双子が本を覗き込んで来た。

イエスリーの横にいたモモフィーちゃんが、ササっと双子の背後に回る。

忍者か。

闇魔法って忍者の技っぽいの使えるし、本当に忍者みたいだよね。

ピンクの忍者モモフィーちゃん…。

カッコ良い… いややっぱり可愛い〜。


「俺らの方が上品じゃん」

「うんうん」


双子がふざけた事を言ってる。


「どーこーが〜?」

「お二方の方が上品ですわー!」


ちょっと後ろの方から言うのはモモフィーちゃん。


「だよねー」

「モモ分かってる〜」


双子がモモフィーちゃんを振り返り前髪をかき上げた。

なんだそのキザったらしいポーズは!

似合うのがまたムカつく。

上品って言ってるんだからもっと上品そうなポーズをしろ。

…上品そうなポーズってどんなポーズだろ?


「きゅふっ」


パタリ。

モモフィーちゃんが変な音出して倒れた!


「モモフィーちゃーん!」

「なんて羨ましい…!」

「イエスリーそんなん言ってる場合じゃないっ」

「「あらら〜」」


慌ててモモフィーちゃんを介抱しようとした… でも幸せそうな顔して寝てる様に見える。


「寝かせておいてあげましょう」


イエスリーが笑顔で言うので、スライム達お気に入りの双子のクッションに寝かせておいた。

寝てるモモフィーちゃんに寄り添うスライム達…

モモフィーちゃんに寄り添ってる訳じゃなくて、クッションに乗りたいだけかもしれないけど。

どっちにしろとても可愛い。

イエスリーがサッと魔道具を取り出して録画する。


「双子はモモフィーちゃんにあんまりサービスしない様に!」

「「え〜」」

「でも」

「こーしただけだぜ?」


双子がまた前髪をかき上げた。


「くっ…!あんた達の顔がいい事なんで知っている…くそう…!負けるもんか!」

「「ふふん」」


双子は更にポーズを取る。


「ううっ… クロシェ、援護をお願い…!」

「え?ええっ⁇ええと… 僕はどうすれば?」


クロシェがあたふたとしている。

ふふふ、可愛い。


「見てごらん!クロシェの方が可愛い!」

「「何だと…⁈」」

「どう言う事?」


戸惑うクロシェに説明をする者はいない。

イエスリーは私達を撮影してるし、モモフィーちゃんは寝ているので。


「ここは引くしかなさそうだな」

「だが、俺達は決して負けた訳ではない!」

「「覚えてろよ〜」」


捨て台詞を残して部室を出る双子。

イエスリーが録画を終えると、拍手をする。


「後でモモちゃんに見せなきゃね」


楽しかった〜。

おとといきやがれ、くらい言っとくべきだった?


「やっぱりクロシェが最強だよね」

「違うと思うけど… それで良いよ?」

「あはは」


双子は戻って来て、モモフィーちゃんの様子を見ている。


「あ、彼また裏で練習してるよ」

「頑張るねえ」


クロシェが窓から外を見ると、モモフィーちゃんのストーカーを見つけた。

何回かあそこで練習してるのを見ているので、モモフィーちゃんとは関係ないだろうと、私も一緒にのんびり眺める。


「あ、ひどい」


スライムが居たのだけれど、杖で叩いて追い払っている。


「大声出すだけでも居なくなるのに…」

「うん。追い払うのに魔法は使わないみたいだね」

「そう言えばそうだね」


杖が有れば簡単に魔法で追い払えるだろうに。

…でも、いつも召喚魔法の練習しかしてなかったな。

もしかして、


「召喚魔法しか出来ない、とか…?」

「ああ、そうかも」


クロシェと顔を見合わせて頷き合った。

そしてまた外を見ると、

ん?

ストーカーの彼が描いた魔法陣がキラキラと光ってる。

やっと成功か?


