第40話 あんた誰?
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「うぅ……あう……」
ぶっ通しの模擬戦もやっと終わり、みんな地面に座って息を乱している。
「みんな……おつかれ……もう、終わろっか……」
「はい……」
みんな息も絶え絶えになりながらもなんとか別荘に辿り着き、もう遊ぶような体力もないので必要最低限のことだけしてすぐに眠りにつく。
「こんなん毎日してたら絶対死ぬ……」
そう呟いたのを最後に俺は気を失った。
―――――――――
「さて、今日もやろっか!」
朝、地獄の掛け声がかかる。
「先輩」
「どしたの?」
「こんなんずっとやってたら死にます」
俺がそう言うとシェル先輩以外のみんながうんうんと頷いた。
「やっぱりそうかなぁ……分かったよ。昨日みたいにハードすぎるのはもうやめとこっか」
少し考えた後、納得してくれた先輩。
そして一斉にホッとする俺達。
「じゃあ今日は戦って負けた方は浜の一番奥からここまで往復。勝った方は戻ってくるまでここら辺の砂浜ウォーキングね。それで10から15分休んでまた繰り返す。分かった?」
昨日よりはいいけど絶対ハード……。
この場のシェル先輩以外が思ったことだった。
―――――――――
「あ、あぁ……」
倒れながら唸る俺。
やっと終わったからな。15回中7回は走った……。
「先輩……俺らのこと殺す気ですか……」
「そんな気はないよ……」
これやるのも相当キツイぞ……。
また昨日と同じように最低限のことだけ済ませて寝るのだった。
「こんなん毎日してたら絶対死ぬ……」
ほぼ昨日と変わりないのだった。
翌朝、いつも通り影同化で無理やり起きる。
そして俺は自分の身体のある異変に気付いた。
「……やべ、右腕と両脚筋肉痛……」
大ピンチである。こんな状態でやったら初日以上に疲れること間違いない。
てか身体壊れそう。
先輩に今日はやらなくていいと許可を取ろうと決意しながらぎこちない動きでリビングに向かう。
リビングに下りてくると、みんなもいた。なんだか動きがぎこちない。
とりあえず先輩に言おう。
「あの、先輩。俺今日休んでもいいですか? 右腕と両脚筋肉痛で……」
「……シン君も?」
え? シン君も?
「実は、ここにいる全員筋肉痛なんだよ」
「……まじ?」
「「まじ」」
じゃあ今日は休みで良くない?
「だったら今日は休まね?」
「そうしよっか」
良かった~! この状態でやるとか言われたらどうしようとか思ってたけど良かった~!
「じゃあここからは自由行動ね……」
「「はーい……」」
みんな筋肉痛のせいか活気が全くない。
「シン?」
「お? どした?」
「これからすること、分かってるよね?」
これからすること? なんか決めてたっけ?
「……何? それ」
「ほら、いつもやってるのに今はないのがあるじゃん」
「……?」
「桜の会だよ桜の会! あいたたた……」
興奮して手の動きと共に熱弁したが筋肉痛だから痛かったようだ。
「あぁ……もしかして会場は……」
「もちろんシンの部屋だよ」
やっぱり……。
「なぁ、筋肉痛でかなり痛いからベッド行っていい?」
……なんで俺の部屋なのに許可もらってるんだ?
「いいよ」
部屋についたからベッドにダイブする。
はあ~楽だわ~。
そう思ったのも束の間。突然激しい痛みが俺を襲ってくる。
「……ッいったー!!」
その痛みの原因はレイだった。
「お前……ダイブしてくんな……」
「いーじゃん別に」
……。
仕返ししてやる
「セレス、レイにダイブしていいよ。てか、して」
「へ?」
「いいからいいから」
「は、はい!」
セレスにレイに向かってダイブするように言ったが、鳩が豆鉄砲を食らったような反応をしたのでもう一度背中を押すと了承してくれた。
「えいっ!」
セレスはダイブした。
……俺に向かって。
「……ッいったー!!!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「セレス……なんで俺に向かって?」
「簡単だよ。私がセレスのダイブを避けたの」
「なんでだよ……」
「だってこれから来るって分かってるのに避けないわけないじゃん。ドエムじゃじゃないんだから」
……それもそうか。
「とりあえず……どいて……痛い……」
「あ、ごめんなさい!」
「えー」
セレスはすぐに、レイは渋々どいた。なんで渋々なんだよ……。
「てか、2人は筋肉痛痛くないの?」
「あぁ、それは休むための嘘だから」
「……ずあいたたた!」
ずると言おうとしたら、痛いところを突かれて思わず声を上げてしまった。
「てか、今ベッドの上に3人って状態分かってる?」
そう言うと途端に顔が赤くなる2人。
よし、そのまま恥ずかしがってどいてくれ。今はベッドを占領したい気分なんだ。
「……これで私達がどくと思った?」
「え?」
「まず私がそんなんで恥ずかしがると思う? シン相手に」
……それもそうだな。
「セレス、ダメだよどいちゃ。シンの思うつぼだよ」
思うつぼって……俺は敵キャラか。
「はい! 分かりました!」
セレスもなんでそんなに元気よく返事するの?
