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無理ゲーみたいな異世界ですけど、壇ノ浦流弓術でどうにかなりますか? ~即死チート外伝~  作者: 藤孝剛志


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67話 極楽天福良28

 教師らしき男を倒した翌日。山賊王のアジトで一泊した福良たちは出発することにした。

 ただ出発すると言っても山賊王のアジトの中からは外の様子が一切わからない。外に出るだけのことだがかなり気を遣うことになる。

 まず諒太が先に出ていく。諒太に危険を押し付けている形だが二人ともそういうものだと思っていた。福良は護衛対象であり、諒太は護衛なのだから身を張って安全を確保するのは当然のことだからだ。

 諒太は階段を上がり、頭上の扉を勢いよく跳ね上げて飛びだした。


「大丈夫だ」


 少しして諒太が声をかけてきたので福良はゆっくりと階段を上がり外へ出た。入ってきた時と同じ森の中だ。周囲にはこれといった気配はないし、諒太が確認しているのなら問題はないのだろう。

 行動方針は前日までと同じ。周囲を派手に爆撃し、あえて目立ちながら目的地へと向かうことだ。

 福良はさっそくポケットから石を取り出して投げはじめた。福良が先頭に立ち、背後を諒太が警戒しながら進む。昨日の時点でほぼ完成していた仕組みだが、馴れたおかげかより洗練された動きになっている。

 だが、そんなシステムもすぐに行き詰まることになった。周囲の環境が変わったのだ。森が終わりその先は草原になっていたのだ。草や花の丈は靴が隠れる程度で、木々はなくなったが代りとばかりに金属柱が乱立していた。


「これは……人工物なのか?」

「自然にこうはならない気もしますけど」


 金属柱は円形で一抱えほどの直径がある。高さはまちまちだが1メートルから2メートルの範囲に収まっていそうだった。

 福良は小石を柱に向けて何個か投げつけてみた。軽い金属音を立てて跳ね返るだけだった。


「どうやら攻撃対象になっていないようですね」


 福良のスキル、ブラッディーパーティはクリティカル発生時に確率で爆発が起こるという能力だ。クリティカルは攻撃が成立した際に発生するものらしく、障害物などに対して石を投げつけても攻撃とは見做されていないのだろう。


「樹木は生き物だから攻撃したことになってたのか?」

「どうしましょうか。方針を変更しませんと」

「うーん。森よりはマシか? でもこの異様な光景からすると浸蝕領域ってやつなんだよな?」


 聞いた話によれば魔界の構成要素の中心的な存在だ。浸蝕の宝玉を中心に周囲の環境が魔物が棲みやすいように改変されているという。


「それほど住みやすい場所とも思えないですけどね」

「異世界の魔物のQOLなんて知らねぇよ」

「魔物の棲息環境はともかくとして森よりは移動しやすい気はしますね」


 円柱の密度は森の木々程ではない。枝葉もなく低い円柱もあるため隠れていた敵にいきなり襲われる可能性は森よりは低そうだった。


「森よりはましかもしれんけど鬱陶しいことには変わりないな」

「円柱の上を進むというのはどうです?」

「見通しは良くなりそうだけど……円柱間の距離が結構あるな。それにわざわざ目立つのもなぁ」


 福良の二段ジャンプのできる靴を用いれば常人には不可能な跳躍ができる。円柱間の移動も可能だろうと考えたが、常に跳躍移動を続けるのも隙が大きそうだと福良は考えを改めた。


「では時折上って周囲を確認してみましょう」

「たまにならいいか。地図での索敵だけじゃ限界があるし――何か来たな」


 スマートフォンで地図を見ていた諒太が気付き、福良も情報を共有している地図を確認した。

 森の方から動体がやってきている。二人は少し進んでから柱の裏に隠れた。一本の柱で一人ぐらいが丁度隠れることができる。当然、一方向からの視線しか遮れないのだがそこはやってくる何かから隠れるのを優先した。

 森を抜け、草原へとやってきたのは五人の男たちだった。恰好や目鼻立ちは日本人に見えないので現地の人間のようだ。やってきた方角から考えると塔周辺に住んでいたならず者の類いだろう。


