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第31話 少女達の喧嘩。俺は気付いてしまった

挿絵(By みてみん)


「さて、じゃあそろそろみんなのところに戻らないか?」

「あ、そうだね」

 セラピア先生に挨拶をしてから保健室を出て、みんながいるはずのグラウンドに向かう。


 道中、俺はこんなことを思う。


 毎回模擬戦の時相手を傷付けてるけど、やっぱり抵抗あるな……。

 特に斬ることが出来ない。だから毎回切れ味ゼロの攻撃にしている。


 もし実戦をすることになったら、俺、大丈夫かな。

 正直言ってできる自信がない。というか、人を傷付けることに慣れていいのか?


 やはり元は日本に住んでた人間として、人を傷付けることには当然抵抗がある。暴力ともほぼ無縁の平和な生活だったからな。


 その事を考えていると、ふと日本での人間関係のことを思い出す。


 1番最初に思い出すのは、両親。とても自由な人で、もはや親というより友達という親近感を抱いていた。


 母親はそこそこ有名な女優をしており、家でも何故か演技をしながら接してくることも多々。

 父親は大手企業の部長。だと言うのに全く偉そうにせず、むしろ子供っぽいところがあり、それでいて多才という理不尽な存在だった。

 関わる時間は多くはなかったが、好きな両親だ。


 その次に、真姫。俺のもう1人の幼馴染み。

 零を除けば、関わっている時間が最も長いのは彼女だ。そう、両親よりも。


 ずっと一緒にいたから、今でもたまに夜、泣いてしまうことがあったりする。


 ……大丈夫かな。あのロリがどうにかしてくれるとは聞いたが、それでも自分の目で確かめないと心配だ。


 そして学校の友達、その親、教師、隣近所の人達。俺達が急にいなくなったことでどうなっているのか心配だし、もう一度会いたいと思ってしまう。むしろ、急にこちらに転移してそれらを忘れろという方が無理な話だ。


 前のことを思い出し、ここは学園内だというのに目に涙を浮かべてしまう。


 それをマギアスにバレないように上を向き、涙が落ちるのを事前に防ぐ。


 この時、マギアスは俺にバレないよう、横目で俺の様子を見ていた。何もかも見透かしたような目で。悲しげに。


 俺は上を向いていることにより、その目線には全く気付かない。


 涙も治まり、前を向くとレイ達集団が見えた。どうやら全員終わったそうだ。


 レイとセレスが向かってくる。


「……シン、大丈夫?」

 流石は幼馴染みと言ったところか、もう涙の跡はないはずなのに察してくる。


「……大丈夫。色々心配になったり懐かしくなったりしてな」

「……やっぱりシンもそれ考えるか」

「しょうがないよ、こればかりは」

「だよね……」

 セレスは空気を読んでか、言葉を発さない。


「あ、そういえばレイ達は勝負誰とやってどうなったの?」

 俺はその悲しめな雰囲気をぶち破る。


「あ、私はセレスと勝負したの!」

「へぇ。どっちが勝ったの?」

「もちろん私が勝ったに決まってるじゃん!」

 誇らしげに胸を張るレイ。


「……セレス、おめでとう」

 レイを少し見た後、セレスの方を向いて祝う。

「え?」

「え? なんでですか?」


「だってセレスが勝ったんでしょ?」

「あ、はい! そうです! ……けど、なんで分かったんですか?」

「嘘だよ! シン、私だよ! 私が勝った!」

「見栄張るな!」

 レイをデコおしする。


「あ……」

 興味深そうに見るセレス。どうしたんだ?


「なんでよ! 見栄なんか張ってないもん!」

「嘘だろ、レイは嘘つくと右手が力むんだよ」

「え、嘘……」

「嘘じゃない。っていうかこれ何回も言ったろ。なんで忘れる」


「わ、私が勝ったもん」

「セレス、ほんと?」

「いいえ、嘘です」

 きっぱりと断言する。


「レイ、嘘はだめだよ」

「う……ごめんなさい……」

 しゅんと落ち込むレイ。まるで垂れ下がった耳が見えるようだ。


 頭をぽんぽんとしてレイを慰める。

 俺はこのまま2人と話してても不自然に思われると思い、みんなの方へ向かう。

 ……また付き合ってる疑惑が生まれるのも面倒だしな。


「ふふんっ。私はさらっとデコおしと頭ぽんぽんしてもらったよ?」

「うぐぐ……」

 後ろでそんなやり取りが行われていることに、俺は気付かない。


「ザックは誰とったの?」

「俺はアレクとやったよ……」

 なんだ? 妙に元気がないな。


「アレク、どうしたの? こいつ」

「あぁ。まぁ、理由の1つは僕に負けたことだと思うよ。今までザックは僕に負けたことなかったから」

「ザック、油断したな」


「そしてもう1つは、恐らく君だよ。シン」

「え、俺?」

 俺何かしたっけ?