あぁ……疲れた……眠い……。
そう思った時、俺は眠りについてしまった。
―――――――――
「シン、寝ましたね」
「だね」
「いたずらしますか?」
「しよう」
私、こんな風に人と喋るの初めてです。
シンとレイに出逢ってから、世界がまるで変ったように見えます。
今は何もかもが楽しいです。
シンとレイにもまた会えましたし。いや、会うのは初めてです。初めてだけど、再会でもあるそうです。
私も全てを教えてもらったわけじゃありません。しっかり知りたいです。私達に何があったのか。
教えてくれませんか?
【ごめんなさい、それは出来ないの。あんなことしたのに、またそんなこと出来ません】
どういうことですか? 何をしたんですか?
【例え教えるとしても、それは今じゃありません】
なんでですか?
【それもまだ無理です】
じゃあこれは教えてください。あなたは誰なんですか? なんで初めてであり、再会だということが分かるんですか?
【それは、私があなたの————だから】
……? 聞こえません。どういうことですか?
【聞こえないか……。じゃあ、まだ言えないよ】
……? 本当に意味が分かりません。
「おーいセレスー?」
「……! はい、どうしたんですか?」
「セレスぼーっとしてたよ?」
「そ、そうですか?」
「うん」
「ごめんなさい。さ、やりましょ」
「うん、そだね」
―――――――――
……目が覚めた。もう暗くなってるのが窓から分かる。
「今まで寝てなかったのが一気に流れ出たのかなぁ」
起きようとすると、俺は起きれなかった。
「……ん? なんで俺手足ベッドに括り付けられてんの?」
……レイだな。
少し考えたら犯人は容易に分かった。
「で、どうやって抜け出そうか」
「シンくーんご飯出来たしよー」
どうやって抜け出そうか悩んでいるところにリア先輩が来てくれた。
「せんぱーい! 助けてくれませんかー!?」
「どしたしー?」
「とりあえず入ってくださーい」
そう言うと入ってきてくれた。よし、これで助かる。
「ど、どしたし……?」
そりゃびっくりするよな。
「レイにやられました。助けてください」
簡潔に状況説明をする。
「……にや」
その時リア先輩が悪い顔になった。
「ちょっと!?」
「これはシェルに今ならシン君自由って言ってきた方がいいし?」
「やめてください!」
そんなことしたらレイ達にまた理不尽に怒られる!
「じゃあ待っててね~」
ノリノリで行く先輩。
「ちょ、なんでもしますからやめてください!」
「……なんでも?」
嬉しそうに振り向く先輩。
「……」
「じゃ、行ってくねー」
「なんでもしますから!」
「よーし、じゃあそれは面白い時に取っとこうかなぁ」
……どうやらシェル先輩の性格悪い作戦はリア先輩に授けられたというのは本当みたいだ。
「……分かりましたから解いてくれませんか?」
いい加減俺も動きたいぞ。
「ほいさっさ」
やっと解いてくれた。
その日は俺が2人に文句を言ったりしていたが平和に終わった。
―――――――――
アルスべリア島での強化合宿が残り一週間を切った時、その事件は起こった。
ドゴォォォォォォンッッッ!!!!
いつも通り朝ご飯を食べていると、突如途轍もない轟音が島中に響いた。
「な、なんだ? どうした?」
「とりあえずみんなで見に行こうか。あと、流石にないと思うけど戦闘準備ね」
「はい」
音源の方に向かっていると、不自然に開けている場所に出た。
「うわ……ナニコレ?」
みんなの気持ちを代弁してくれたカイル。
それもそのはず、そこには巨大な隕石が衝突したのかと思うほどのクレーターができていたのだ。
その中から人影が見える。
「「……!」」
一斉に共振武器を構える俺達。
「……ふぅぅぅ」
女性の声が聞こえる。
……女性?
そしてその姿が露になる。
赤髪にきれいな蒼い目の女性だ。
「あの、どうしたんですか?」
純粋にどうしてここにいるかなど疑問がいっぱい出てきたので尋ねるが、その女性はこちらの存在を確認すると、その姿が突然すぐ横に現れた。
「あぁぁぁ!!!」
そして後方から聞こえるカイルの叫び声。
この人……いや、こいつがカイルを吹き飛ばした。何コイツ、いきなり吹っ飛ばすって……サイコパス?
その時点で敵と判断し、すぐに構え直す。
「先輩、外への連絡は!?」
「無理だよ。ここには転移碑はないし時間になるまで迎えの船も来ない」
てことは俺達で解決しないといけないのね。
「——参ノ型 滅冰泉!」
「壱ノ型 崩戟」
嘘、シェル先輩の技をいとも簡単に?
とにかくやんなきゃ。
「漆ノ型 迅一せ……」
……? 脚が……竦む?
「シン……もしかしてシンも……?」
「……レイもか……」
恐怖。実戦で常に少なからずは付きまとうものだ。
それに考えてみたら当然だ。
日本という平和な国で生きてきた俺達には、この世界の人達よりも人一倍大きい。
それに、実戦だからどちらかが、死ぬかもしれない。
「……シン君、無理はしないでね」
「……すみません」
俺はそれしか言えなかった。




