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10 得意魔法

「え?今日だっけ」


スラ研部室にて。今朝はクロシェが1番乗りだった。

ネコラは珍しくお出かけ中でいない。

魔法実技授業で、まずは得意魔法のお披露目会をするので何をするのか考えて練習して来るようにって言われてたけど、今日がそのお披露目だったみたい。


「うん、確か今日のはず。シュカはどうするの?」

「ううん… 生活魔法使ったってつまらないから、補助の方だけど…どっちにしろ地味だからね… 先生に協力してもらうか、双子に協力してもらうか…やっぱり双子かなー。クロシェは?」

「何か動物に変身しようかと思ってて」

「へえ、何の動物?」

「うん、それなんだけど、シュカは何の動物が好き?」

「え!まさかリクエスト可能なの?」

「知らない動物は難しいけどね」


え〜…私の好きな動物になってくれるって事か〜。

基本的に動物全般が好きだから迷うなあ。

うーん。

にやにやしながら考えていたら、最近見た動物の映像を思い出した。


「あ、アルパカって知ってる?」

「うん。毛がすごく柔らかくて首が長いおとなしい草食動物だよね」

「もしかして見たことあるの?」

「うん。親戚の家に行った時に移動動物園が来て、そこに居たんだ」

「えー良いなあ!寒い地域の動物なんだよね?すっごいもふもふな毛並みだって聞いて触ってみたくて」

「分かった。授業でアルパカに変身してみるから、撫でてくれる?」

「うん!!」


うわあ、楽しみ!

映像で見てから、ずっと気になってたんだよね。

のんびりと草を食べてる所を触ってた人が、すごく感動した様子で毛並みを褒め称えてたんだ。

あれはあの人の演技力が凄いのか、アルパカのもふもふっぷりが凄いのか…⁈

映像だけでも全身もふもふで可愛かったなあ…

全身もふもふ… ん?

変身魔法って服はどうなるんだろ?

まさか脱いで魔法使うんじゃないだろうね…


「ね、ねえ。クロシェ?あのー… 変身魔法ってさ… 服はどうなるのかなあ… なんて」


…この質問セクハラじゃ無いよね?


「ああ、よく聞かれるけど、服ごと変身するよ。アルパカなら制服は毛になるかな」

「ああ、良かった」


じゃあ首や背中を撫でても大丈夫か。

…クロシェ本人の背中や首だったら気軽に触れないけど、アルパカの姿なら緊張せずに触れるかも。

私からクロシェに触れた事ってほとんどないんだよねー。

もちろん、理由は恥ずかしくて!

早くクロシェのアルパカ触りたいなー!

ワクワクが止まらない!




やっとお昼休みになった。


「時間が経つのが遅すぎるよ…!」

「シュカ今日はずっと挙動不審だな」

「なー」


食堂でランチタイム中に双子が不審者を見るような目でこっちを見ている。


「実技授業が待ち遠し過ぎるのがいけない」

「実技?」

「何かやるんだっけ?」

「得意魔法のお披露目だよ!何するか決めてるの?」


双子に言うと、2人とも思い出して相談し始めた。


「イエスリーはどうするの?治癒魔法だよね。誰か殴ってから治す訳にはいかないよねえ」

「ふふ、もちろん。先生に相談したら、腰痛を治してって言われたの」


なるほど、…腰痛だと、傷を治すような目で見て分かるもんじゃないけど、そんなので良いのか。

じゃあ私も双子の魔法に補助魔法で効果を上げれば良いよねー。

双子はどの魔法にするのかな。

相談中の2人に聞き耳を立ててみた。


「俺が炎を出して」

「俺が水をぶつけて消す?」

「それだけじゃつまんねーよな」

「うん。炎の龍を水の龍で消すとか」

「おお、ドラゴン… そんなのどーやって出すの」

「気合いで?」

「気合いか…」

「あ、7つ玉を集めれば」

「それ聞いたことあるな」

「玉ってどんなのだ?」

「さあ?」

「ヒントが少な過ぎる」


話が逸れてきている。

でも、補助魔法を掛けてドラゴンのイメージを固めれば炎や水で出来なくはないんじゃない?

炎や水をボールの形にしたり、矢の形にするのは出来るんだから。


「双子!図書館に行ってドラゴンのイメージを固めよう。補助掛ければ出来ると思う」

「「マジで?」」

「ファイヤードラゴンとウォータードラゴンの共演をみんなに見せてあげようじゃないの!」

「「おおー!」」


暖かく見守ってくれているクロシェとイエスリーに手を振り、そのまま双子と一緒に図書館へ走って行った。

1番カッコいいドラゴンの絵が載った本(司書さん選出)を読んでイメージを頭に詰め込む。

これは派手になりそうだ…!




待ちに待った実技授業のお時間がやって来ました!