「何か召喚されるのかな?」

「うん。初めて見るね」


ワクワクしながら待ってると、ストーカーがふらりと揺れて、倒れた。


「えっ…?」

「様子がおかしい」

「「どうした?」」


双子とイエスリーも窓から顔を出して見始めると、魔法陣の光が収まってきた。


「失敗?」

「失敗なら良いけど…」

「アイツは魔力切れ?」

「多分そう」


でも、切れる程の魔力を使ったって事は…

まさか、多くの魔力が必要なモノを召喚した訳じゃないよね。


「魔力が元々少ないのかな」

「うん…それか残り少なかったとか」

「早く行った方が良いんじゃない?」

「うん、でもモモフィーちゃんは?」

「仕方ねーな」


双子がモモフィーちゃんの前に行き、アニールがモモフィーちゃんのほっぺをつついた。


「まあ大丈夫か」


そう呟くと、アニールがモモフィーちゃんを持ち上げて、ミケールがモモフィーちゃんを縦に抱っこをした。


「…モモフィーちゃんが起きた時ヤバそうだけど」

「とりあえず下へ行こう」

「うん… ってちょっと!何か出て来る!」


下へ行く前にちらりとストーカーの方を見てみると、魔力の光と一緒に何かが魔法陣から出て来ている。

魔力の光が見えるって事は、普通の動物じゃなくて、


「魔物だ!」

「ヤバいじゃん」

「窓から出るか。シュカ補助」

「うん!」


急いでアニールと自分に補助魔法をかける。

窓を全開にして、ミケールがモモフィーちゃんを抱っこしたまま窓の外へ出た。続いてアニールも窓の外へ。

アニールの風魔法で3人とも下まで降りて行った。


「私が浮遊魔法使うから、2人とも手を」

「うん」

「分かった」


両手でイエスリーとクロシェと手を繋いで、浮遊魔法で窓からゆっくりと下へ降りて行った。

降りて行く最中に、魔法陣からは魔物が出て…来た。


「まさかドラゴン…?」

「そこまで大きくは無いけど、ドラゴン?」

「本物は見た事無いけど、本に載ってた姿はあんな感じ…」


浮遊魔法はゆっくりとしか動けないので、ドラゴンらしき魔物が出て来るのを見ていた。

その間に、ミケールはモモフィーちゃんを草の上に寝かせて、アニールと一緒にストーカーの元へ走って行った。


「うわ、触りたくねーな」

「服引っ張ろ」


双子はストーカーの服を掴むと引きずってドラゴンから遠ざけた。


「「俺ら魔力譲渡ムリ!」」


双子は魔力の相性が悪かった様で、こっちに向かって叫ぶ。

1番大丈夫そうなイエスリーが急いでストーカーの元へ向い、魔力を与え始めた。


「こっちは大丈夫。それよりも…」


イエスリーが魔力を与えながら、ドラゴンを見る。

どーするよ…アレ。

ドラゴンはゆっくりと辺りを見回している。

大きさは…うーん?

双子くらい?

2メートルあるか無いか…?

こっち見た!

ストーカーを見てるのか!


「こっちに向かって来てる!」

「先生を呼んで…」

「「間に合わねー」」


ミケールが魔力を練り始める。

わっ、補助…

急いで補助魔法をミケールにかける。

ミケールはドラゴンの足下に土魔法と水魔法を使うと、ドラゴンが沈んだ。

ドラゴンの足下の地面を泥に変えたんだ。

でも頭の先が出ている。


「時間稼ぎにしかならねーよ」

「どーする?」

「ええ⁈どーするって…どーする?」


双子のセリフに思わずクロシェを見るけど、クロシェだって分からないよねえ…


「うん、分からない」

「クロシェ心の声読んだ⁈」

「でもドラゴンにはなれそう」

「えっ、変身?」

「うん。でも、戦う自信は無いかな」


そりゃそうだ。


「危ないからダメだよ!」


慌ててクロシェを止める。流石に本気でドラゴンに変身して戦いはしないと思うけど。


「あれは多分、土属性のドラゴンだから。風魔法が効くはずだけど、攻撃して怒らせても良くないかも」


イエスリーが言う。茶色のドラゴンだから土属性なのかな?

