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軽快ー2

「寒い?温度上げようか?」


 夏の終わりに暖房を入れて走る車の中で


「いえ…大丈夫です。それより先生は暑くないですか?」


「僕はいい…それより君が風邪ひいたら大変だ。何だか顔色が悪いし。」


「何か色々あって…考え事しながら走ってたら、こんなとこまで来ちゃって…此処どこだろう?って思ってたら雨まで降ってきちゃって…本当に助かりました。」


「いいんだ…勝手に心配して迎えに来たんだから…真理子ちゃん…残念だったね…でも、色々って他にも何かあった?」


「えっ…あっ…えっと…」


「何?言いにくいこと?」


「あ…いえ…ちょっと、難しいオペの依頼を受けまして…」


「オペの依頼?君に直接?何のオペ?」


「えっ…あっ…はい…脳の…」


「脳…って、腫瘍かなんか?」


「はい…」


「それにしても君に直接依頼って…院長も通さず…誰?」


 そこで瑠唯が沈黙する。


「…そっか…守秘義務とかあるもんな。ごめん…」


「いえ…別に、いずれカンファレンスとかになると思うんですが…ちょっと迷ってて…と言うか…自身…なくて…」


「君が?そんなに難しいオペなの?」


「はい…病巣のある場所が悪くて…それに、後遺症を全くなしにとのご希望で…」


「そりゃ誰だって後遺症なんかない方がいいに決まってる。でも、脳の難しい位置の腫瘍なんだろう?多少の後遺症は覚悟しないと…命の方が大事だろう?」


「はい…ですが…」


「…で…どうするつもりなの?」


「わかりません…まだ…わかりません。」




 程なく到着したそこは高台に建つ低層階の高級マンションだった。


「先生…此処に、住んでらっしゃるんですか?」


「ああ…此処だと、大学病院と髙山病院と実家の病院の真ん中辺なんだ。何処に出勤するのも便利なんだよ。」



「どうぞ…上がって」


 通されたその部屋は如何にも山川らしいインテリアで統一されていた。置かれている物も必要最小限でスッキリと片付けられている。


「もう風呂も溜まっているはずだから、直ぐ入って。」


 瑠唯が不思議そうな顔をしていると、山川はフッと微笑み


「ああ…さっきコンビニからスマホで沸かしておいたんだ。」


「そんな事出来るんですねー!私…一年間文明から遠ざかった生活してましたから、びっくりです。」


「うん…大変だったね…とにかく早くあったまって…」




「お風呂…ありがとうございました。バスタブ大きくて、気持ちよかったです。…それから…これも…」


 そう言って着ていたTシャツを引っ張る。


「ああ…ブカブカだ…」


 山川の微笑みが優しい。


「濡れたもの、洗濯機回せば乾燥まで終わるよ。」


「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらいます。それで…乾いたら、タクシー呼んで失礼しますから…」


「ええーこんな田舎でこんな時間にタクシーなんて来ないよー」


「えっ………」


「…まぁ、とにかくカフェオレ作ったからこっちに来てあったまって。」


 そう言うとリビングから出て行ってしまった。


 程なくドライヤーをもって戻ってくる。


「髪が未だ濡れてる…こっち来て…」


 山川はソファの端に腰掛けると足元に瑠唯を促す。

 瑠唯がおずおずとそこに座ると、ドライヤーで彼女の髪を乾かし始めた。


「細くて綺麗な髪だね…」


 髪を梳く優しい手とドライヤーの温かい風邪が心地よかった。






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