表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

第五章:雷の魔鳥ヴォルテン


 マムとグリムは長老、案内役の妖精たちと一緒に黒い羽が見つかった場所に行って見ることにしました。

 長老が言ったようにその場所だけが雲の厚みが薄くなっていて地上の様子も見て取れます。覗き込むマムは危うく雲の隙間から落っこちそうになって、グリムに尻尾を咥えられました。

 

「マム、そんなに覗いたら落っこちるよ」

「大丈夫だよグリム。今の僕は空を飛べるんだよ」

 その表情には、今までの幼かったマムでは無く、勇敢さが少し見えたように思い、グリムは頼もしさを感じました。

 

「グリム、ここからなら誰にも気付かれることなく出入りが出来るんじゃない」


 マムは振り返ると長老の住んでいる建物までそんなに距離はありません。

 

「ぼく達は雲の上からここに辿り着いたから、みんなに見つけられたけど、ここからなら、雲の下から入ってきて、長老の寝室まで誰にも見つからずに行けるよ」


「ふむ、そうだねマム。そして、やって来たのは黒いこの羽を持った者と言うわけだね」

「その通りだよ、グリム」

「そしてこの黒い羽は間違いなくヴォルテンのもの。奴がこの場所を通ったのは間違いないと思う」


 長老は、マムとグリムの推理を聞きながら顎に手を当ててうなずきました。

「確かに、その可能性は高いのう」


 案内役の妖精が、雲の隙間を指さして言いました。

「ここは都の外れ。見張りも少ないですし、雲の層も薄いです。ヴォルテンのような強い飛行力を持つ者であれば、簡単に通り抜けることができるでしょう」


 マムは黒い羽をじっと見つめながらつぶやきました。

「でも、どうしてヴォルテンは雨の鍵を盗んだんだろう?何か理由があるのかな」


 グリムが翼を広げながら考え込みました。

「確かに、それが気になるな。ただのいたずらとは思えない。鍵を持って何か企んでいるのかもしれない」


 その時、長老が静かに言葉を継ぎました。

「わしも雲の上に住まう者。ヴォルテンの噂を聞いたことはある。ヴォルテンは雷の力を操る者。そして、あの黒い魔鳥は力を求めているのじゃ。雨の鍵には自然界のエネルギーが宿っておる。もしもその力を悪用されれば、地上にも空にも大きな災いがもたらされるかもしれん」


 その言葉に、マムとグリムは顔を見合わせました。

「長老、ぼくたちがヴォルテンを追いかけて、雨の鍵を取り戻します!」

 マムの声には決意がこもっていました。グリムもうなずき、彼の横に並びました。


「そうじゃな。君たちがいてくれて心強い。案内役の妖精たちも協力してくれるじゃろう。ヴォルテンの行方を追う手がかりを探そう」


 マムとグリムは再び視線を雲の隙間に向けました。目の前に広がる雲海の向こうに、ヴォルテンが待つ新たな冒険が見えているようでした。

お読み下さりありがとうございました。

評価、感想を頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