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第41話 俺が一番怖いもの

挿絵(By みてみん)


「肆ノ型 戯礫砕ぎれきさい

 地面が破砕し、その礫が戯れるように荒れ狂う。


 こいつ相手なら、俺でも……!


「漆ノ型 迅一閃・飛沫しぶき

 役に立たない分、ここではサポートしようと思い、礫は俺が引き受ける。


「参ノ型 万雷の圧」

 レイも同じ考えのようで、礫を次々に破壊していく。


「紅蓮纏い壱ノ型 緋天!」

「水神纏い伍ノ型 篠突く雨!」

「閃光纏い漆ノ型 蒼穹!」

「嵐纏い弐ノ型 太刀風・牙!」


 マギアスが攻め、シェル先輩が追い打ちし、リア先輩が貫き、セレスが裂く。


「——破壊纏い捌ノ型 破邪顕正はじゃけんしょう

 そいつは全く動じず、その技1つしか行動しなかった。


「閃光纏い肆ノ型 月虹げっこう!!」

 いつの間にか戻ってきていた、カイルが防御技を使い、被害を少なくしようとしてくれる。


 だがそれも、そんなもの元からなかったかのように突破され、結果、全員が血まみれにされる。


「みんな……大丈夫……?」

「俺は……大丈夫……です……」


 先輩が今にも絶えそうな声でみんなのことを気に掛け、俺がそれに応える。


 みんなの返事がない……?


 不思議に思ってみんなの方を向いてみると、全員倒れていた。


 魔力をまだ感じるから、誰も死んでいないはずだ。ひとまずは安心だ。


「破壊纏い……?」

 シェル先輩が不思議そうに呟く。


 実はこの時、破壊纏いなんてものはこいつ以外、誰も認識していなかったのだ。纏いの種類は全て公開されていて、シェル先輩なんて、全て記憶しているにもかかわらず。


 全て知っているはずなのに知らないものがあったのだから、驚くのは当然と言えば当然だ。


「破壊纏いが気になるか?」

「「!?」」


 その時が、そいつが初めて俺達とまともに喋った瞬間だった。


「えぇ……」

 完全に敵を見る目をしていながらも、答える先輩。


「じゃあ特別に教えてやるよ」

 随分と男勝りな喋り方だな。


「破壊属性は私の深淵級スキル。私にしか使えない」

 ……し、深淵級!? って、今までで英雄にしか発現の記録がない、あのッ!?


 そいつの言った事実に動揺していると、そいつは行動を始めた。


「ハァ!」

 急にそいつが軽く喝を入れると、その掛け声だけでここら一帯が大破する。


 ほんとに急だな!


 それに巻き込まれる俺達。


「カハッ!!」

 落ちた衝撃で思わず声をあげてしまう。軽い脳震盪起きた……。


 少し頭は痛いが、咄嗟に身体強化して助かった。


 何気に今、この世界に来て初めて血を流してる。


 つか俺……こんな状況で余裕だな……。


「……お前とお前。なんで攻撃してこない?」

 俺とレイを見下しながら尋ねるそいつ。


 対する俺達は、何も返さない。

 いや、返せない。


 どう返したらいいのかも分からず、多少の怯みのせいで返せない。


「まぁいい。させてやる」

 そう言うとそいつは、俺達のことを鋭い目つきで睨んだ。


「「——!」」

 その瞬間、自分の中の何かが壊れたような気がした。


「玖ノ型 影鰐かげわに!」

 マギアス戦を除いて、今までで一番強い影鰐。


「閃光纏い玖ノ型 復讐の光雨!」

 レイも同じく。


 さっきまで人を傷付けることに遠慮している目をしていたが、まるでそういう自制心を壊されたかのように態度が急変した俺とレイ。


 それにより、技の威力も上がっている。


「陸ノ型 滅葬めっそう

 それでも、あっけなく消されてしまった。


「共果!」

 後方からそのような叫び声が聞こえる。


 マギアスが共振融合したのだろう。


「水神纏い参ノ型 彗穿すいせん!」

 刀を構え急突進し、マギアスのそれでもクレーターが出来る。


 クレーターが出来たということはそいつは避けたのか?