どうすればいいのか分からずいると、泥水と土が大きな音と一緒に爆発したかの様にいきなり噴き出た。


「うわっ!」

「「危ねっ」」


クロシェが泥から私を庇ってくれたけど、アニールが風魔法で防いだから大丈夫…


「きゃあっ」

「イエスリー!」


イエスリーとストーカーが泥を被ってしまった。


「だ、大丈夫…ただの泥水だから…それよりドラゴン出て来てる」


イエスリーがドラゴンを指差す。

泥水から出てしまい、こちらを睨んでいる。

ストーカーに視線を定めると、またそちらに進み始めた。


「召喚主を狙ってる… 食べられちゃう⁈」


と、そこへ可愛い鳴き声が。


ニャー!

ニャアニャア!

ピーピキュー!


「ネコラ達⁈」


私達の後ろから追い越してドラゴンの前まで行き、威嚇するかの様に鳴き声を上げた。

だけどドラゴンは全く気にもせず、ストーカーの方へ進んでいく。

ネコラとライムとマルコは頑張って威嚇?をしているが、ドラゴンがまたいでしまった。


ピー!

プピ…


「えっ、他のスライムも来てる」


ピッピー!

プキュー

ブプスー

キュルルル


…スライムの鳴き声って色々あるんだね。

でも、ドラゴンとスライムって言えば思い浮かぶのはもちろん、


「合体する…⁈」


みんなハッとして思い出す。

この地方に100年ほど前起こった、ドラゴンとスライムの戦いを。

スライムが増えて来て、流石に無視出来なくなったのか、ドラゴンが止まる。


「みんなー!合体!合体して巨大化するんだよー!」


スライム達に呼びかけてみたが、ネコラとライムとマルコだけこちらを見て困った様にぷるぷると震えた。


「言葉通じてねーな」

「そりゃあな」


双子が呑気に言う。

私も言葉が通じてるとは思ってないけど、でもどうすればあのスライム達は合体してくれるのか…


「僕が行くよ」

「クロシェ?行くって危ない…」


クロシェが光り出だした。魔法を使って… 黒いスライムになった!


「ピキー!」


スライムになったクロシェは、スライム達の所へ跳ねて行ってしまった。


「ダメだよ!危ない!」

「クロがスライムになったから」

「クロスラだな」


双子は何でこんな時に呑気なの⁈

その間にクロスラは、他のスライム達に何かを呼びかけている。

スライム達はじっと聞いていたかと思うと、ライムがぴょん、とクロスラに飛び乗った。続いてネコラとマルコも。

そしてキラキラ光ったと思ったら、1匹の大きなスライムになる。

それを見てた他のスライムも、どんどんクロスラ達にくっついて大きくなっていく。


「ええ… クロシェどうなっちゃうの…」


私の呟きに答えられる人はいない。

みんな呆然と見ているしかなかった。

ついには、ドラゴンの倍程の透明な巨大スライムなる。

ドラゴンも流石に驚いているのか、一歩下がった。

そして口を大きく開けて、


ギャオーーーーーーー!


吠えた!

その途端、スライム達のいる地面が震えて、スライムもぶるぶると激しく揺れる。

が、スライム達はそのままドラゴンへ突っ込んで行き覆い被さった。

スライムに包まれたドラゴンは暴れていたが、徐々に泡となって消えて行った。


「…どう、なってるの?」

「「分かると思う?」」

「ううん…」


「おい!お前ら大丈夫か⁈」


後ろから誰か来た。遅いよ。


「先生」

「何があったんだ?さっきの声みたいなのは何だ…ってか、アレは何だ⁈」

「クロシェ」

「は⁈」


うちのクラスの先生だったけど、説明する事が出来る程何が起こったのか分かっていない。

クロシェはどうなっちゃうの…?


巨大スライムを見つめる私達。

すると、ドラゴンの姿が全く見えなくなり、巨大スライムかキラキラ光り始めた。

巨大スライムが見えなくなる程光り、光が収まる頃にはたくさんの普通サイズのスライム達に戻っていた。

そして、クロスラがこちらへ跳ねて戻って来た。

ネコラとライムとマルコも続いてこちらへ来る。


「クロシェ!」

「ピキー」


跳ねて来たクロスラを受け止めて、ぎゅっと抱きしめた。


「クロシェ、ありがとう…!でも大丈夫?あのドラゴンは溶かしたの?吸収したの?」

「ピー」

「うん?」

「「いや戻ってもらえよ」」


残念ながらスライムの言葉は分からないので、クロシェには人間に戻ってもらった。

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