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無理ゲーみたいな異世界ですけど、壇ノ浦流弓術でどうにかなりますか? ~即死チート外伝~  作者: 藤孝剛志


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45話 極楽天福良21

 福良は、スマートフォン内にあるチュートリアル、説明、解説を次々に読んでいった。意図的に導線が削除されているデータにはシャノンを経由してアクセスする。

 かなりの時間、集中して調べ続けたが現状を説明するような情報は得られなかった。それらは最初から存在していないらしい。とはいえ、福良たちを取り巻くシステムや能力についての基本的な事柄についてはおおよそ把握できた。取り立てて有利になるといった情報はなかったが、他にできることもなかったし無駄ではなかっただろう。

 気づけば、朝になっていた。スマートフォンを見ているうちに眠ってしまったらしい。

 スマートフォンで時間を確認すると午前八時頃だった。時刻表記は元の世界のままだが、この世界も1日が24時間相当で、昼夜の対応にも齟齬がないため混乱はない。

 眠りが深かったのか夜更かしをした感覚はなかった。よく眠れたのか調子が良いぐらいだ。

 福良は荷物をまとめ、集会所を出て、そのまま街の門へと向かった。

 街の中にだけは教会による支配が及んでおり秩序がもたらされている。街を出てすぐも多少は大丈夫だろう。危険なのは街から少し離れたところ、すぐには街に戻れない距離からだ。

 ここから森までは荒野だ。ところどころに掘っ立て小屋の集落があるが、それらはならず者の住処であって安全ではない。女が一人、のこのこと歩いていれば確実に目を付けられるだろう。彼らは魔界で魔物と戦うよりも、油断したり弱ったりしている人間を襲う方が簡単だと思っている。そういった者を見つけだすことに余念がないのだ。

 ではどうするか。福良の結論は単純だった。森まで一気に駆け抜ければいい。

 福良は屈伸し、足を伸ばし、体調を確認する。どこにも問題はなさそうだった。

 とりあえずの目標地点を見る。荒野の先には森があり、道の始まる地点には入り口を示すポールが立てられているのだが、さすがにここからではよくわからなかった。

 ポールは細いため視認しづらいし、荒野には隆起も集落もあるためだ。

 とはいえ、昨日街へやってきた道のりを考えればおおよその位置はわかるし、とりあえずはどこでもいいので森に入ってしまえばいいだろう。HPがあるため、しばらくは瘴気に耐えることができるからだ。


「2キロメートルぐらいでしょうか」


 福良は屈み込み、クラウチングスタートの姿勢を取った。スターティングブロックはないが、福良にはそれを代替するものがある。力場を生み出せるブーツだ。

 福良は、靴の中にあるスイッチを指で操作した。

 右足を踏み込み、反発で前へと投げ出される。一瞬身体が浮き、角度を間違えたことを悟った。上空へ飛んでしまうと制御が難しくなる。できるだけ低角度で、力は前方への推進力に変えねばならない。

 よろけながら着地し、福良は身体を前へと倒した。そのままでは倒れ込んでしまうほどの前傾姿勢になり、左足の力場を発生させる。靴の機能は片足ずつ発動させることが可能なのだ。

 最初の勢いに追加することでさらに加速。今度は身体が浮き上がることなく前へと進むことができた。

 靴には発動待機時間があり、およそ五秒。発動可能になった右足で踏み込みさらに加速した。人の身ではありえない速度に足が軋み身体がぶれる。だが、壇ノ浦流の修行者にとっては許容範囲だった。壇ノ浦流では様々な状況に即時に慣れることを要求する。福良は、この状況にも当たり前のように慣れつつあるのだ。


「と、走ることに夢中だといけませんね」


 常人ではありえない速度で走れているし追いつかれることはないだろうが、遠距離からなら十分に捕捉できるだろう。福良は周囲の気配を探った。

 集落からならず者たちが出てきていた。

 大半は困惑していた。何がやってきているのか、理解できていないのだろう。だが、理解できていなかろうと、とりあえず行動に移るものはいる。

 何かが飛んできた。

 重りが両端についた紐、ボーラだ。

 福良は進行方向を変えて避けた。そして、背後から足をめがけて飛んできたボーラを避けるべく跳んだ。

 攻撃は見えないところからやってくるのが当たり前であり、常に警戒すべしというのが壇ノ浦流の教えだ。背後の気配を察知して避ける練習は重点的にやっており、福良の得意とするところだった。

 跳んでしまえば着地するまで攻撃を避けようがなくなる。だが、今の福良には対応策があった。跳んだ勢いで回転し、足を斜め上空へと向ける。力場を発生させることで着地のタイミングを変えられるのだ。

 勢いよく下降すると、次のボーラは福良の上空を飛んでいった。

 強制的に着地した福良は前転して立ち上がり、そのままの勢いで走り続ける。どんな姿勢からでも次の行動へと移れるのは壇ノ浦流の体術が故だ。

 森が近づいてきて、入り口のポールがはっきり見えてきた。

 あと少し。安心しかけたところで、森から何者かが出てくるのが見えた。このまま入り口へと向かえば鉢合わせする。面倒を避けるため、福良は進行方向を変えた。

 福良を発見したのか、現れた集団が何やら騒いでいる。そちらへ目をやると九法宮学園の制服を着た者がいるようだった。もしかすれば話のできる相手かもしれないが、現地人もいるようなのでどういった集団なのかがわからない。やはり面倒は避けるべきだろうと思い、福良はそのまま森へと駆けた。

 森の中に入り、日が陰る。瘴気に満ちているということだが、福良には感じ取ることができない。樹木が立ち並ぶ森の中をこのまま走り続けることはできず、福良は急停止した。

 木々の間を抜けて少し進み、ブーツの力でジャンプして頭上の枝に掴まった。そのまま身体を引き上げて、枝葉に隠れる。ブーツの力を使わずにジャンプしてから片足ずつ力場を発生させることにより、福良は三段ジャンプを行うことができるのだ。

 ポケットから小石を取り出し、いつでも投げられる体勢で待機する。ならず者たちが追ってくるかもしれないので念の為だ。


「おーい! お嬢、俺です! 二宮諒太です!」


 すると、聞いたことがあるような声が聞こえてきた。

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