「肆ノ型 戯礫砕ぎれきさい

 それは、上空から聞こえた。


 上を向きその姿を確認した後、すぐに注意を礫に変えさせられ、それを避けたり砕いたりしていると、俺達はいつの間にか集合させられていた。


 そんな風に調整されていたのか。まるで……遊ばれていたようだな。


「……破邪顕正」

 それは、さっきのものとは、比べ物にならない程の威力に感じた。……直感的に。


「極光!!」

「水禍!!」

「灰燼阿修羅!!」

「華ヤカナル降雹!!」

「竜の息吹!!」


 それらも全く対抗したと言えるものではなく、軽々と突破され、次々と聞こえる悲鳴。そして……破壊音。


「ハァ……アァ……」

 無理やり立つと俺とレイとセレス以外は全員血を流しながら倒れていた。


「みんな……?」


「……お前ら、何者だ?」

 俺がみんなの方を驚いたといった目で見て、少しの間の後、訪ねてくる。


「そっちから」

 言うならそっちが先だと指摘する。


「……なら、ディザイアとでも呼べ」

 ディザイア……英語だと、願望とか欲望だったか。


「サクライ シン」

 簡潔に済ませる。


「コウサキ レイ」

「セレス=フォン=サンクテュエール」


 驚いたような反応をするディザイア。


「……そうか」

 だがすぐにそんな様子を感じなくさせ、小さく呟くと、突っ込んできた。


 俺はそのような単純な行動に、反応しない。いや、出来ない。まず視えもしないのだから。


 身体強化で動体視力をフルにしても視えないだろう。


 そして上に吹き飛ばされた。……レイが。


「あ……」

 このまま行けば、レイは死ぬ。


「——拾ノ型 夜叉やしゃ虧月きげつ

 すぐに気合で飛んで助ける。


「レイ、大丈夫……気を失ってるのか」

 大丈夫か尋ねようとしたが、レイは気を失っていた。


 レイをそっと寝かせ、ディザイアのほうに向き直る。


 その時、こいつとは俺がケリをつける、そう決意した。


 当然だ。レイをこんな目に遭わせたのだから。他のみんなのことも到底許せないが、やっぱりレイはその中でも特別だ。


 そりゃそうだろう。16年以上も一緒にいるのだから。


 特別な存在にならないわけがない。恋愛感情や、友愛感情などのものは置いといて。


「壱ノ型 崩戟ほうげき

「壱ノ型 影牙えいが


 普通なら負けるその競り。だが、俺は打ち勝った。


「……!?」

 その予想だにしなかった結果に驚くディザイア。


 かく言う俺も、内心では驚いていた。


「セレス!」

「はい!」

 俺とセレスは一度ハイタッチをする。何故したのかは分からない。


 ただ、本能的にするのが最適手。しなければと、そう思った。


 ハイタッチをした瞬間、俺とセレスから蒼い光が溢れる。そのせいか、セレスと繋がったような気がした。


「闇纏い参ノ型 羅刹天らせつてん!」

 闇が広がり、ディザイアを喰らう。


「ハプルーン・カタリュシス!」

 だが、ディザイアの手によって闇は壊された。


「フォス・シャット!」

 俺に続くよう、セレスがその場の光を消してくれる。


 そのおかげで羅刹天らせつてんは再生した。


「漆ノ型 無明一閃・災害!」

 それに付け加え、全方向から無明一閃を与える。


「……壊れろぉ!」

 ディザイアはその声だけで闇を壊して抜け出し、無傷で立っていた。


「……」

 俺とセレスはディザイアを見つめながら思ってしまった。


 こいつには……勝てないと。


 どうしても、イメージしてしまうのだ。


 俺達が無惨にも負ける様を。


 あきらかにこいつは本気以上の俺達相手に、かなり余力を残している。少しったら、すぐに分かってしまった。


「お前はそんなものか? 私にはそんな風には見えないが」

 思わず委縮してしまいそうになるような声で、声を掛けられる。


「買いかぶりすぎ」

 なるべく短く答える。


 少しでもディザイアから気を逸らしでもしたら、その時点でアウトのような気がしてならないからだ。


「伍ノ型 殃禍繚乱おうかりょうらん

 ——きた。


「弐ノ型 凍霜とうそうッ!」

じゅう華葬かそう!」


 セレスが俺の技に効果を重ねてくれる。華葬は、凍った部分が華となって効力を爆発的に上げる効果がある。


 なぜこの時の俺とセレスには、そんな知識があったのかは分からないが。


「こんなもので私を足止め出来るとでも思ったのか」

 落胆した様子で語るディザイア。


 ——セレス!


【分かりました!】


「弐ノ型 荒波! 伍ノ型 篠突く雨!」

 前に聞いた、レイとった時のと、同じ手だ。


つい絶対零度ぜったいれいど

 水の温度を極限まで下げ、凍霜の効果の補助をさせる。


 結果、そこらに華が咲き誇り、ディザイアの姿が見えないほどになっていた。


 俺達から溢れている光が原因か、俺達の力は何倍にも膨れ上がっている。そのおかげでディザイアの攻撃を阻止し、動きを封じ込めたのだが。


 ……でも、なんだ? この感じは?


 普通、この状況なら喜んでもおかしくない場面だが、とても嬉しがれない。


 むしろ、ディザイアの姿が見られないから何が起こっているか分からず、返って恐怖が俺を襲う。


 ——怖い。


 本能でそう感じ取る。


 でもこれは、ディザイアへの恐怖だけが原因ではないだろう。


『無知』

 俺が一番嫌いなことで、一番怖いこと。


 自分が知っていればこんな事態を免れたかもしれない。知らなかったせいでこんなことになってしまった。


 例えば、ある友達がいたとして、そいつのことをちゃんと知らなかったせいでトラブルが起きてしまった。そんなことはざらにあるだろう。


 そいつの一面しか知らなかったからそうなってしまった。


 少しでも経緯が違えばこうはならなかった。


 知っていさえすれば、こんなことにはならなかったのに。


 そういう類いのものが、俺は一番怖い。


 今のこの状況は、ディザイアが今何をしているか分からない。つまり、知らない。


 その知らないという恐怖と、ディザイアの得体の知れない恐怖とが交じり合って、俺は動けず、ただ咲いている華を見つめながら汗を流す——。

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