第43話 俺、生きてる? 何も、見えない
シンがディザイアに最後の一撃を撃ち込まれた後、私達はその現実を受け入れたくなくて出せる最大の声を出して必死に現実逃避をした。
そうしてみんなが叫んでいる間に、ディザイアはどこかに消えていた。
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アストライルに開闢の刻を当てた後、ジャンプで島から脱出した。
「もう、今回のやつで見つけられればいいけど……」
私は、どうしても探さなければいけない。見つけなければいけない。
探し始めて恐らくもう、1000年ほどになるか。
ほんとに、どこ行っちゃったんだろうな。
でも、さっき気になることが出来た。
「あいつ、何者だろ?」
アストライルのことだ。
確か名前は……サクライ シンだっけ? なんか、あいつと重なっちゃったな。
「あと、私の魔法が消えた時。あの時、あいつの気配が……したような?」
結局、あれは誰がやったんだろうな。
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あいつが、シンにとどめを刺した。
シンが……死ぬ……?
……ん? あれ?
……あ、なるほど、そういうことか。
ってことは、シンは生きてる可能性が高い。
みんなが泣き崩れている中、ただ1人俺だけはシンに近づいた。あ、いや、カイルだけは茫然としてるな。
「お……レイ」
シンに近づき、確証が持てたので、まずはレイに伝えようと話しかける。
だが、レイは泣いたままで返事はない。
お、目はこっちを向いてる。なら話は聞けるってことかな。
「シンは……」
『シンは生きてる』、そう言おうとしたところ、『シン』ってワードに反応したのか更に泣いてしまった。
……困ったな。
こりゃ実際に生きてるシンを見せるしかないか。
「でも、シンのこの傷だとすぐには無理そうだな。まぁ、普通こんな傷だったら回復に最低でも2週間はかかるけど、そこは流石ってとこか。このペースだと1時間か2時間で全回復するだろうし」
さて、まずはこの泣いてるの全員寝かせるか。
普通に魔法で寝かせようとするが、あることに気付く。
「あ、シンとセレス共振使ったのか……」
はぁ、とため息を吐きながらもⅯマジックの準備をする。
「共振使われるとその影響で魔法利きにくくなるんだよなぁ。基本デバフ系の魔法だとⅯマジックくらいしか効かないし……Ⅿマジック……とりあえず寝ろ」
全員、糸が切れたように眠りにつくカイルと女子陣。
全員を魔法で浮かし、宿に戻る。
シンはベッドに寝かし、他はリビングで寝かせる。
「あとはシンが起きるまで待つだけか。弐ノ型 永遠の炎」
ただ待つのも忍びないと思い、俺も回復の手助けをする。
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「ん……」
意識が戻った。
何も、見えない……やっぱり、死んだのか……。
あれ、視界が戻った? あ、なんだ。目を開けてなかっただけか。
そりゃ何も見えんわ。
「気、付いた?」
「マギアス?」
気が付いたかと声をかけられたがなんでマギアスがいるのか気になって身体を起こしたところ、自分がベッドにいることが分かった。
「俺、死ななかったの?」
「そのことなんだけど、あいついたじゃん。襲ってきたやつ」
「あぁ、ディザイアのこと?」
「ディザイアって言うのな」
まず自分が死ななかったことに驚き、マギアスはそのことについての何かを説明しようと、ディザイアの名前を聞いてくる。
それに対してディザイアの名前を出して、ディザイアと言うのを知るマギアス。
「うん、そう呼べって」
本名かどうかは分かんないけど。
(あいつ、シン達には『ディザイア』って名乗ってんのな)
「まあぶっちゃけると、あの最後の攻撃あったじゃん」
「あー開闢の刻だっけか」
確かそう言ってたはず。
「そうそう、結論から言うとあれ、回復技なんよ」
「……まじ?」
「まじ」
なんで俺を回復……?
