第35話 生徒会
暗号に『明日の昼休み生徒会室で』と書いてあったのでそこに向かいたいが、どうやって2人を振り切ろうか。
いつも3人で食べてるから急にいなくなったら不自然に思われるだろうし……。
「失礼しまーす。シン サクライ君はいますでしょーかー?」
金髪をツインテールにしたふわっとした感じの女子がこのSクラスにやってくる。
ボタンの色が青だから1つ上の2年生か。
「はい。シンは俺ですけど」
「あ、君がシン君ね。話は聞いてるよ」
「そうですか。それで、何か用ですか?」
すまん。そうですかって言ったけど何の話を聞いたのかさっぱり分からん。
「うん、昨日シェルに暗号もらったでしょ?」
「あ、はい」
あ、そのことね。
「それで、今から学園長からの呼び出しって学園内放送が入るからそれでお弁当も持って来てね」
「わ、分かりました」
ここまで手を回してくれたのか。
「じゃね。また後で」
「はい」
って、また後で?
まぁとりあえず弁当を異空間収納に入れてっと。
『シン サクライ君。シン サクライ君。直ちに学園長室に来てください。繰り返します。シン サクライ君。シン サクライ君。直ちに学園長室に来てください』
ほ、ほんとにやったよ……。
「シン、何したんですか?」
「いや、多分学園対抗戦のこととかじゃない?」
なんですぐに俺が何かしたって思うの? そんなトラブルメーカーじゃないよ?
「そう? でもそれだったらなんで私達は呼ばれないのかな?」
「俺が分かるわけないって。それか別の要件なんじゃない? とりあえずもう行くね」
「あ、うん。いってらっしゃーい」
―――――――――
1つ下の階の建物の1番端にある生徒会室の前に着くと、俺は2回ほどノックをする。
「先輩? 俺です。シンです」
「空いてるから入ってー」
「はーい」
ガラガラッという音と共に扉を開け、中に入ると閉める。
途端に後ろからガチャという音が聞こえる。
「……?」
不審に思いながらも気にせず指定された先輩の近くの机の端から垂直に伸びている机付近にある1番先輩に近い席に座る。
「それで、早速本題に入るね」
「はい」
「急なんだけど、生徒会に入って欲しいの」
「…………はい?」
「急なんだけど、生徒会に入って欲しいの」
「いや、聞こえました」
「そう? じゃあ、返事を聞かせてもらってもいいかな?」
「いや待って下さい! この流れはおかしいですって!」
「そーかなー? 良くない?」
「良くないと思いますけど……てか、なんで俺を誘うんですか?」
「理由? それだったら2つあるよ?」
「聞かせてください」
「いいでしょう。まず1つ目ね、今生徒会私含めて3人しかいないんだよ」
「 えっと、普通なら最低何人なんですか?」
「5人かな」
……どんだけ人手不足よ。
「えっと、2つ目は?」
「私がシン君のことを気に入ったから」
……理由になってるのかそれ。
「だってシン君と一緒にいたら楽しそうじゃん?」
「それは光栄ですけどそんな理由でいいんですか?」
「いいのいいの。それにシン君頭いいでしょ?」
「まぁ、少しは」
トップとは行かないけどトップクラス近くには行けるからな。
「ってなんで分かるんですか?」
「生徒会長の権限駆使すれば生徒のテストを見ることくらい簡単だよ」
それでいいのかソルセルリー学園。
「ねぇ……お願い……」
上目遣いをしてくるシェル先輩。絶対これ狙ってるだろ!?
「なんでそこまで俺に拘るんですか?」
「シン君が私のお気に入りだから!」
妹だぁ……。
可愛い妹だぁ……。
「聞きたいんですけど、生徒会に入ってのメリットとデメリットを教えてくれませんか?
「メリットとデメリット……」
手を顎につける仕草をして考えるシェル先輩。
「えとねえとね、まず生徒会に入ったら楽しいよ!」
「は、はい」
それはいいのか?
