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軽快ー7

 瑠唯がERに駆け込むと…


「おお…どうした。血相変えて。」


 大野がベットに腰掛けて、呑気な顔をしていた。


「どうした…じゃありません!倒れたって…」


「大袈裟だなぁーちょっと目眩がしただけだ。」


「大袈裟なんかじゃないでしょう?医者がERでぶっ倒れたらシャレになりませんよ…」


 孝太が抗議した。


「とにかく、診察させて下さい!場合によってはこのまま入院してもらいますから!」




『これ…着替えとか…必要な物持ってきたから、足りないものあったら言って。』


『ああ…悪いな。鍵はそのまま持っててくれるか?』


『それは構わないけど…どうなの…具合…』


 瑠唯の必死の説得で、大野は結局その日から入院する事となり…落ち着いた頃を見計らって瑠唯が病室を訪ねると、中から話し声が聴こえる。


 …この声って…佐々木先生?…


『まあ…それなりだ。』


『それなりって、なによ…』


『なあ…しおり…俺は、脳腫瘍のオペなんて数え切れないほどやってきた。でも…オペされるのは初めてなんだよなぁー』


『あたりまえじゃない…何馬鹿な事言ってんのよ!』


『わかってなかったなぁーと思ってさ…』


『何を…?』


『患者の心境…』


『どんな…?』


『やっぱ、こえーよなぁ。』


『そうね…でも…原田先生、腕は確かでしょ?』


『ああ…だが、絶対は無い。それに…命は助かっても、問題はその後だ。俺はもうオペが出来なくなるかも知れないんだぜ…』


『ふふ…何時も強気な大野淳平が、随分と弱気な事言うのね。』


『ああ…だからわかってなかったんだって…』


『安心して…メスが握れなくなっても、貴方一人くらい私が養ってあげるわよ。こう見えて、結構優秀な産婦人科医なんですからね。』


 瑠唯は声をかけることが出来ずにその場を離れた。




「大野先生、失礼します。…あれ…邪魔しちゃいました?」


 ひょっこり顔を出したのは山川だった。


「はかやろう!そんなんじゃねえよ!」


 その横でしおりがはにかみ下を向く。


「倒れたって聞いたんで、様子を見に来たのですが…大丈夫そうですね。」


「あたりまえだ…大袈裟なんだよ!原田も長谷川も…」


「でも、主治医の言う事は聞かなくちゃ…今、来てました?原田先生…後ろ姿、見かけたんですが…」


 それを聞いた大野としおりは、顔を見合わせ


「聞かれたか?…今の話し…」


「何です?今の話しって…」


「何でもねぇよ!…それより山川先生…俺が三年かけて駄目だったのに…どうやって原田を変えたんだ?」


「私…また後で来ますね。」


 何かを察して病室を出ようとするしおりを大野が制する。


「いや、いい…お前は此処にいろ。で…先生、まさか手ぇ出したりしてねぇだろうなぁ?」


「それは…過去の誤解をときました。ただ…それだけです。」


 そう答えるしかなかった山川を大野が怪訝な顔で見つめる。


「そうか…まぁ俺はいいがな、院長は手強いぞ!」


「覚悟はしてます。」


「それと…俺のオペが終わるまでは、お預けだ!」とニヤリと笑う大野と…


「…わかりました。」と渋い顔をする山川を…


 しおりがキョトンとした顔で見比べた。







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