表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第六章:空中決戦


 その時、空から影が覆いかぶさるように広がり、マムとグリムの頭上を何かが飛び去った。それは「雷の魔鳥」、ヴォルテンだった。黒い羽が光を吸い込むように鈍く光り、その巨大な翼が空を裂く音を立てる。目の淵には鮮やかな黄色があり、鋭い眼光がすべてを貫くように見据えている。上の嘴は鋭く下へ曲がり、まるで獲物を確実に仕留めるために作られた刃のようだった。


 ヴォルテンの低く響く鳴き声が辺りに響くと、それだけで森の動物たちは木々の陰へと身を隠し、雲の都の妖精たちでさえ怯えた様子で動きを止める。声には重みがあり、雷鳴のような響きが込められている。それは、ただ聞くだけで勇気を試されるような、不思議な威圧感を持っていた。


「俺を探そうとしているみたいだが、その必要はない」

 ヴルティンが、マムたちの上空を何回か旋回した後、風を巻き上げながら雲の上に舞い降りてきた。


 マムとグリムは思わず後ずさり、ヴォルテンの巨大な姿を見上げました。雲の床がその重みでわずかに沈むと、周囲に静寂が訪れます。ヴォルテンの翼がゆっくりとたたまれ、冷たい風がマムたちの周りを吹き抜けました。


「俺はこの『雨の鍵』を手に入れるために動いた。そして、それは正しかった。」

 ヴォルテンの声は低く、地面に轟くように響きました。


「正しい?」

 マムは一歩前に出て、声を張り上げました。

「でも、そのせいで地上の町や森のみんなが困ってるんだ!雨が降らなければ、生き物たちはどうすればいいのさ!」


 ヴォルテンは鋭い眼差しをマムに向け、鼻で笑うように低い声を漏らしました。

「生き物たちが困る?そんなことは俺の知ったことではない。雨の力は、この世界を支配する力だ。それを使えるのは、俺のように強い者だけでいい」


 その言葉に、グリムが鋭い声で反論しました。

「雨の力は誰かを支配するためのものじゃない!それは、命を育むものだ!お前がそれを独占して何になる?」

 

 ヴォルテンの目が鋭く細まりました。彼の周りの空気がピリピリとした緊張感を帯び、遠くで雷鳴が鳴り響きます。

「貴様らのような小さな者に、俺の考えが理解できるはずもない。だが、俺を止めたいのなら、その力を証明してみせろ」


 ヴォルテンは大きく翼を広げると、空気が渦を巻き、雲が激しく揺れ動きました。そのまま高く飛び上がると、低い声で挑発するように言いました。

「俺を追いかけてみろ、小さな勇者たち。だが覚悟しておけ。俺を相手にするということは、雷そのものを相手にするということだ!」


 そして、雷光を伴いながら、ヴォルテンは再び空高く舞い上がりました。その背中には、まるで宝石のように輝く「雨の鍵」が確かに見えます。


 マムとグリムは一瞬立ち尽くしましたが、互いに顔を見合わせ、決意を新たにしました。

「グリム、行こう!僕たちでヴォルテンを止めて、雨の鍵を取り戻すんだ!」

「もちろんさ、マム。覚悟はできてる!」


 二匹は力強く羽ばたき、ヴォルテンの後を追って大空へと飛び立ちました。新たな戦いの始まりを告げるように、空に稲妻が走り、冒険の舞台は雷雲の中へと移ります。


お読み下さりありがとうございました。

評価、感想を頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