『塔のあたりのやつらはくすぶってるって話じゃなかったか?』

『中には気骨のある方もおられるのでしょう』


 二人はスマートフォンのメッセージ機能で会話を行った。小声なら聞こえないぐらいまで距離は取ったが念の為だ。


「おい! とうとう森を抜けたぞ!」

「いちいち騒ぐなよ。こーゆーところこそ油断できねぇんだ」

「そうだぜ。底意地の悪いやつらばかりだからな。気を抜いた瞬間を待ち構えてる魔物がいるかもしれねぇ」

「あ、ああ。わりぃ、気を付けるぜ」


 戒めるような事を言っている者もいるが、全員が浮かれている様子だった。


『気付かれてないようですね』

『先に行かせるか』


 出会えば問答無用で戦いになるのがこのあたりの常識だが、気付かれていないのならわざわざ戦う必要はない。先行する彼らに見つからないか気にかける必要はあるがそれぐらいは許容範囲だろう。


「柱だらけでよくわからん場所だな」

「森よりはましだろうさ。高くても2メートルほどだ。そうだ、上に登れば周囲がよく見えるんじゃないか?」


 福良は懸念した。おそらく大丈夫だろうが、角度によってはこちらの姿が見えるかもしれないと思ったのだ。


『どうする?』

『ギリギリまで様子を見ましょう。見つからないかもしれませんし』


 男たちの一人が軽々と柱を登り切った。中腰になり、手で庇を作り遠くを見回し始める。福良は念の為ポケットから小石を取り出した。


「お?」


 男が遠くに何かを発見した様子になり、そして吹き飛んだ。


「なんだ!?」

「おい!」


 男たちが混乱する。福良も何が起こったのかさっぱりだった。


『何か飛んできたぞ』

『見えたんですか?』

『細い何か――でけぇ針みたいなのだな』


 事が起こっている瞬間はわからなかったが、落ちた男を見れば一目瞭然だった。男の前面に針状の黒い物が何本も突き刺さっていたのだ。

 福良は共有している地図を確認した。感知範囲内に敵らしき反応はない。

 福良は柱の反対側へと身を移した。諒太も意図を察してすぐに反対側へと移動する。ならず者たちに見つかってしまうが、そんな者たちよりも脅威度が高い何かがいると判断したのだ。


「ぎゃああああ!」


 男たちが次々に倒れていく。彼らは呆気に取られていて、柱に隠れる程度のことすらできていなかった。甲高い金属音が鳴り響いていた。男たちに突き刺さっているのと同じ針が金属柱にもぶつかっているのだ。


「なるほど。ここを住処とする魔物はこれへの対応としてこんな世界を望んだんですね」


 男たちが全滅しているので福良は気兼ねなく声を出した。


「よかったな。うかつに柱に登らなくて」


 この攻撃は、ならず者が柱に登って何者かに発見されたことにより発生したものだろう。同じ様なことをしようと思っていた福良は運良く助かったことになる。


「近づいてはこないようですね。気付いていないのか、気が済んだのか、動くつもりはないのか」

「魔物って一枚岩ってわけでもないのか?」

「人を優先的に襲う生き物というだけで、仲良しこよしでもないのでは?」

「なあ。ここを無理に進む必要ないんじゃねーか?」

「そうですね。言われて気付きました。なんとなくまっすぐ向かうべきだと思い込んでましたが」


 この鉄柱地帯をどう進んで行くか。そんなことを福良は考えはじめていたが、明確な脅威があるのなら避けるのは当然の話だった。


「一旦森に戻って別ルートを探って――おや?」


 福良のスマートフォンが軽く震えた。何の通知かと見てみるとメッセージが届いている。


『助けて!』


 パーティチャットだった。送信元は雪花月で、福良、諒太、月が参加状態になっている。


『そう言われましてもどこにおられるのかもわかりませんし』

『地図見て! パーティメンバーの位置はわかるから!』

「こいつ勝手にどっか行ったやつだろ? パーティから外しとけよ。つかブロックしとけ」


 それもそうだと思った福良だが、一応地図を確認してみた。ここから東、1キロメートルほど先にいるようだ。


「これ、敵らしきヤツがいる方じゃないか?」

「聞いてみますか?」


『そっちに強力なモンスターがいませんか?』

『それ! なんか飛ばしてる奴が私の近くにいんの! 助けてくれないならこいつをけしかけるからな! そっちの場所はわかるんだ!』


 さっさとブロックしておけば良かったと福良は思った。

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