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春を待つ

作者: 村山白

処女作です。自分の創作意欲をそのままさらけ出した感じなので文章が拙いですがお許しください。

ある日、突如として海が凍り、木々が枯れていき、花は命を失いその美しさを捨てた。


氷河期が来たのだ。そして政府は、金持ち共を暖かい家に住まわせ、私たちを見捨てた。


寒い。ただただ寒い。心まで凍っているようだ。


政府に住む家を追い出された私たち貧乏人は、3つのうちから生き方を選ばされた。ひとつは、狩りをして生きること、ひとつは、脅し、殺して奪い生きること、最後は、無抵抗のまま死ぬこと。貧乏人の世界は、まさしく弱肉強食の社会となった。


私は、人を殺すような勇気も無いから狩りをして生きた。


そんな社会が嫌だった。


でも、無抵抗のままじゃこの世界を生きれない。だから私は強い者から盗んだ。盗む度にバレ、殴られ、殺されかけもした。だが、こんな警察すらも機能停止している社会じゃ、盗もうが殺そうが罪に問われなかった。


その日は雪が降っていた。白い粉雪が肌に染みて骨まで凍りそうだった。私はその日狩り(といっても地球が凍る際に人間以外の動物はほとんど死に、肉が沢山あるような動物なぞほとんどいなかったが)をしていた。


その日はなんの収穫も得ず自分の寝床まで帰っていたところだった。寝床の前まで着くと、違和感に気づいた。


「中に誰かいる。」


私は拭い切れない不信感とともに寝床...と言っても少量の金とカビてボロボロになった布団だけがある洞窟に入った。


私の目には、痩せこけた男が私の金を奪い去ろうとしている姿が見えた。


私はその男の首にたまに手に入る肉を切る時に使うナイフを当てた。


男の首に氷よりも冷たい鉄の感触がヒヤリと来る。


「金を置いて行け。」


男は振り向かなかった。ただ一言、「妻がいるんだ。」と言った。


どうやら悪者では無さそうだし金だけ置いて帰らせてもいいかな...そう思っていた矢先だった。


ドン


私の脇腹に重い感触がのしかかった。そして何やら赤い液体が垂れてきた。


男は銃を持っていた。


「すまない...だが俺も生きるために必死なんだ。」


そう言うと男は逃げるように洞窟の外に出ようとした。

私は朦朧としながらもできる限りの力で大きく足を踏み込み、男の首にナイフを当て、そして斬った。男の首から赤色の鉄が流れ出してきた。


男は倒れた。悲しい目をしていた。


「私だって...生きるために必死だよ。」


幸い銃弾はかすっただけらしく、私は生き延びた。さっきまで男だったものは、まだらのかたまりとなっていた。


人を殺した。この経験は私に2つのことを教えてくれた。


ひとつは、「躊躇いも無く人を殺せる人間が強いこと」。


もうひとつは、「殺せば盗みも楽になること」。


それから私はたくさん殺した。男も女も老人も子供も、自分自身さえも。生きるために人を殺した。10の指で数え切れないくらい殺すと、もうなんの躊躇も無く首をナイフで切り落とせるようになった。


雪が降っていた。その日もまた殺した。大きく寝そべるまだらのかたまりと粉雪の間に、私は春を見たのだった。

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