第21話 ツンデレ説浮上
「ならそれでいっか。ちゃんと話せよー。喋らないのは禁止な」
私はまずセレスと話すことにする。シンは男子で固まるみたいだし。
「セレス、話そ」
今更だけど王女様にタメ口ってすごいなー。みんなはもうセレスともう10ヶ月近く一緒にいるから慣れたんだろうけど。まぁ、私とシンも既に慣れつつあるけど……。
「はい。さっきの模擬戦、すごかったですね」
相変わらずいい子だなーこの子。こんないい子が人を憎むことがあるのだろうか。
「まぁ、共振武器の使い方以外は全部四天王直々の訓練だからね」
「え、四天王直々!?」
いつの間にか話を聞いていたクレアが驚いている。共に聞いていたミラ、カーラも同じような様子だ。
「なんで四天王様に訓練してもらえるのぉ?」
おっとりとしているカーラがそう聞いてくる。様って……。まぁ、この国の人からしたらそれが普通なんだろうけど。
「あ、実は私とシンお城に住まわせてもらってるんだ。そしたら四天王の方に会って何故か訓練してもらえることに」
「お城に? 何で? レイちゃん達のお家は?」
あ、やばい。私達が転移者は秘密の方向だった。どうしよ。
「実は、王都ではない別の村にシンさん達は住んでいたんです。そしてある日、シンさんとレイさんが森で遊んでいる時に村が魔物達に襲われて、村人はシンさんとレイさん以外……」
「あ、そうなんだ……」
「そこを偶然休暇で近くに帰村していた軍の隊員が保護し、お城にお2人が住むようになったんです」
「レイちゃん。ごめんね。何も考えずに質問して辛い過去思い出させちゃって……」
「あ、もう踏ん切りがついたから、大丈夫だよ。気にしないで」
セレスってやっぱり咄嗟の判断とかすごい!
みんなにバレないようにセレスにありがとう! という視線を送る。
セレスは、少し微笑んで返した。
「あ、それでなんで四天王直々に訓練してもらえたかと言うと、王城でシンさん達には護身出来るくらいの戦闘能力は必要だと話が持ち上がっていて、ちょうど四天王がいたからじゃあ任せた。となったんです」
「そうだったんだー」
うん、これも真っ赤な嘘だよね。護身出来るくらいの戦闘能力が必要だって話が……ってやつは前に聞いたことあるからほんとだと分かるけど。
だって前に……。
―――――――――
「あの、プロットさん」
「ん? どうした?」
「なんで私達を訓練してくれるんですか? 四天王という立場ですから当然忙しいですよね?」
「忙しい? 何言ってんだ?」
「え、だって四天王は国の最重要人物の1人ですよね。だったらそりゃ忙しいはずじゃ……」
「あーなんか色々頼まれたりはするけど面倒臭いしよく分かんねーしそういうのは大体断ってるからむしろ暇だぞ?」
「え……」
「んで、なんで訓練してるのかってのは3つ理由があるな」
「それは?」
「1つ目、暇だから」
人指し指だけをピンと立て、そう言う。
「……」
なんで真面目な顔でそんなこと言えるの……。
中指も続けて立てる。
「2つ目、弟子を鍛えるって面白そうだったから」
「……」
「3つ目、仕事断りすぎててウェンズにちゃんと仕事こなせ! って叱られそうでちょうどこれやったら面白いし仕事しなくて済むし一石二鳥だったから」
「……」
この人どんだけ仕事したくないの……。
―――――――――
という出来事があったからだ。
「それで、その四天王って誰なの?」
クレアはキラキラとした目で質問してくる。
「やっぱりメイタール様とか!?」
「メイタール様は流石に凄すぎるよぉ。私はフェリアス様がいいなぁ」
「私はカイラス様がいい」
うわ、すごい。恋バナしてるみたい。てか誰もプロットさんの名前出さないね……。
「あ、でもプロット様も有り得るよ?」
あ、出た。プロットさんもやっぱり様なんだ。あの性格で……。
「あーそうだねぇ。でも私としてはやっぱりフェリアス様かなぁ」
「それで、実際のところはどうなんですか?」
「あ、プロットさんだよ」
「「さん!?」」
「え?」
「レイちゃん、相手は四天王の方なんだよ!?」
「あ、いやでも私も最初は様にしたんだよ? でもやめてくれって頼まれてさ」
「あ、そうなんだ」
「シンなんて呼び捨てタメ口だけどね」
笑いながら告白する。
「「呼び捨てタメ口!?」」
わお、思った以上のリアクション。シンが目線を一瞬こちらに向けたのが分かった。
「いいなぁー私も四天王の方々とお近づきになりたい! あ、なんかごめんね。1人だけ突っ走っちゃって」
「ううん、大丈夫だよ。あ、それよりさ」
「どうしたのぉ?」
「みんなってセレスとかのこと呼び捨てで呼んでる?」
「うん。そうしてるよ」
「じゃあ私のこともレイって呼んで。ここに来てから普通に呼んでくれるのがシンしかいなくて少し寂しくなっちゃってさ」
「あ、村にはお友達も居たもんね……」
あ、そういえばそんな風にセレスが説明してたっけ。危ない危ない。もう忘れてた。
「分かったよぉ」
「分かった」
「ありがと!」
「っていうかぁ。さっきのレイの模擬戦すごかったよねぇ」
「あ、それ思った!」
「うん、すごかった」
「そう? 照れるなぁ」
「それにシン君もすごかったよね!」
「強いしかなりイケメンだし、優しそうだし、かなりの優良物件じゃない!?」
「だよねぇ」
「ねぇねぇ、シン君って優しいの?」
「うん、根はすごい優しいよ。偶に暴言言うこともあるけど、それはほんとにキレた時とかしかないから、あとは冗談で少し言う程度かな」
あれ、でもこっちの世界に来てからシン優しい口調全然聞かないな。気のせいかな?
