表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/68

治療ー6

「あの日…三ツ矢さんが奥さまと外来にいらっしゃいました。お腹に引きつるような痛みがあると言って…」


 人気の少ない食堂の何時もの席で、瑠唯が話し始める。


「内科医だった三ツ矢さんは、ご自分の症状に何かきっと予感みたいなものがあって…カメラの予約も取ってらして…その検査も私がやりました。結果はごく軽い腸炎…そう診断しました。お二人にも画像確認して頂いて…薬を処方しました。でも…その夜…三ツ矢さんは…救急車で運び込まれた時にはもう…心肺停止状態で…蘇生もおよばなくて…」


「その時、貴方はどうしていたんですか?」


「その日の勤務終了後にお休みをもらって…旅行に行っていて…」


「父がもがき苦しんで死んで逝った時に旅行してたんですか?呑気に…」


 瑠唯にとってはけして楽しい旅行などではなく、むしろ山川への想いを断ち切る為の辛い旅行だったのだが…


「三日後、病院に戻って…その話を聞かされて…でも、それきりその事からは一切担当を外されて…いくら教授にお願いしても何も教えてもらえなくて…」


「だから!だから、その後の話し合いの席にも出て来なかったんですか?指導医の山川先生はいらしたのに…」


「その話し合いの事は…私は…知らされて無くて…」


「そんなバカな話しがあるか!貴方が診察して、診断して…薬を出したんだろう?そのせいで父が死んだかもしれないんだぞ!その当事者が何も知らないで、ダンマリなんてありえないだろう!」


 苛立ちを抑えきれず三ツ矢が叫んだ。

 その騒ぎに、周りの視線が集まった…その時…


「そこまでだ!こんな所でする様な話しじゃないだろう…場所をわきまえろ!」


 厳しい目つきで後ろに立っていたのは山川だった。


「また、そうやって原田先生をかばうんですね!失礼します!」


 そう吐き捨てて、三ツ矢はその場を立ち去った。



「山川先生…」


 戸惑う瑠唯を落ち着かせるように、三ツ矢が今までいたその席に腰を下ろした山川は


「何を言われた?」


「あの時…三ツ矢さんが亡くなった日の、真実を知りたいと…」


「真実も何も…あの時の事に何も嘘はないだろう?」


「でも…私の口から直接聞きたいと…」


「そんな事…あの時、君は何も知らされていなかったはずだ!松本教授の指示だった。それで?君は何と答えたの?」


「そのまま…ありのまま、私の知っていることを伝えました。」


「そう…それでいいよ。でも…もう君はこれ以上彼に関わらない方がいい!」


「そうでしょうか?本当にそれでいいんでしょうか?」


「ああ…過去の事を…三ツ矢さんの事を忘れろとは言わない。だが、今の君はあの時とは違う。それを踏まえて君は…前に進むべだ。」


 瑠唯を見つめる山川の目は優しかった。そして何か決意を含んでいるように…力強かった。

 瑠唯の心があの頃に引き戻される。恋しくて…恋しくて…苦しくて…涙がでそうになる。


「僕は…君との関係を一からやり直したいと思っている。」


 そう…山川がポツリと漏らした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