表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
and Start  作者: 時雨太郎
4/10

往年の廃列車 3

クレマンが落ち着いたことを確認するとモナはこれからどうすればいいのか順番に説明した。

「呪われたものについた魂にいつまでも忘れない意を形で示して浄化するというものが我々解絵師による解呪方法です。」

「その中で様々な条件、制約があるのですが今回はその中で2つ欠けているためこのままでは解呪ができないのです。」

「なるほどそういうことでしたか。いきなり取り乱してお恥ずかしい」

「いえ、大丈夫です。それだけクレマンさんがスペランサ号にち着いたことを確認するとモナはこれからどうすればいいのか順番に説明した。

「呪われたものについた魂にいつまでも忘れない意を形で示して浄化するというものが我々解絵師による解呪方法です。」

「その中で様々な条件、制約があるのですが今回はその中で2つ欠けているためこのままでは解呪ができないのです。」

「なるほどそういうことでしたか。いきなり取り乱してお恥ずかしい」

「いえ、大丈夫です。それだけクレマンさんがスペランサ号に揉捏を持っている証拠でもあるので」

「ではまず1つ『最盛期の状態』のほう片付けてしまいましょう。列車と同じ型のものは他にありませんか」

「コイツが最後の一台なので他はありません。他はみんな最新のディーゼル式になっています。」

「では交換できる部品は?」

「ないです。」

「なるべく運転開始時の状態にしたいのですが」

「残念ながら、何一つ残っていません。だから今回廃棄が決まって...」

条件の一つも満たせないであろうことを悟ったクレマンは意気消沈し言葉が尻すぼみに小さくなった。


「では、設計図はありますか」

「さすがにそれはどこかに保存してありますが、それだけで絵は描けるんですか?」

「描いてみせます」

クレマンは倉庫のさらに奥にある引き出しから100枚以上に及ぶ設計図の束を取り出した。

「これで全部です」

「ありがとうござます。必ず解呪してみせます」

クレマンに礼を言うとモナはさっそく紙の束を紐解き一枚ずつ並べだした。そしてダリアを近くに呼びもう一つの条件『最も快適な思い出』について打ち合わせた。

「じゃあダリアそっちは頼むぞ」

「任せてください師匠!師匠は無理しすぎないでくださいね」

「この量なら3日くらいで片付く」


モナは作業台一面に図面の1/3を広げると描き出した。

視点は正面やや左からの立体図

しかし、図面のどこにもその構図の図面は載っていない。すべてモナの頭の中で構築されているのである。

平面図と断面図から構造を理解する。

次に理解したものをパーツ単位まで分解する。

そして分解したパーツを寸法など変えつつ組み上げ再構築する。

モナの頭の中では常人では理解できないようなスピードでそれらが行われている。

例えるなら、普通の人が1000ピースのパズルを組むのに対してモナは1000ピース全てに番号が振られてどこに何を当てはめればいいのか一瞬でわかるようなものである。


日が完全に沈み、辺りに闇が解け始めた頃

ふ、息を漏らしてモナは燭台の明かりを頼りに客車の立体図を描き上げた。

モナの気のゆるみを感じて、後ろで控えていたダリアが駆け寄った

「師匠完成ですか?」

「今日の分はな。あとは運転車を描くだけだ」

「さすが師匠筆の速さはマイロン1番ですね」

「修行すればお前だってこれくらいできる」

モナの悪い癖過度な謙遜が始まった。これはまた長くなると思いダリアが今日の進捗について報告した。

「やっぱり師匠が言うようにもう走らせるのは無理だそうです。他の列車でけん引することも所長に提案したんですけど呪いが映るのが怖いからできないと...」


モナの表情が少しばかり曇った

「走ることができたら簡単だったんだが。それで、もう一つの案は確約出来たんだろうな?」

「はいもちろん、ばっちりに!」

「日付は?」

「一週間後にやるみたいです」

「また長いな...」

更にモナの表情が曇る

呪いは日を増すごとに強くなってしまうため早急な対応が求められるからである。

「分かった。下書きが完成したら俺から所長に掛け合ってみる。」

「ダリアは明日以降宿題だ」

「え!?」

今回出番がないと思っていたダリアが不意を突かれる。

「課題は本番で書く時の絵の具を調合すること」

「えぇぇぇぇ!!」

ダリアは虚を突かれた挙句、難題を押し付けられたので嘗てない素っ頓狂な声を出した。

「もちろん期限はあと二日な」

しかも期限付き...

先程まで曇っていたモナの表情よりもダリアの方がどんよりとする。


なぜここまでダリアが拒むのか。それは、既に列車は錆びて壊れてしまっているため『最盛期の状態』の色がわからないからである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