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番外編 メイタール=レイザーの記憶

 私は今おかしな気持ちを抱いている。


 原因は恐らく、この子。名前は……サクライ シン、ね。


 おかしい。何故かこの子があの子と妙に重なる。

 容姿も名前も、全く違うのに。雰囲気は少し似ているが。


 Sクラス生1人1人と話すことになり、私はシン君とレイちゃんに、同じ内容を話した。私の過去のことを軽く。


 メイタールの頭の中に、過去の映像が、鮮明に蘇ってくる。


 ―――――――――


 今から1082年前。


 歴918年。


 1人の女性、名前はメイタール=レイザー。歳は18と、若いが実力はかなりのもので、まぁまぁ世間にも名が知れている冒険者だ。


 メイタールは旅の途中あまり発展していない村に立ち寄った。発展していないと言っても、この時は一般的な村だ。


「きゃぁぁぁ!!」

「!?」

 いつも通り魔物を狩ろうと森に入って少しすると、悲鳴が聞こえてきた。


 すぐさま身体強化と風魔法で声の元に向かう。悲鳴の声の主は小さな女の子だ。腰を抜かして尻もちをついている女の子を魔物から庇うように立っている、同い年くらいの男の子もいる。


 銀髪銀眼の顔の整った男の子と、蒼い髪に蒼い眼。メイタールがシンに言った、セレスのような容姿の女の子だ。


 その悲鳴の原因となった魔物は、最悪だった。いや、それはメイタールがいない場合の話だ。


 その魔物は赤い肌に、大きな目を1つ持ち、背中には翼も生えている。右手には大きなメイスを持った、全長7メートル程の、サイクロプスだ。しかもただのサイクロプスではない。サイクロプスの亜種だ。


 サイクロプスは大きなメイスを振りかぶり、その2人の子供を狙っている。メイタールはサイクロプス周辺に右手を集中的に鎌鼬を起こす。


 ぐわぁぁぁぁ!!


 サイクロプスが不快な声を出しながら苦しみ悶える。

 サイクロプスは逃げるように空へ羽ばたき、目の前にエネルギーを集め始める。

 ビームだと確信するメイタール。


 そのビームには、こちらもビームで対抗。

「レイト・エクステシオン」

 その2つは、相殺……することはなく、メイタールの魔法が圧勝し、サイクロプスに向かってゆく。

 それに反応することは出来ず直撃し、墜落するサイクロプス。


 せめてもの反抗と、メイスを拾い残っている左手でメイスを地面に叩きつけ、メイタール方面の地面が爆散していく。


 沢山の岩がメイタール達を襲うが、メイタールは動じず、一言。

「スフラギラ」

 その一言で、その惨事は収まり、それどころか割れた地面が元に戻っていく。


「ラーヴァ・ディヴロス」

 その瞬間、サイクロプスの体がまるでマグマに侵食されるように溶けていく。


 そしてそこは、何もなかったかのように元通りになった。


 その後に、まだ怯えている様子の2人の子供に話しかける。


「大丈夫?」

「う、うん」

 メイタールの手に捕まり、女の子は立つ。


「君も」

「だ、大丈夫だよ」


「君達、名前は?」

 メイタールはしゃがみ、2人に視線を合わせて話す。


「僕は──だよ」

「私は──」

 後にメイタールは、この名前のおかげで2度、驚くことになる。

 1度目はそう遠くない未来に、2度目はおそよ1000年後に。


「そう。2人はあそこの村に住んでるの?」

「そうだよ」

 男の子が答える。


「じゃあ、私が送っていくよ」

「ありがとう! お姉ちゃん!」

「どうしたしまして」


 そのまま2人を家に送り、また森で狩りをして異空間収納に死体を入れ、ギルドで換金してからご飯を食べ、いつも通り寝る。


 翌朝、宿から出て少し歩こうと思ったら、2人の子供がいた。昨日助けた2人だ。


「あ、あのね」

 男の子が申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。


「僕達に戦いをおしえてほしいの!」

「……」

 メイタールはしばし黙り、

「なんで?」

 そう言った。


「僕、大切な人を、──達を守りたいんだ! でも、そんな力もないし……頼れるのはお姉ちゃんだけなの!」

「私は自分くらいは自分で守れるようになりたいの!」

「……」

 少し考えた後に導き出した結論は……。


「分かった。いいよ」

 了承だった。


「「ありがとう! お姉ちゃん!」」

「じゃあまずは、魔法は使える?」

「少しくらいなら使えるよ」


「じゃあそれを見せてくれる?」

「うん! 分かった!」


「……じゃあ魔力をこうやってみて。これをしていると魔力操作にも慣れるし、量も増えるんだよ」



 ―――――――――


 そうして1年経つ頃には、子供達はメイタールといい勝負が出来るほどの実力を手に入れ、2年経つ頃には、メイタールに並び、3年経つ頃、よわい9歳では、メイタールをついに超えた。


