5話 アトラとほのぼの
次の日、クリオラは王都へと出発し、残されたボクはというと、朝一番で早速アトラと鍛錬をしていた。
父さんからお願いされ、二つ返事でOKを出したそうだ。
「ドーちゃんの恐怖に染まった顔が見たい」らしい。もうダメだなこのメイド。
アトラは剣でも魔法でもなく体術が得意らしく、ボクも体術だけで戦うことにした。
そして、最初の方は軽くウォーミングアップをして、やっぱりアトラに攻撃するの躊躇するなぁ…
「うわっ」「え」「ちょま」「ぐぇ」「ぉえ」
…と思っていた時期がボクにもありました。
「くっ…そぉぉぉぉ!!!」
隙を見つけて全力パンチを繰り出しても、
「よいしょ」
「うわあぁぁぁぁ!!」
軽く受け流されて天高く飛ばされる。
あれぇ??ボクって『勇者』じゃなかったっけ…?
メイドに負ける勇者…意味不明すぎる…。
「ぷげっ」
あまりの出来事に呆然としていると、地面に落下し(痛かった)、奇しくも昨日、クリオラに異次元砲でやられた時と同じような体制になった。
空が…青いなぁ。
「どうしたのドーちゃん。もう諦めちゃった?」
「いや、これはもしかして夢じゃないのかなあって思ってるだけ」
「現実逃避しちゃってるじゃん」
ぶちっ(血管の切れる音)
「だってさ!!わけわかんないよ!!アトラ別に鍛錬とかしてるの見たことないのに!!!」
「まあ昔ヤンチャしてたからね」
「ヤンチャ怖い!!!」
どうやったらこんなになるんだ…ヤンチャ怖い…。
「まぁそれに、メイドの仕事も意外といい運動になるんだなこれが。世間じゃ騎士とメイドの身体能力は同じとさえ言われてるからねー」
「うそぉ!?」
「まあ嘘だけど」
「嘘なんかい!!」
アトラの強さ見せられた後だから一瞬信じちゃったよ…。
「別に大したことじゃないのよ。私はドーちゃんほどじゃないけど天才型で、昔にヤンチャして、ドーちゃんより長く生きてるっていう、ただそれだけ。
まだドーちゃんが『体術』っていうのに慣れてないから私がまだ有利を取れてるけど、剣で闘ったら当然負けるし、体術でも多分あと1年くらいしたら越されると思うわ。ドーちゃんの戦闘力の成長度合いは異次元レベルだからね」
「そうかなぁ…」
もしかしたら戦ってる途中に剣が折れるかもしれない。
ボクに一番合ってるのは剣だけど、もし剣がなくなったら、自分の体だけでどうにかするしかない。
まぁ、アトラくらい超えていかないと将来邪神なんて倒せるはずもないしね。
体術、頑張るかぁ!
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鍛錬が終わったのは太陽が真上にきた頃。
ボロボロになったボクは当然母さんから風呂で体を洗ってこいと言われ、今日は一人でお風呂に。
鍛錬後はいつもクリオラと入ってたけど、夜はいつも一人だから別に一人も慣れっこ。
まあ鍛錬後は体を水で流すだけだし。ちなみに使うのはマジックアイテムで、結構流通してる温水を出すやつだ。
あー、あったかい。
お風呂でちゃんと体を綺麗にして、お昼ご飯を父さん、母さんと食べた。
うちのご飯は割と質素だ。まあ、貴族にしてはだけど。
パンと色々な具材の入ったスープ、魚の切り身。
食事中には母さんに改めてアトラの過去を聞いてみた。
前に聞いた時には貧民街で会って仲良くなった、くらいしか聞いてなかったから大変だったんだろうなとしか思ってなかったけど、実際は力にものを言わせてアトラは貧民街のボスみたいなことをやってたらしい。
ボスって言っても横暴な感じじゃなくて貧民街の人たちを統率して、喧嘩の仲裁とかしてたみたい。
なお、お母さんとアトラが会ったのはアトラが12歳くらいの時らしい。12歳で貧民街のボスって…。
今は貧民街大丈夫なのか聞いてみたら、時々見に行ってるから大丈夫なんだとか。
アトラすごいなぁ…。
ちなみに現時点の総合力では
アトラ<<ドーキガン<<<<<<<<クリオラ
くらいです。クリオラはすごいぞ(でもドーキガンくんはこの壁をエグいスピードで殴り壊していってる)
あと、アトラは割と世界でも最上位クラスの強さです。存在値300以上なんで当たり前ですけどw
つまり、子どものころちょっと暴れただけで世界最上位の強さになった才能の塊。なぜメイド業に転職したのか…。
なお才能は
クリオラ<アトラ<<<<<<<<<ドーキガン
の模様。