ゼッドのおもてなし練習
ドレス姿でイードルとサバラルとゼッドが丸テーブルで談笑しながらお茶をしていた。ゼッドが徐ろに立ち上がり席を離れるがイードルとサバラルは気にせずに談笑を続けた。
そろそろ二人のお茶がなくなるころタイミングよくメイドが新しいカップと入れ替えた。
二人は菓子を口に入れ、その甘さを逃すためにソーサーを持つ。カップを口元に持ってきて何となく違和感を感じたが、口の中の甘さに我慢できず紅茶を飲んだ。
「がはっ!! まずいっ!」
「ブッホッ!! 苦いっ!」
二人は勢いよく吐き出した。
「はしたないです」
イードルたちの所業に慣れてきたメイドからタオルを受け取り口元を拭う。メイドはスカートを拭いてくれている。すぐにタオルが数枚出てきたということは確信犯であり、イードルが叱責の声をあげようと口を開くと同時にゼッドが飛んできた。
「すみません! すみません!」
イードルとサバラルは眉を寄せて首を傾げる。
「先日、ルルーシアに淹れてもらったので、俺もルルーシアにお返ししたくて……」
「……ゼッド。こういうものはまず自分で犠牲になってからにしてくれ」
「ゼッドも飲んでごらんよ」
メイドがゼッドにトレイを差し出し、ゼッドもトレイからソーサーを取った。
「香りがない……」
二人に飲ませた手前引くに引けないゼッドは勢いよく飲み、ウッと呻くが吐き出さず、ゴクリと飲み込んだ。
「淑女としてはゼッド様が優れております」
メイドの指摘にイードルとサバラルは天を仰いだ。
★★★
本日、『私を王子妃にしたいのならまずは貴方たちが淑女のお手本になってください』がついに発売日となりました。
それを祝してショートショート書きました。
600文字程度に纏めるのはとても難しいです。
三人の様子が皆さんに伝わったら嬉しいです。