あ、でも神界の時は驚いたな。てめぇ、ふざけんな! なんて聞いたことなかったもん。
……まぁ、私もそれは思ったから納得は出来たけど。
「「おぉー」」
何故かみんなから歓声と拍手が起こる。
「あれだったらマギアスともいい勝負出来るんじゃない?」
「マギアスって?」
「ほら、あの銀髪銀眼の首席君」
「へぇー」
「纏い使えるだけでもすごいのに2つもなんてねー」
「シンが2つ使えることなんて全く知らなかったよ」
「でも、2人とも2つ使えるんだから、同じくらいすごいよ!」
「ううん。シンの影纏いは極級、冰纏いも極級なんだ。それに比べて私は雷は中級、光は上級なんだ。やっぱシンはすごいやー」
伸びをするような動きをしながらそんなことを吐く。
「私達にとっては2人ともすごいんだけどね」
「でもレイさん、あれで完全に全力とは言わないでしょう?」
セレスが急にその事を突いてくる。
「あ、分かってたの?」
「え、レイあれで本気じゃなかったの!?」
「いやいや、本気だったよ。ただね、奥の手って言うのかな? シンで言う影鰐ね。あんな感じの存在があるんだ」
「じゃあなんで使わなかった?」
不思議そうに言うミラ。
「使わなかったんじゃなくて、使えなかったの。シンも私がそれを隠してるって薄々感じ取ってたんだろうね。全然思い通りにいかなかったや」
「じゃあ、それとシン君の影鰐だったら、どっちが勝つ?」
「うーん……。多分直撃したら重傷負うだろうけどまずその攻撃を受けないかな」
「えー何それー。気になるー」
「私も気になる。教えて欲しい」
「それはまだ内緒ね」
クスクスと笑いながらそう答える。
「えー」
クレアも笑いながら不満を漏らす。
「ところでさぁ、レイ。ほんとにシン君のことただの幼馴染みだと思ってるのぉ?」
「え、な、ほ、ほんとにただの幼馴染みだよ!」
私の白い肌が少し赤らむ。
「ほんとにぃ?」
「ほんとだって!」
「ただの幼馴染みでこんな年にもなって2人で森に遊びに行くかなぁ?」
……あ、そういえば、セレスがそういう説明しちゃったんだった。
ちらっとセレスも見るとごめんなさい! という思いが伝わる目をしながらこちらを見ていた。
ま、しょうがないよね。セレスも助ける為にあんなこと言ったんだから。
でも、どうしようかなぁ。これを切り抜けるには……。
「ま、まぁ……そう思ってないわけじゃないけど……」
「やっぱり!」
「そうだよねぇ!」
「当たり前」
みんな何故か嬉しそうに喋る。
「で、でも好きってわけじゃないから!」
「あ、何? レイってツンデレだったの?」
「ツンデレじゃない!」
「お前ら、どうしたの?」
と、そこにタイミング悪くシンがやってきた。
ほらぁ! あんなに騒ぐから! 来ちゃったじゃん! あれは切り抜けるための嘘なのに!
「あ、シン君。あのね、レイが……」
「わーわーわー!」
私は焦りながらもすぐにクレアの口を塞ぐ。
「ど、どうしたの?」
「なんでもない!」
「いや、なんでもなくは……」
「なんでもないから!」
……もう。あれは切り抜けるための嘘なのに。
……まぁ、そう思ってないことも……ないけど……?
私は誰にも気付かれずに1人で頬を赤らめるのだった。