クラスみんなで校庭に出て、最初に先生から注意事項を説明される。

攻撃魔法も使えるように、結界を張ってくれるんだって。

先生が杖を掲げ、上空に大きく四角を描いた。

するとキラキラと輝く魔力がブワッと校庭に広がった。

ちなみに、魔力は私にはキラキラ光って見える。

でも双子には色付きで見えるらしい。

人によって見え方が違うんだ。不思議だよね。

魔力が少ない程見えないんだって。なので魔法が使えるなら魔力は見える。

この学校の人は全員それぞれの見え方で魔力が見えている。


「じゃあ始めるぞー。誰からやる?」


先生の声に、みんなで顔を見合わせた。


「俺らは凄いから後半かラストだな」

「なー」

「2人ともしっかりイメージ練っといてよ」

「「任せて」」


双子と話してると、先生が勝手に決めたようだ。

イエスリーが一番手だ。

…腰痛早く治したいのかな。

イエスリーは治癒魔法を使うと言ってから、先生の腰近くに手を向けて魔法を使った。

ホワっと柔らかそうな光が先生の腰に入っていく。

先生は気持ちよさそうな顔してるなー。

温泉入った時みたいな感じ。

無事に腰痛も治った様で、先生が元気になった。


次は風魔法が得意な女子だ。

小さい旋風を起こして見せた。

その次は植物魔法が得意な男子。

種を取り出して地面に置くと魔法を使った。

種から芽が出てぐんぐん大きくなり、大きなひまわりの花を咲かせた。

面白いなあ。

そして次の生徒…

ひまわりはそのままなのかな?

次の生徒は水魔法だ。ミケールと被ってるな。

でも水を霧状に出して、綺麗な虹を作っていた。

これなら全然違うから良いね。綺麗だし。

ひまわりに水をあげられたし。

次の生徒は色変え魔法だって。

地味かな?

と思ったら、ひまわりの花びらを七色に変えて見せた。

うわー、器用だね。

そして次は、お待ちかねのクロシェだ!


「アルパカになります」


クロシェがそう言うとみんなざわざわし始めた。

アルパカを知らない人が結構いるんだ。

この地方は温暖だから、アルパカいないしね。

そしてクロシェがキラキラ輝いたかと思ったら、黒い毛のアルパカが現れた。


「ふぁ〜!もっふもふ!」


思わず声が出てしまった。

アルパカクロシェは私の前に来て、フェ〜、と鳴いた。

目は青い、クロシェの目と同じだ。髪と制服は黒だから黒い毛なのかな?


「…触って良いの?」


そう聞くとアルパカクロシェが頷く。

そっと長い首の毛に触れると、ふわふわ手触り。

本当に柔らかい、ふわっふわ!

これは例えようのないふわふわだわ。

ふわー。

優しく何度も撫でる。

ふわー…


「うわっ、すっげ柔らかっ」

「なんじゃこりゃ」


私がアルパカクロシェの毛並みを堪能している隙に、双子まで撫でていた。


「ちょっと、勝手に触らないでよ。人に触れるの嫌いなんでしょ」

「「これはアルパカだから」」


そう言いつつも、双子はちょっと触るとすぐ離れた。

その後すぐにお互いの髪を触り合う。


「でも俺らの方が」

「しっくりくるよな」

「いや絶対アルパカクロシェの毛並みの方が気持ち良い」


双子の髪なんて所詮は人間… まあ私の髪よりは柔らかいかもしれないけど。

それでもアルパカの毛並みには到底敵うわけがない!

もふもふ… ふわふわ… ふぉー…


「バカップルは無視しろー。次はお前、やってみろ」

「はーい。ゴーレム作ります」

おお〜!

ぱちぱち…

じゃあ次ー

はい、雷落とします。

ドーーーーン!

うわーちょっとピリッとした!

はい、次ー

空飛びまーす

風魔法だな

おお〜

何だそのポーズ…

……………


「おいシュカ」

「いつまで旦那モフってんだ」

「はっ」


気付くと双子と私以外が終わっていた。

おお… アルパカの毛並みは人を虜にする…


「俺たちの番だぞ」

「うん。クロシェありがとう!」


クロシェから手を離すと、またキラキラした魔力がクロシェを包み込むと元の姿に戻った。

髪色は同じ黒でも、人間だとサラサラだなあ…

ついさっきまで撫でていたので、無意識にクロシェの髪を触ってしまった。


「…あ、ごめん!」

「ううん。いつでも触って」

「えっ」


優しい笑顔のクロシェ。ホント良い…


「おい、見惚れてんなよ」

「さっさと行くぞー」

「わっ、ちょっと引っ張らないでよ」


双子に片手づつ引っ張られ先生の前へ。


「「火龍と水龍を戦わせまーす」」


ざわざわ…

そりゃみんなざわつくよね。


「3人でやるのか?」


先生に聞かれて私達は頷いた。


「私は補助魔法でサポートします」

「なるほどな。じゃあラストらしく派手に行けよ」


双子が横に並んで立ち、私はその後ろへ。

双子の背中に手を当てて魔法を。

魔力安定、増強、コントロール…

よし、出来た。

手を離して双子から少し距離を取る。


「火龍よ、我が名に応え姿を現せ!」

「水龍よ、我が名に応え姿を現せ!」


双子が同時に声を上げた。

…ちなみに言ってることはテキトーだからね。

水と火を出してるだけだから。


双子が輝き光が手へと集まる。

上に向けた手のひらからそれぞれ火と水が柱のように立ち昇った。

ドラゴンの形は難しかったか?

と思ったけど、すぐにドラゴンへ形を変えた。


おおーーーー!!


みんなから歓声か上がる。

うんうん、とりあえずは成功だね。

ここからコントロール出来るかどうか…

火龍と水龍は対照的にぐるりと動き、お互いに衝突した、

様に見せて魔法を操って消した。

多少ジュワッと音がしたので消しきれなかった分が当たってた様だけど、大成功で良いでしょう。


みんな本当に召喚したのか騒いでいたけど、先生がすぐに説明した。


「なかなか見応えもあったし面白かったな。簡単な魔法でも練度次第では上級を凌ぐ場合もある。基本を怠らずに今後も頑張る様に。じゃあ今日はこれで解散!」

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