(私……10歳から戦闘訓練してきてこれなのに、この歳の子にこんな早く抜かれるなんて……それに私、世間では神童ってなってるのに……)


 と思うメイタールであったが、その子達の実力はそんなことは知ったことじゃないとばかりに、ぐんぐんと伸びていった。


 そしてその子達が15歳になった時。メイタールはある報告を受ける。


「親に頼んで、やっと旅の許可をもらえたよ!」

「私もです」


「そう。よかったね」

「それでお願いがあるんですけど……」

「なぁに?」


「よかったら、先生も一緒に旅をして欲しいんです!」


 この時、メイタールは逆に自分なんかがいいのか、と思った。この子達の実力は既に世界トップクラスにあるだろう。だから、自分がいると逆に足でまといになってしまうと思ったのだ。


「私が? いいの?」

「もちろん」

(むしろ私からお願いしたいのに……)

「じゃ、じゃあよろしくね?」

「やった!」

 嬉しそうにする2人。


 そして旅に出る3人。実力もあり、性格も難なしということで、すぐに有名人になった3人。


 だが途中で、ある3人の仲間が加わり、6人パーティとなる。


 その3人の名前は、カリディアと、ライラ、クロエ。


 後、人類を脅かしていた魔王を、数々の代償を払いながらも討伐し、英雄と称えられた。


 だがその後、別の問題が発生した。人同士の争いだ。


 メイタール一行は平和の象徴として、──達の出身地のあの村を中心に国を作った。

 時間はかかったが大国として成立、成功し、その国は、平和の象徴を称してエデンと呼ばれるようになった。


 ……その国の名は、サンクテュエール王国。


 この国のおかげで、人々の争いはほぼなくなった。


 初代国王には、男性の──がなった。


 だが妙なことに、未来の記録では、架空の人物が初代国王だということになっていることはこの時誰も知らなかった。


 そして、問題を解決すると、別の問題が発生する。またこのパターンである。


 そしてこの問題は、メイタールの人生で最も苦しい出来事となる。


 最初にクロエが、突然いなくなったのだ。少し出掛けているんだろう程度に思っていたが、丁寧で冷静なクロエが全くコンタクトせずに出掛けるのは変だ。


 そう疑問に感じていたところ、カリディアも続けていなくなった。


 また、ライラもいなくなる。


 メイタールにとって、この5人は大事だが、あの2人は格別だ。1番長い付き合いなのだから。かれこれ、2、30年の付き合いになる。


 メイタールの容姿は、30前後程。それ以外の皆は、20代前半程だが。


 急いで2人の元に行くと、2人はしっかりのその場にいた。

 メイタールは安心し、その場に倒れ込んでしまった。


「先生! 大丈夫!?」

「大丈夫ですか!?」

「あ、ありがとう。安心してこうなっちゃっただけだから、安心して」


 だが翌日、いつも通り2人と会おうとすると、2人のうち女性の方の1人がいない。


「「…………」」

 2人は長い沈黙状態になり、メイタールは声をあげて泣き、男性は無音で瞳から涙を流していた。


 メイタールは、──だけはいなくならせまいと、一日中共に行動することにした。だが1週間後の朝、ふと起きて──の寝ているはずのベッドを見ると、そこに姿はなかった。


 メイタールはすぐに国中、いや、大陸中探したが、どこにもいなかった。


 メイタールは王座の前で優しい──の姿を思い出しながら泣き崩れ、そのまま気を失ってしまった。


 メイタールが出会った2人の名は、女の子は、セレス。


 もう1人の、メイタールをあっという間に越し、優しく、それでいて力強かった、後に英雄と謳われるその男性の名は……マゴス。


 ―――――――――


 メイタールは色々な思い出を懐かしむ。


 マゴスが王座に座り、初対面の人にタメ口で話すことが出来ず、王座に座り続け人を上から見続けることも出来ずにみんなで笑った思い出。


 国を作ってから、マゴスやその仲間たちが、転移碑や共振武器など、色々な便利なものを開発した思い出。


 魔王との最終決戦で、幾度となく命を助けてくれた思い出。


 自分を先生と慕ってくれた思い出。


 マゴスの、あの深淵級のスキルの思い出。


 魔物から2人を救い、初めて会った時の思い出を、思い出す。


 だがそれらを思い出すのと同時に、疑問に思う。

 何故、皆は消えたのか。

 何故、英雄と謳われているのがマゴスだけなのか。

 何故、マゴスの記録が改変されているのか。

 何故、シンとマゴスを重ねてしまったのか……。


 自分の知っている限りの真実を皆に話してもいいが、話してはいけないと、本能で感じてしまう。


 シンの姿を思い浮かべながらメイタールはやっぱり気のせいかな……と結論づけたのだった……。

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