往年の廃列車 4
暗くなったので、アトリエに2人は戻りモナは作業場、ダリアは調理場へと向かった。
「師匠の意地悪。今まで少ししか手伝わせてくれなかったのにいきなり難しい彩色なんて...」
そんな愚痴をいいながらもながらも手早く料理を完成させ奥で作業しているモナを呼んだ。
「師匠ごはんできましたよ」
「ありがと。今行く」
出来立てのラザニアを食べながらモナに尋ねた。
「師匠、なんで今日いきなり私に色の宿題を出したんですか?」
「不満か?」
「いや、そういうわけじゃないけど。難しいかなぁ...なんて」
「俺はできると思っているけどな」
「え」
「毎回俺の模写もしているし、感性もいい。経験値が溜まってきたからから、そろそろ一人前になる準備をしてもいいかなと思っていたが早すぎたか?」
突然の誉め言葉に思考は停止するものの心うちでは沸々と感情がこみ上げてくる。
思考が追いつくとやっと言葉が続いた。
「師匠、私必ずスペランサ号の色を見つけてみます」
「頼んだ」
自信なく不安に駆られていた少女の姿はそこにはもうなく、自身に満ち溢れた絵師が一人いた。
次の日の朝ダリアはさっそくスペランサ号の元へと駆け付けた。
そして自前のパレットを使い今の錆びた色を作り出そうとしていた。
ダリアの作戦は今の色にどうやったらなるのかがわかれば元々の色が作れるだろうというものであった。
モナが製図からの制作を、ダリアが色の制作をしているところにクレマンは現れた。
「お二人とも朝早くからご苦労様です」
「仕事ですのでこれくらい」
「進み具合としてはどうですかね」
「1週間後には必ず間に合いますよ。ただそれだと呪いの進行次第で手遅れになるかもしれません。」
「だから日程を少し早めたいのですが、トップハットさんは今日もいらっしゃいますかね」
「休みではないのでいますよ」
「わかりました。後ほど伺いたいのですが」
「承知しました。社長へのアポは私の方でとっておきます」
クレマンはモナとの話を終えると今度はダリアの元へ向かった。
「お弟子さんは今日は何をしているのですかな」
「色を作っているのです」
「ほぅ、色を。でもその錆びたような色だとコイツが走っていた時とは随分程遠いのですが」
「今の色を出すことができれば、昔も知れると思ったんですけど難しいですね」
「クレマンさん、この列車が走っていた頃どんな色だったか教えてくれませんか?」
「いいいですよ、コイツのことならなんでもお答えします」
そういうとクレマンは廃列車がまだ客を乗せて走っていた頃。およそ20年ほど前のころについて語った。