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第84話 親友と姉妹

77話投稿するノ忘れてました。すいやせん。

挿絵(By みてみん)


 リュギア学園の帝王、ロキ=フォン=レグラムとアシウス=ベェンドが合流し、レイとサリア=フローレンの戦闘が早くも起きている北西や西と真逆の南東方面では、ただ1人。今まで何もせずに時間を過ごした者が今もまだ動かずに佇んでいた。


 建物間の路地にある何が入っているのかも分からない少し大きめな木箱。それを椅子代わりに腰を掛け、目まで瞑っていた。


 第1次の時までもそうしていたから、近くを通ったことのある他の代表者にも気づかれることはなかった。


 そのレイとは違う浮き方をしているのが、カイル=フォン=レクシア。4大貴族、レクシア家の嫡男であり、多くの財政人に将来を期待されている青年だ。


 カイルはソルセルリー学園の代表者の1人だというのにこの学園対抗戦に興味はなく、ただこの最終種目である『領域乱戦』にだけ1つの目的があった。


 それが開始できる機会をまだかまだかと伺い、衝動から動いてしまいそうになる身体を必死に鎮める。


「まだだ……。まだか……。まだだ……。まだなのか……。俺の心は、命は、存在は……貴女の為だけに」


 ―――――――――


 4:29:28。


 シンは花火やらなんやらで西方面は危険が沢山あると考え、東方面を回って今いる北から南を目指そうと考えた。


 マキに早く合流する目標と願望から、自然と足が速くなる。温存しておきたい魔力も身体強化に費やし、時短のため建物の上を跳んで行く。


 もう真東に着くという頃、強大な気配に襲われた。その瞬間最後に力いっぱい前方に跳躍し、100メートル程離れた位置に着地した。


「これは……絶対そうだ」


 同じ頃、マキまでもが気配に気づいた。

「確定ね」


 今まで南を目指していた足を止め、来た道を戻る。シンは、止まった足を再開させ、また走る。


 そして2つの影が対峙した。


 ——真姫だ。

 ——真だ。


 余計な思考は一切浮き出ず、ただその感覚だけが舞い上がった。


「シン、ひとまず合流成功に喜びたいけどそうもいかなさそう。ごめんね? 2人いる」

「ん? どゆ?」


 マキはまるでいつものように道場で剣道を行うかの如く端麗な所作で抜剣し、シンの先にいる2人組に切っ先を向けた。


「ついでにこの世界で手に入れた新しい力、とくとご覧あれ? シンくん。————桜花一刀流。弐ノまい かすみ花筏はないかだ


 シンの眼はいつの間にかマキの切っ先に惹き込まれ、まるでファンのように無心でただ追っていた。


 なのに、その視界から剣だけではなくマキまでもが瞬にして消え、右横の風を斬り裂いて突進した。


 小さく荒れ狂う轟音と暴風に上体を反らされるが、足の力を振り絞って耐える。


 マキは心眼に映るその敵を、隠れる障害にしている屋舎ごと剣圧から吹き出る桜の花びらの様な衝撃で吹き飛ばした。


 煙すらも吹き飛ばされた空き地に残ったのは、魔力障壁を創って防御した1人の髪の長い影だった。


「敵がいた……!? いやてか、障壁があるのにそのまま吹き飛ばされるわけないっ」

 シンは急いで戦闘脳に切り替え探査魔法でもう1人を探る。するとマキの斜め上から首を討ち取ろうと狙っているのが分かった。


「影纏い。漆ノ型 迅一閃!」

「……!?」


 ジャストタイミングの相打ちで遮られ、敵は障壁を張っている味方の元へ戻る。


「ん、助かったよ」

「あぁ……って! 桜花一刀流!?」


 真が驚いたのは、マキが『桜花一刀流』と述べたから。それは、日本でマキの家が統べていた剣道の名門流派の名と同じだったから。


 マキがその日本の業をこの異世界で使ったからだった。