「えっとぉ……」
どうやらもうメリットを思い付かないようだ。
「 あの、そんな無理しなくても大丈夫ですよ?」
「あ! 少しくらい偉そうにしたり権力使って生徒を従わせたりしても文句言われないよ!」
「そんなことしませんよ! あとそんなことして何も言われないって逆に大丈夫ですか!?」
「うぅ……入ってくれない……?」
「う……」
こういうの弱いんだよなぁ……。
「じゃ、じゃあデメリットは?」
「ちょっと忙しくなるだけだよ」
まぁそれくらいならいいけど。
「だめ……?」
あ、やばい。先輩が泣きそうだ。
「あ、いえ! 入ります! 入りますから泣かないで!」」
「……ほんと?」
「はい!」
あ、つい言っちゃった。
「ふふ。言質は取ったからね?」
そう言ってレコーダーのような魔道具を取り出し、再生させると
『入ります! 入りますから──』
先の言葉が流れた。
「……先輩、性格悪いですね」
「え!? あいや、違うの! これは友達にさせられたことで……」
「友達にさせられた?」
「うん……これやったら必ず入ってくれるって言ってたから……」
誰だ。その迷惑な人は。
「あー今迷惑な人とか思ったし〜?」
突然後ろの扉が開いたかと思うと、さっき俺を訪ねて来た人が入ってきた。
「あ、リアー。リアの作戦のせいでシン君に性格悪いって言われたんだけどー!」
立ち上がり、頬を膨らませながら抗議する先輩。
「知らないし〜。私は提案しただけだしー」
「うっ! そ、それはそうだけど……」
俺は混乱したままだ。とりあえずさっきの先輩が録音する作戦はこのリアと呼ばれている先輩のせいということは分かった。
「あ、まだ自己紹介してなかったね。私はサラリア=フォン=リッドリースだし。リアって呼んでいーよ。ちなみにシェルの幼馴染みだしー」
「よろしくお願いします。リア先輩」
この学園気軽な人が多いな。
「リアは副生徒会長やってるんだよ」
「そうなんですか」
そうなんですか以外になんと言えば?
「もう1人っていうのは誰なんですか?」
「んとね、書記をやってるクレイ=バスタードだし」
「今はクレイさんはどこに?」
「あぁ、今は学園にいないんだけどね。確かアギュオス帝国に留学中だったと思うよ」
「そうですか。あ、それで、生徒会の件で2つ言いたいことがあるんですけど、いいですか?」
「なぁに?」
「選挙とかしなくても生徒会に入れるんですか?」
「うん。生徒会長が推薦状を学園長に出しておっけーされたら入れるよ」
「なるほど。それで2つ目なんですけど、最低5人って言ってましたよね?」
「言ってたね」
「俺が入っても4人ですよね?」
「そうだね」
「なら、レイとセレスもどうですか?」
「レイちゃんとセレス様かぁ……」
「だめですか?」
「いえ、私はいいんだけどね? あの2人に何を言われるか……泥棒猫先輩って言われたし」
泥棒猫って……まるで俺を賭けて競ってるみたいだな。なんか面白い。
ま、流石にそれはないと思うけど。特にレイが俺に恋愛感情を持ってるっていうのが想像出来ない。
「じゃあ、俺が2人に変なことしないよう言っておくんで、それでどうですか?」
「まぁ、それならいいよ」
「あ、そうだ! お弁当食べよーよ!」
「あ、そうですね」
そして3人で楽しく雑談しながら昼休みを過ごすのだった。
―――――――――
弁当も食べ終わり、話も終わったということで教室に戻る。
「あ、おかえりシン。遅かったね」
「あぁうん。あのさ、2人に話があるんだけど」
「なんですか?」
きょとんとした顔のセレス。
可愛い。
俺の周り可愛い子多くない?
「えっと、まず結論から言うと、俺は生徒会に入ることになった」
まだ確定じゃないけど。
「「はぁ!?」」
「生徒会って、あの泥棒猫先輩がいる生徒会?」
「こらこら、泥棒猫先輩って言わない」
「なんでそうなったんですか!」
「それはこういう訳がありまして──」
一通りの出来事を2人に説明する。
「それで、シンは私達に秘密で泥棒猫と会ってたんだ?」
もう先輩とすら言わなくなってるよ。
「いや、先輩に秘密でって言われたからそうした方がいいかなって……」
「私達に内緒で密会してたんだ?」
「芸能人のスクープみたいに言うな!」
なんで俺が責められてるんだ……?
「えっとそれでさ、俺が2人も生徒会にって提案したんだけど2人はいい?」
途端に2人はバッという効果音と共に俺から離れて内緒話を始める。
「シンだけで生徒会に入ったら危険だと思うんだけど……」
「ですよね。泥棒猫先輩が何かしないように見張らなければ」
「じゃあ答えは」
「もちろんです」
少しすると2人は戻ってきた。
「うん。いいよ」
「ありがと! それで、入るにあたっての条件が1つあるんだけどいい?」
「なんですか?」
「シェル先輩のこと毛嫌いしない。ちゃんと話せ」
「「………………はい」」
不満そうな顔をする2人。
一応了承してもらえたけど、大丈夫か?
「じゃ、放課後にでも報告するか」
「それはいいけどシン」
「ん、何?」
「ずっと気になってたんだけど、どうして呼び方がシェル先輩なの?」
「え? それは先輩にそう呼べって言われたから」
「へぇ?」
2人の目からハイライトが失われる。
俺、なんかだめなこと言ったか?
「あっの泥棒猫……!」
……大丈夫か?




