第25話 メイタール様ご登場
みんながプロットに訓練してもらってちょうどみんなの緊張が取れてきた頃。
突然ラッパや太鼓など、色々な楽器の音楽が大衆の歓声と共に聞こえてきた。
「わわわ!」
「わ! 何? どうしたの!?」
「落ち着け。多分メイタール様が帰ってきたんだろ」
「えぇ! それほんとですか!?」
みんな窓から必死にメイタール様のことを見ようとする。
あ、でもここは城の敷地内だから外には……。
「うー城壁が邪魔で見えないよう……」
やっぱり。
「この後王城に来る予定だから見る機会はあるだろ。そう凹むなって」
「そっか! そうですね!」
クレアは相変わらず単純だなー。
「ん? シン君今失礼なこと考えなかった?」
ぎくり。
「い、いや? 別にそんなことはないけどな?」
冷や汗を隠しながら苦し紛れにそう答える。
「え、ていうか俺達メイタール様見ること出来るの?」
「あ、そういえばまず王と謁見でその後は自由って予定だったか。やべ、それじゃ会えねぇな……」
少し考えた後。
「じゃあ俺が交渉してやるよ」
「まじで!?」
「任せとけって」
メイタール様はプロットととも隔絶された力を持ってるって聞いたからな。どんな人かとかはすごく気になるものだ。
―――――――――
みんなのの訓練がほぼ終わった頃、プロットがある報告を持ってやってきた。
「メイタール様OKだってさ」
「「……まじでぇぇぇ!!??」」
みんな驚く。俺も驚く。軍の隊員さん達も驚く。
「来いよ。案内するから」
どうやらメイタール様の所に連れていってくれるそうだ。
歩き始めたすぐ後、プロットが急に立ち止まった。
どうしたんだ?
「まさか、あなたからここに来られるとは」
そう言ってプロットは礼をする。
プロットが入口にスペースを作り、入ってきたのは紫色の長い髪に紫と緑のオッドアイを持つ美しい女性だった。
その女性の名は、メイタール=レイザー。
四天王第1席であるその人本人である。
メイタール様がその場に登場した瞬間、訓練場は静寂に包まれる。
「あぁ、貴方達は気にしないでいいわよ。訓練続けてね」
隊員さん達に向かってそう言う。
「「はっ!」」
みんなが敬礼し、訓練に戻ることはなく、全員の視線はメイタール様に向けられたままだ。
「貴方達がプロットの言ってた子達ね?」
「は、はい」
俺が代表して答える。
「セレス様も、お久しぶりです」
王族には敬語を使うのか。
「うーん。ここじゃ落ち着けないだろうし、やっぱり場所を移しましょうか」
そう言って指を鳴らすと、俺達Sクラス生とプロット、そしてメイタール様は王城の庭に転移された。
転移……。いいな。俺もしたい。
「ちなみに、この国では転移出来るのは今のところメイタール様だけだ」
ひそひそ声でプロットが教えてくれる。
「じゃあえっと、ここを散歩しながら1人ずつお話していけばいいかしら?」
「それでいいと思います」
「じゃあ、まずは貴方ね」
メイタール様は最初に俺を指名した。
みんな緊張して声出せてないよ。クレアももっと騒ぐと思ってたけど。
意外な目線をクレアに向けながらメイタール様の隣に行く。
そして皆が歩き出す。
「貴方と貴方の幼馴染みの子の境遇は王に聞いたわよ」
第一声はそれだった。
「転移者会うのは私も初めてよ。話は何度か聞くけれど」
「そ、そうなんですか」
やべ、何話したらいいのか分かんねぇ。
「貴方、誰かと重なるのよね。まるで前に会ったことがあるような感覚。まぁ、私は1度会った人は皆覚えているから、気のせいだろうけど」
「俺もそんな気がしなくはないですけど、気のせいですよ。ちなみに、誰と重なるんですか?」
よし、この調子で話を続けていれば……!
「それが分からないのよねぇ。誰に似てるのかしら」
「じゃあ、少し変えて、メイタール様には誰か大切な人とかいるんですか?」
「大切な人、ね。いるわよ。2人」
「へぇ。良かったら、その人について聞かせてくれませんか?」
「いいわよ。その2人は今はもういないんだけどね。もう、1000年程前かしら。その時くらいに消息不明になったと思うわ」
「せ……!」
1000年!? なんでこの人そんなに生きられるんだよ! もしかして妖精とか? この世界には妖精や精霊がいるそうで、その種族は滅多にいないが、皆長寿なのだそう。
「会ったのはそれよりももっと前ね。私はその時、1人で目的も無く旅をしてたの」
物憂げな表情で過去のことを思い浮かべるメイタール様。
「私はある村に立ち寄った時、ある2人の子供に出会った。銀髪銀眼の、綺麗な男の子と、蒼い髪に蒼い眼の女の子でね。そうそう、ちょうどセレス様みたいな容姿のね。2人は幼馴染みだったんだって」
幼馴染みかぁ。てか美男美女の幼馴染みって。あ、でもそれは前の世界の友達に俺も言われたな。
「私は成り行きから、2人に戦闘技術を教えることになったの。そしたらびっくり。2人ともあっという間に私の事越して行っちゃうの。多分今勝負してもあの2人、どちらにも勝てないわ」
メイタール様をあっという間に越して行ったぁ!? このプロットよりも強いこの人を!?
「そして2人と一緒に旅をすることになったわ。旅仲間は途中で3人程増えたわ。それがどの子も可愛い女の子でね。あの子にとってはハーレム状態よ」
世の男子が憧れる環境だな。
「その後、何年か後にね。人類の敵の魔王って存在を討伐したんだけど、そしたら人同士の争いが起きちゃってね」
どの世界でも変わんないな……。
「その子達は、平和の象徴として、自分達のいた村を拠点にある国を作った。その国はずっと平和な国で、世間ではエデンとも呼ばれてたりしたの」
すごいなその国。日本での天皇のような存在か。
「その国は今でもあるんですか?」
「えぇ。ずっと存在し続けているわよ。もっとも、今ではエデンとは呼ばれてないけど」
だから過去形だったのか。
「……でも、それからちょっとした時、5人の中の1人が消えた」
「……え」
「そしてそのすぐ後にまた1人消えた」
悲しい様子で語り続ける。
「最初の1人が消えたのをきっかけに、1人ずつ消え、最終的には仲間は私を残して、みんないなくなっちゃったの」
「そんなことが……」
「だから、その5人を探す。それが私の人生の目的なの」
優しく微笑みながらメイタール様は言う。
悲しいことを思い出させちゃったかな……。
「あ、これはごく数人にしか話してないことだから、あんまり話さないようにね」
人差し指をピンと立て、唇の前に持っていき、ウインクをしながら忠告をしてくる。
「セレス様と幼馴染みの子にはいいわよ」
セレスとレイにはいい? なんでだろ。
「ていうか、セレス様はもう知ってるけどね」
なんだ。
「っていうか、なんでそれを俺に教えてくれたんですか?」
「うーん。なんでだろうね? なんとなく話しちゃった」
この人、プロットが言ってた読めない人とはあんまり思わないけどな? 表情によく出てるし。
あ、この話の時は流石にそうなっちゃうとか? そうだったら申し訳ないな……。
「メイタール様! そろそろ交代を」
「あ、分かったわ。じゃあ、またね。シン君」
「はい。また」
そう言って俺は列の後ろに行く。
……あれ、俺、名前名乗ったっけ?
ま、王様に聞いたんだろうな。