「あー……なんかわかんないけど、この流派に魔力乗せるとあんなん出来たんだよ」

「……マキの超技ってことね」


 理解が出来ないことを一瞬で理解し、と元の世界でも強かったマキだから。という無理やりな方法で自分を納得させた。


「……髪の長い2人組」

 突如今この状況で分かる敵の情報を囁いた。急にどうしたのかと尋ねると、マキが苦そうな顔を見せて告白した。


「ローレイ先輩に言われたんだ。髪の長い2人組に会ったら用心しなさい。貴女でも勝てるか分からないから。恐らくその2人は、ディアライト女学園のメリア=ラリアスと、ミレア=ラリアスの通称『弐凛姉妹』だから……って。」


「弐凛姉妹……って、あれ? なんで顔が……っ!?」


 急に今までスノーノイズだった姿が素顔が見えるようになった。


 これまでは想像でも現実と遜色ない視界を創造出来ていたからに、戻っていることに気づくのが数泊遅れた。


 その嘆きを遮るように、何度か耳にした声が響いた。


『急にごめんね。多分今、何人かノイズが解かれた子がいると思うの。それは、互いに正体が分かってる時にだけ起きる現象よ。今設定したから動揺するだろうけど、頑張ってね。作戦が崩れることも本番では当たり前よ』


 その放送を聞き終わると、マキは考える素振りを見せて顔を上げた。

「私はマキ=ハナミヤ。こっちはシン=サクライ」


 え……なんで言うんだ。ほんの少し声が漏れたところで、敵の姿が露わになった。


 1人は紫艶の長髪に碧色みどりいろの両眼。とてもメイタールに似ている容姿をした女性だった。違うところを上げるなら、碧と紫のオッドアイじゃない点だけだ。

 杖を持っているから、障壁を張っていたのがこっちだと推測する。


 もう1人は全く同じシルエットに、金髪という違いを入れた赤い獰猛な眼をしている二刀流の剣士だ。


「たしか、紫の髪をしたのがメリア=ラリアス。金髪がミレア=ラリアスだったはず」


 シンが2人の存在を正確に視認した時、ミレアが合図無く襲い掛かってきた。

「はぁッ!」

「陸ノしん 八重桜!」


 ミレアが射程距離内に入ってくるよりも早く、マキが一歩前に歩み出て、八枚重ねの厳みのある剣戟を同時に振って迎撃した。


 ミレアは自分の力よりも強い反発を想定してたかのように後方へ流し、最速で次の攻撃を始める。二刀流の利点である手数の多さ。


 そんな利にもマキは平然とした顔で型も使わず同等以上に渡り合っていた。平然とした顔でやり合っていたのは、ミレアも同じだった。


 シンはマキの邪魔にならないよう、且つ死角から攻撃できるよう、敵の視界から自分がマキで隠れるタイミングで漆ノ型を使って飛び、迅一閃・飛沫しぶきで敵の不意を突く支援しようとした。


 するとミレアまで到達するよりも前に、何かにぶつかった。

「……障壁っ!?」


 妹であるミレアの邪魔をさせないよう、メリアが障壁を遠隔で作ったのが原因だった。シンはその援護がずっと面倒になると考え先に魔法特化そうなメリアを狙った。


 大抵の魔導士は、近接戦が苦手だ。それか、近接魔法に特化した者に分かれる。


 遠距離の方が得意な中で、レイのようなそれを克服する者は本当にごく僅かの者しか出来ていないのが現状だ。


「弐ノ型 穿輪せんりん

 既に避けることは不可能。そんな間合いだから、シンはこの一撃が入ることを確信した。


 すると、当たる直前。白金に輝く一筋の直線を持って極細の、もはや爪楊枝のような剣身が閃光の速さで日影を弾いた。


 細い剣からは想像できない強力ごうりきに少しの間合いを取られ、シンは攻めあぐねた。そして自分の刃の邪魔をした存在を理解した。


「なんだ、仕込み杖……か。近接戦はザラだと思った俺が甘かった」

「戦場に於いて、早計が一番の敗因よ」

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