「ほら、シン前ザックとったじゃん」

「うん、ってはないけど」


「それでさっきマギアスとり《あ》合ったじゃん」

「う、うん」

 話を聞け!


「それでシンのあんな実力を見せられて俺の時は手抜いてたのか……って凹んでるんだよ」

「あ……そういうことか……」


 俺はザックに話しかけようと近付く。

「えっと、ザック……?」

「…………なんだ?」

 あ、結構凹んでる!


「あの、さっきのマギアスの時は……えっと……そう! さっきだけ覚醒したからあんな実力出せたんだよ。だからザックとった時も本気だったよ」

「……そうなのか?」

「そうそう!」


「だよな! シンはそんな酷い男じゃないもんな!」

 ザックは機嫌を直して立ち上がる。


 ザックが単純で良かった……。


「うあー! なんでミラに負けなきゃならんのだー!」

「クレアが簡単に挑発に乗って馬鹿みたいに魔法ぶっ放してくるのが悪い。ていうか馬鹿」

「むっきー!」

 急にそんなやり取りが聞こえてくる。


 2人の少女が言い合っている。

 その時、2人が何かに反応したように動きを止めた。何かあったのか?


「シン君、今何か失礼なこと考えなかった?」

 何なんだろうと不思議に思っていると、2人がこちらに来て鋭い質問をしてくる。


「い、いや、そんなことはないけどな?」

「嘘、失礼な視線を感じた」

 なんだ!? 失礼な視線って!


「別に少女とか思ってないけど?」

「少女……?」

「シン君……」

 あ、やべ。


「そ、そういえば、なんでクレアはミラに負けたことをそんなに悔しがってるの?」

 逃れるために無理やり話題を変えて何故ライバル視しているのか尋ねる。


「だってミラには負けたくないじゃん?」

「私がクレアに負けるわけない」

「なんで!」

「自然の摂理」

「意味分かんないよ!」


 ……あ。俺、もしかしたらクレア達が互いにライバル視している理由が分かってしまったかもしれない。

 同族嫌悪という言葉があるしな……。


 2人のスタイルはこのクラスの女子と比べて……いや、まず平均よりも……。

 このクラスの女子と比べるのは可哀想だ。


 特にカーラとか。みんなまぁまぁあるからなぁ。


 レイもあの身長であるから。ミラやクレアとほぼ同じくらいなのに……。


「シン君、今絶対失礼なこと考えてたよね」

「言い逃れは出来ない」

 何故こんなにバレるんだ!?

 感の鋭い少女達だ。

 誰か助けてー!


「まぁまぁ。許してあげたらいいじゃないですか」

 セレス! 君は女神だ!

「シンも。失礼なこと考えちゃだめですよ」

「は、はい……」


「お前らーもうそろそろ次のクラスがテストだから教室戻んぞー。次座学な」

「「えぇ〜」」


「文句言うな。普通に授業受けてれば普通に点取れるからな?」

 クレアの方を見て言うエクス先生。


「うぐっ……私授業あんまり聞いてないんだよな……」


 あー確かに。これまでの授業でもクレアが寝てたり落書きしてたり遊んでるところはよく見るからな。

 それでもSクラスってすごいな。こいつ才能はあるんじゃないか。


「シン君……助けて……」

「いや、どうやってだよ。しかもなんで俺に言うんだよ」

「そこにシン君がいたからだよ」

 キメ顔で言うクレア。いや……


「そこに山があったからみたいに言うな! それにかっこ良くねぇよ! むしろ内容がかっこ悪いわ!」

「そんなぁ〜……ねぇ助けてよぉ〜……」


「クレア、大丈夫」

「え、ほんと!? なんでなんで?」

「クレアの分まで私がSクラスでがんばるから」

 ……なるほど。


「それ、私がSクラスから落ちるってこと……?」

 呆然としているクレア。


「クレア、入学試験の時はどうしたの?」

「入学試験……? 気合いで頑張ったらなんとかいけたけど」

 それでいけるってのも充分すごいけどな……。


「だったら今回も頑張ったらいけるってことじゃん? だから頑張ってみたら?」

「……そうだよね……頑張ったらいけるよね!」

 ふぅ。単純で助かった。


 ―――――――――

 大体1時間半で終わるテストにしては短いテストを終える。


 残るは長所試験だが……俺の目の前には机に伏せているクレアがいる。

「えっと、クレア? どうだった?」

 これは恐らくここにいるみんなが思っていることだろう。


 まぁ、伏している時点で想像は付くが。


「あうっ……」

 あぁ……と、みんなそんな雰囲気を出して結果を想像する。


「とりあえず長所試験するために第2グラウンド行くべき」

「そうだな。じゃあ行くか。ほら、クレアも立って」

「うぅ……」

 俺達の最後尾をクレアがフラフラとしながらついてくる。


 ……みんなあの状態のクレアに目を付けられないように何も喋らず目も向けていない。

 俺もそうしよう。

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