「簡単に言えば傷を壊すって代物」
「なるほど……てか、俺らあいつに何一つ傷付けられなかったんだよな」
覚醒状態でもだよ。
「だよな。シンはディザイアが余力を残してるの気付いた?」
「あーかなり残してたよな」
どんだけ実力差あるんだよって思った。
せめてあいつを倒せる強さ手に入れなきゃな。
あいつとは俺がケリをつける。絶対に。
レイにもうあんな顔させないためにも。
「って、なんで回復技だって知ってるの?」
「え……そ、それは……あ、そうだ。もうみんな起きたかもだからリビング行こっか」
「え、あ、うん」
マギアスが開闢の刻は回復技だと知ってるのが、今頃になって気になり聞いたが、そろそろリビングに行こうと提案された。
なんかはぐらかされた気もするけど。でも、俺が生きてるのを知るのが遅れて無駄に心配させるのもいい気分はしないから行くのは賛成だ。
そういえば、マギアスがここまで運んでくれたのかな。大変だったろうに。後でちゃんとお礼言っとこう。
マギアスを先頭にリビングに降りる。
リビングには、マギアスが寝かしたみんなが起きて茫然としていた。
「シン」
みんなに話しかけようとした時、ひっそりとした声をかけられた。
「な、何?」
「みんなには、最後のあれが回復技ってことは内緒にしよう」
「え、なんで?」
開闢の刻のことはみんなには言わないと言うマギアス。俺は意図が分からなかったので聞き返した。
「死んだと思ってるシンが生きてただけで衝撃なのに更にそんな謎なこと言って混乱させない方がいいじゃん?」
「それは確かに……」
死にそうな体験はもう出来るだけしたくないな。
「それで、レイ達はどれくらいの状態なの?」
「あの調子だと数日動かないじゃない? シンがいなかったら」
「……」
俺を必要としてくれるのは嬉しいけど、俺のせいでそんな風にさせちゃったんだよな……。
「とりあえず、あいつらに無事ってとこ見せよ」
「ん、あ、そうだね」
少し急ぎながらリビングに降りる。
「……う……シ……ン」
あ、やばい重症だ。
「あの……皆さん?」
どう話しかけたらいいか分からず、敬語になってしまった。
「「……」」
あー……こりゃ俺だって気付いてないな。
「あの、おーい?」
「「……」」
……どうしよう。気付いてくれない。
じゃあ、存在感もっと出してみよっか。
「ふぅぅぅぅ」
少し集中しながら自分の周辺に魔力を集める。
ある程度の魔力操作が出来るなら、探査魔法なんて使わなくても少しくらいは魔力を感じることができる。
だから強めに魔力を出す。
と、その時みんなの顔が何かに気付いたようなものになる。
そしてゆっくりと俺の方を向く。
「えっと……気付いた?」
俺のその声で俺が生きてると完全に気付いた様子のみんな。
「「……」」
俺が生きてることに未だ混乱しているのか、返事はない。
「シン……?」
「そーだよ、シンだよ」
「シン……なんで? シンは死んだんじゃ……」
なんかしんしんうるさいな。
死んだシンってダジャレみたい。
まぁ、それから俺は生きてることにどうにか納得してもらい、その日は終わった。
わんわん泣きまくられて、んで『ほんとに生きてるの!?』ってもっかい心配されて、で、ちょっと怒られて。
……怖かったな。
もう思い出したくもない。でも、怖かったけどどこかみんなの雰囲気が暖かいところがあって不思議と心地よかったのもある。
しかし、そう思って安らかな気持ちになっていたのも起きるまで。
起きたすぐ後、なぜかマギアスに砂浜へと連れ出され、そこにはみんなもいた。
その連れ出されるとき、「覚悟した方がいい」と意味不な忠告を受けた。
……どゆこと?
そして、俺は共振武器を持ったマギアス以外のみんなに囲まれている。
「……え?」
どういうことかとマギアスに視線を向ける。
だが、マギアスはやれやれと言わんばかりに首を振るだけ。
「あの……どういう状況ですか? コレ」
マギアスに聞いても答えは返ってこないと思い、みんなに聞くことにした。
「昨日はシン君が生きてたことに安堵したんだけどね」
「冷静になってみたら心配させやがって! って怒りが湧いてきたんだよ」
理不尽! それ全く冷静じゃないと思うよ!
「私にとって弟的存在のシン君がみんなに心配させたんだから、ちょっとお仕置きしてそんなこともうしないようにさせなきゃだし」
リア先輩、俺を弟ポジションに置いてたの?
「私も、同じです」
「俺も」
ふむ、つまりはマギアス以外に俺がリンチされるってことか?
おーけーおーけー。分かったよ。
……って! それおかしくね!? 俺悪くないじゃん!
文句ならディザイアに言えよ!
確かに心配かけたのは悪いと思ってるけどさ!
「でも、全く抵抗しないシンを殺るのも悪いかなって思ってから……はい、これ」
んん? そのやるって、殺るじゃないよな? 戦るだよね?
まぁどっちにしろ、共振武器があるのはありがたい。
模擬戦の一対多だと思えばいい。
「水神纏い漆ノ型 螺旋水!」
いきなり突っ込んでくる。シェル先輩最初、毎回螺旋水だな。
「参ノ型 獄撥!」
前と変わらず相殺すると思ったその時、圧倒的に俺が打ち勝ち、シェル先輩の方が吹っ飛んだ。
「うぇ!?」
思わず奇声をあげてしまった。
なぜ? いつも同じくらいなのに。
「閃光纏い捌ノ型 八咫烏」
「影纏い捌ノ型 八咫烏」
レイのとは相殺した。
なんで? 先輩が弱くなっちゃったの?
「シン君……?」
「どうしたんですか?」
「シンとレイ……めっちゃ強くなってない?」
「え、そう?」
「格段に力上がってんぞー」
マギアスもそう思うのか。
「なんで…………あ」
心当たりがある様子のマギアス。
「シン、ディザイアに最初攻撃できた時のこと詳しく教えてくれない?」
「え? あ、うん」
俺はディザイアに睨まれ、すると突然そうなったことを話す。
「やっぱり……」
「どういうこと?」
分かったんなら教えてくれよ。
「もしあいつの言ってることが真実なら、あいつの深淵級スキルは『破壊属性』。その力を使って2人の人に危害を加えてはいけないって考えを壊したんだろ。そのストップが消えたから、2人は本来の実力を出せるようになったんだろうよ」
だからあの時……。
でも、人を傷付けるのに遠慮がなくなったってのはなんかいい気分しないな。
「そういえば、その深淵級スキルって、他のと何が違うの?」
今まで触れてこなかったから、特に気にならなかった。
「あぁ、それは」




