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第66話 幼馴染みとして負けたくない

挿絵(By みてみん)


レイに……当たる!


 冷や汗をかく時間もなく開いた瞳孔がレイを真っ直ぐ見つめる。


 レイが刀を脳ではなく身体が感じた時、レイはゆっくりと瞬き(・・)をした。

 まるでそれがスイッチとなるかのように、日影は蛇みたいにぐにゃんと曲がった。


 レイを避けるように。


 刀だけではなく、俺の身体……闇のオーラすらも曲芸を披露した。


 結果として奇襲はレイではなく奥にある数々の木に衝突する。


「……助かった。でも……レイ?」


 今のはなんだったんだ。疑問を唱える前にそれよりも大事だったレイの安否確認を優先する。

 かく言うそのレイは金色こんじきの髪は僅かながらも光を発し、天使かと錯覚する気力を溢れさせていた。


「……ん、レイ?」

 俺の姿がレイにそうしたように、レイのその姿も俺に安心を与える前に疑問だけを与えた。


「ぇ、なに? これ……」


 素っ頓狂な声を出して助けを求めてくるから、レイも自身の状況を理解わかっていない。


「えっと……」

 俺のこれがなんなのか全くわかっていないので返答に詰まる。何度自問自答を繰り返しても、所詮答えるのは自分。有意義な答えは何も浮かばない。


「分かってるのは、私が今。猛烈に力が溢れてることだけかな?」

 自慢気に胸を張ってドヤる。


「──いや、もう1つあるよ。俺も同じだってことも」


 こうなれば、2人の行動は決まった。

 俺の今の目的は、ディザイアへの復讐。レイの目的は分からない。


 でも今俺はこの力を使いたくて。試したくて仕方がない。新たな力。ディザイアと拮抗出来るかもしれない可能性を。


 匂いで分かる。レイからも、俺と同じ匂いがする。今すぐにこれを試したくて仕方がないと思っている。


 視線が交差する。信じているからこそ、互いに本気でぶつかれる。戦闘欲をもっぱらに出し、俺は刀を振い続け、レイは引き金に力を何度も込める。


 レイの視えない弾丸。今までとは全く性質の違う攻撃ものだ。構えた刀にそれが当たり、分かった。

 光の魔力でも、雷の魔力でも、ただ純粋な魔力でもない。無論他の属性の魔力ですらない。


 違和感に苛まれ出る不満を刀に乗せ、闇を纏わせ形状をまるで大きな怪物の手にする。

 振り抜き、レイの周囲ごと俺の覇気声と爆音と共に壊滅させる。


 それでも、レイのいる場だけは、不自然に無傷を誇った。小さな塔を気取ったように、堂々と居座っていた。


 やっべ、とりあえず逃げとこ。


 時々忘れそうになるが、本来の目的は鬼ごっこ。不用意に近づく訳にはいかないだろう。

 さっきの引き寄せられたのは別だ。俺の意思じゃないんだから。


 足を1歩後ろに引き、力を入れた時、突然目の前がぐらぐらと立ちくらみのように景色が複数個の螺旋を生み出した。

 立ちくらみなんてものの比ではないくらいの気持ち悪さが伴う。


 目を瞑っても、片手で頭を支えても、一向に良くなる傾向はない。


「もう、そんな簡単に逃がすわけないじゃん。せっかくのチャンスなのに」


 レイ……犯人は、お前かよ!


 どうやったのかは全く分からない。まぁ、俺と同じでこの状態になったことでできるようになったと考えれば納得出来る。


「……負けるかよッ!」


 ―――――――――


 この力の謎については2人とも思考を放棄し、ただ俺はレイの願いをなんでも聞くというのが嫌で逃げ続けた。レイは、俺をからかう材料を手に入れるために頑張った。


 鬼ごっこでそこまでヒートアップするつもりはなかったが、してしまったものは仕方がない。


 最終的にレイの仕掛けた時限式アラームが鳴って終わった。

 最早鬼ごっこと言ってもいいのか分からなくなった鬼ごっこの勝敗を制したのは。


 レイだった。

 俺の敗因は、あと少しのところで暴走のような状態が切れたこと。


 そこを思い切り捕まえられて(吹き飛ばされて)しまった。

「はあーぁ……なんであそこで切れちゃったのかなぁ」


 大事な場面での悪い事態に、誰もいない異創空間で頭を抱える。


「よしっ、だから、シンには私の言うこと聞いてもらうからね?」


 にやにやとしているレイの顔が見ずとも頭にちらついて、無性に腹が立つ。


「はいはい分かった。分かったよ……」


 もう既にレイから逃れられないことは過去の経験からも予測がついてしまう。だから突っかかってもただただ労力の無駄な消費になるだけだと思い、潔く認めた。


「ただ、優しいのにしてくれよ」

 反抗はしないで、レイの情にさり気なく訴えかける。地味な思考誘導の成功に賭けることにした。


「うん、いいよ? 今気分がいいから、シンの言うことも聞いてあげる」

 さっきのルンルンした様子から一転、本当に気分が良さそうに俺の断られるという予想を裏切った。

 ただ、その原因が多分だけど俺を負かしたことなんだよな……。


 喜んでいい場面、いや。喜ぶべき場面なのは間違いない。だが単にレイがむかつくという理由1つだけで、喜ぶどころかどんよりした。


「んで、願い事は決めたの?」

「うん、もちろんだけど決めてないよ?」


 ここでは予想を裏切らないレイだ。

「ただシンの弱み握りたかっただけだから」


 さも当然のように邪なことを無邪気に発する。これも俺達の間では普段のことだから、一応当然とも取れる。この場では俺もいつものように流せず、項垂うなだれてしまった。


 それより、もう異創空間にいる意味はない。そして、ここにいるとレイが何か仕掛けてくる可能性だってある。……ないと信じたいが出来ない。だから。


「なぁ、もうここ出よーよ」

「あ、そーだね」


 そう言って設置していた異創空間を創った魔道具を手に持ち、魔力を込めて言葉を発し始める。

異創空間削除リセット


 呟いた瞬間、景色が数多もの青白く発光する破片に上方から分かれていき、いつの間にかさっきあった破片は消え、また新たな破片が生み出されと、破壊の工程を始めた。


 消えた景色の奥にあるのは『黒』。何物でもない黒だった。無でもない。闇でもない。黒としか形容のしようのないものだった。


 俺達の身体も次第に複数の見たこともない文字列の糸に解けていき、俺達を包むように渦巻いて破片と同じように消えていく。


 コードの全てが消えたと同時に、自身の意識も消える。消えたというより、一瞬飛んだ。という表現の方があっている気がする。


 視界が冴えると、2人は現実のレフレス公園の広場に立っていた。急な失神に頭が耐えられず、少しの間茫然をする。


「……ふぅ」

 無意識に休もうと、近くにあったベンチ……偶然にも俺達がさっき使った無人のベンチに腰を掛けた。それを見て、レイも隣に座ってきた。


「休ませてください」

 いくらなんでも、本気を出しすぎた。あの暴走状態も半端ない体力使うし。この世界でこんなに疲れたの初めてだ。


「いいだろう」

 上から目線だがレイだって俺と同じくらい疲れてる。基礎体力は俺の方が多いんだからきっとレイの方が今辛いだろう。なのに余裕そうな振りをしている。


 何こんなトコで見栄張ってんだあほ……。


 しょうがない。レイのためにも、長めに休憩するとするか。


 決して他の場所ところに行きたくないわけじゃない。

 決して。

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