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その先へー5

 間もなく長谷川が駆けつけた。その後ろにいた大野を見て瑠唯が目を見開く。


「大野先生…ご一緒だったんですか?」


「ああ…ちょっと厄介なんだろう?人手があったほうがいいかと思ってな。」


「ありがとうございます。お願いします。出来ればこのまま落ち着かせたいんです。オペはもう少し先に延ばしたいので…」


「ああ…聞いてる。この場合、その方がいいだろう。賢明な判断だ。」


 その後三ツ矢を含め、四人で懸命な治療が施され、どうにか病状が落ち着いた頃には空が薄っすら白みかけていた。


「大野先生ありがとうございました。三ツ矢くんもお疲れ様。もういいから仮眠取って。」


「はい、じゃあ…そうさせてもらいます。僕、夕方迄担当なんで。」


 そう言って三ツ矢は仮眠室に向かった。


「お前ももう帰っていいぞ。休暇中なんだろ?」


「あっ…はい、でも佐々木先生戻るまでいます。」


 佐々木は、知らせを受けて駆けつけ、廊下で肩寄せあって蹲っていた若い両親を落ち着かせ、病状の説明をしている。特に母親は産後間もない。早く返して休ませた方が良いだろう。


「先生こそ大丈夫なんですか?未だ、頭痛や目眩があるんじゃないんですか?」


 定期的に診察を続けている瑠唯が大野の顔を覗き込む。


「ああ…だが頻度は日に日に減ってる。今はだいたい一週間から十日に一回程度だ。それも軽いものだ。」


「そうですか。もう少しですね…完治まで…」


「ああ…それよりお前、さっさと帰った方がいいんじゃないか?また、山川ほっぽって来たんだろう?」


「またって…」


「聞いたぞ。クリスマスもすっぽかしたんだろ?」


「先生!そんな話し、誰から聞いたんですか?」


「院長が言ってた。クリスマスに奥さん孝行でホテルのレストランに連れてったら、隣で滝川と師長が子供連れて飯食ってたって。事情を聴いたら、山川が瑠唯とのデートに予約入れてたのにすっぽかされたらしいってな。」


「ほんっと、滝川先生ってお喋り!」


 瑠唯はふくれっ面で、横を向く。


「誰がお喋りって?」


 そこへ長谷川が戻って来る。


「おう…どうした?」


「ええ…ご両親には一旦家に帰ってもらった…お母さんは未だ産後間もないから、休んでもらったほうがいい…淳平も帰って。私、このまま残ってもう少し様子見るから…原田先生もお疲れ様でした。あっ、淳平、原田先生送ってあげたら?帰り、車の運転気を付けてね。」


「ああ…じゃあ、そうするか?」


 この大野が、しおりの言う事を素直に聞いている…しかも淳平?…


 瑠唯は驚きの眼差しでマジマジと大野を見た。


「なんだよ!原田!その目は!」


 そこへ三ツ矢が飛び込んで来た。


「原田先生!あっ、未だいた!よかった。交通事故による重傷者の搬送要請があって!どこも受け入れ拒否だそうで…でもER、研修医だけで…お願い出来ますか?」


「わかった!行きます!」




 瑠唯がERに駆けつける。大野も後に続いた。


「二十代男性…交通事故による頭部損傷、意識レベル3、それと…かなりのアルコール臭がします。」


「付き添いは?」


「いません!」


「わかった!直ぐオペ室用意しろ!俺がやる!」


 大野のその言葉に、瑠唯が目を見開く。


「先生…」


「大丈夫だ!原田!手を貸せ!」


 瑠唯は一瞬逡巡すると…


「わかりました!三ツ矢くんも入って!」


「はい!」




 外傷性硬膜外血腫…オペ室には大野の器械出し指示の声のみが響いている。瑠唯との間には全く会話がない…目配せもしない。時折瑠唯が三ツ矢に指示を出す。オペは淡々と進む。


 そして…四時間にわたったオペが終了した。






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