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寛解ー3

 翌朝、瑠唯は加藤から託された患者…結城真理子の病室を訪れていた。


「おはようございます。外科の原田といいます。加藤先生が学会でお留守なので、代わりに私が結城さんの治療を担当させていただきます。宜しく。」


「もう、治る見込みがないから…新人の先生が押しつけられたんだ。」


 チラっと瑠唯を見た真理子が、そう呟いた。


「押し付けられたとかじゃありませんよ!先生がいらっしゃらない間、心配だからっておっしゃって…それに、私こう見えて新人じゃありませんよ。これでも若手のホープって言われてるんですよ。」と明るく戯けて見せる。


「…それでも…私の病気、治せないんでしょ?」


「治せません!」


 そう言い放った瑠唯の顔を真理子は驚きの表情で見据える。


「医者は神様じゃないので、病気は治せません!病気を治すのは患者さんご本人の力と意思です。医者はそれをお手伝いするだけです。」


「治すって言ったって!全身に癌が拡がってんの、知ってんでしょ!それをどうやって治せばいいの?無責任な事言わないで!」


「それでも…それでも、あきらめないで!貴方が諦めない限り、私達医者も決して諦めない!」


 射抜く様な視線を真っ直ぐに真理子に向けた。それに気圧された真理子が一瞬息を呑む。


「あの…」


 廊下とを仕切るカーテンの隙間から、車椅子に乗った少女がヒョッコリ顔を覗かせた。


「あれ?美香ちゃん?」


「あっ…ごめんなさい…廊下…通ってたら、瑠唯先生の声が聞こえたから…」


「うん…加藤先生の代わりに、ちょっと診察に来てるの。あっそうだ!もしよかったら美香ちゃんもちょっとだけお話ししていく?結城さんいい?」


 横を向く真理子は少し考えている様子だったが、暫くして


「別に構わないけど…」


 無愛想に頷いた。


「美香ちゃん、どうぞ。」


 瑠唯が促すと車椅子を動かして美香が入って来た。


「美香ちゃんどう?足の具合は?」


「うん!もう痛くはないんだけど…未だ歩けなくて…リハビリも結構頑張ってるんだけど…今日も午後からリハビリなの!」


 そう明るく答えた。


「そっかぁー頑張ってるんだーよかった。」


「足…どうしたの?」


 真理子の問いに美香が答える。


「交通事故にあって…もうちょっとで足…切断しなきゃいけなかったらしいんだけど…瑠唯先生がすっごい頑張って手術してくれて、どうにか繋がったんだけど…未だ歩けなくて…でも、私諦めないよ!絶対歩けるようになって、瑠唯先生に褒めてもらうの!頑張ったねって!」


「なんで?なんで…そんなに頑張るの?もしかしたら、一生車椅子かもしれないじゃん!頑張る意味ある?」


「だって…諦めたらそこで終わりでしょ!それに…わかんないじゃん!絶対駄目だなんて!誰にもわかんないよ!」


 そう言って明るく笑う美香を真理子はジッと見つめていた。


「じゃあ…頑張る二人にご褒美!」


 そう言って瑠唯は白衣のポケットから飴を出して其々渡す。

 花がらの紙に包まれたミルク味の飴だ。


「やったーこれ美味しいよねーでもさぁーお父さんに買ってきてって言っても、何処にも売ってな

 いんだってー何処に売ってるの?」


「うぅん…内緒!」


「ええーけちぃー」


 そんな二人を見て、ちょっとだけ真理子が微笑んでいた。


 瑠唯の胸元で機械音が響く。


「はい!外科原田!」


『原田先生!大野先生が至急お話ししたいとおっしゃってますが…』


「直ぐ行きます!」


「瑠唯先生…相変わらず忙しいー」


 と美香が不満を漏らす。


「ごめんねーじゃあ真理子ちゃん、また来るね。」


「じゃああたしもー」


 美香が車椅子のタイヤに手をかけた時…


「美香ちゃん…もう少しいていいよ…」


 と照れくさそうに真理子が言う。


「本当!」


 そんな二人を残して、瑠唯は病室を出た。






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