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君と創る歴史  作者: 秋月
第1章~異なる世界~
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第6項:練習試合

壮絶な質問の地獄の日の翌日、シグレはベッドで安らかに眠っていた。

別に危ない意味の方じゃないので死んではいない。

頭を掛け布団の中に潜り込ませているので少しずつ息が苦しくなってくる。

失われた酸素を補充するために頭を出すと眩しい陽の光がサッと彼の顔を照らした。

目をうっすらと開くと青年がカーテンに手をかけていた。


「おはよう、シグレ」

「…おはよう」


カーテンを端まで引っ張って止めている彼は、カディウス=フェブレード。

薄い青色の前髪が少し長いショートヘアの青年だ。

歳はシグレと同じであり、シグレにとっては学園での友人第二号である。

彼の漆黒の瞳は、陽の光を受けて鮮明にシグレを映し出している。


「今日は休みだけど、園内を案内するから着替えなよ」

「ああ…わかった」

「それとシンボルも届いているから、あとで服につけといてね」

「ああ…わかった」

「…シグレ、起きてる?」

「ああ…わかった」


ハァとカディウスは溜息をすると、胸ポケットから取り出した指輪を指にはめて「リカバー」と唱えた。

彼の指から放たれた小さな光はシグレの目の前までフヨフヨと飛んでいき、ぱちんと弾けた。

途端、シグレは覚醒した。


「おはよう」

「カディウスか…おはよう」


ちなみに何故シグレがカディウスと共にいるかというのは、昨日の質問攻めの後にまで時は遡る。




   ***




「おや、もうこんな時間だ。シグレ、そろそろ帰るぞ」


壮絶な質問攻めによって疲弊しきっていたシグレは「わかった」とだけ伝える。

それを聞いていた上位組の集団の一人がちょっとした騒ぎの原因となる一言を発してしまった。


「シグレ君。どこに泊まるの?」

「えっ?」


その言葉にシグレは返答できない。

それもそのはずで、この王都に来てからは全てサンに任せていたので今日の宿泊先を知らないのだ。

すぐに振り返って、サンに問いかける。


「サン、俺ってどこ泊まるの?」

「何を言ってるんだ。この学園は全寮制だぞ?学園の寮に決まっているだろうが」


サンは何を今更、という顔つきでシグレの質問に答えた。

だが、その言葉に疑問を投げかける者がいた。


「なぁ、入寮届け出したのか?学園の寮は、魔法で作られてるから入寮届け出さないと部屋作ってもらえないぞ?」

「…サン」

「………」


その事実を語った青年を見てから、再びサンの方を振り返ると沈黙しつつかなりの汗を掻いている彼女の姿がそこにあった。

その光景に、シグレは悟った。

届けを出していない、と。


「俺、今日どこで寝よう…」


シグレがボソッと呟くと、サンはある一つの提案をした。

これこそが、騒動の一番の原因となった。


「…仕方ない。私の部屋に来るといい」

『!!!!!!!』


刹那、周りの空気が凍った。

そんな事に微塵も気づかず、二人は淡々と話し続ける。


「いいのか?」

「これは入寮届けを出していなかった私の責任だ。遠慮する事はない」

「そっか……じゃぁ、お言葉に甘え――――」

「ストーーーーーーーーップ!!!」


ビクッとした二人が見た先にいるのはイグサだ。

大声を出したせいか、肩で息をしている。


「ど、どうしたんだよ、イグサ」

「いや、どうしたじゃないって!まずいって!それ、教育上よろしくない事がいっぱいだって!!」

「…そうなのか?」

「いや、分からん」


何が何だか分からない二人を前に、今まで唖然としていた全員がいきなり騒ぎ出した。


(何、この二人、そういう関係なのか!?)

(若い二人が部屋で二人っきり…危ない香りが!)

(そんなぁ…)

(狙おうと思ってたのになぁ…彼)

(そんなはずはない、彼女がそんな関係のはずが!)

(総員、混乱している模様。この混乱が収まるために出来る方法…時の経過)

(くっそぉぉぉぉ!)


その後、この混乱は夜遅くまで続いて結局の所は一時相部屋を申し出たカディウスのところに厄介になることとなった。

相部屋になったという事と彼が勤勉家である事がシグレには幸運だった。

カディウスとシグレは勉強や本の事で意気投合し、すっかり親友となっていたのだ。


「シグレ、ここが食堂。朝はここで朝食をとってから学園に行くんだけど、始業が早いから寝坊しちゃ駄目だよ」

「ああ、気をつける…」


今、シグレとカディウスのそれぞれの前にあるのは多種多様なパンとスクランブルエッグやベーコンといったものだ。

この学園では、朝は基本的にバイキングらしい。

飲み物の方に目を向ければ、コーヒーやココア、ミルクにコーラ等…こちらも多種多様なものが揃っている。


「豪勢なんだな…。俺はいつも、朝はトースト一枚とココアだけだった」

「当然。ここは、国の未来を担う騎士を育てる場所だからね、それだけ優遇されてるんだ」

「ふ〜ん…」


そう相槌を打ちながら、クロワッサンを手に取って少しちぎって口の中に放り込む。

いつも食べていたトーストとはまた違った味が口の中に広がる。

その味を、今まで飲んでいたものとは全然味が違うココアで流し込む。


「そういえば、さっきシンボルがどうとか…シンボルって何なんだ?」

「シグレって学園案内の冊子とか読まないタイプだね、きっと」


カディウスは溜息をつくと、シンボルについて説明をしてくれた。

シンボルとは、その学園の生徒である簡易の身分証明の物であると共にその者のクラスは属性を示すものだという。

騎士組のマークは片方のガントレット、魔法騎士組は小さな六芒星、治癒騎士組は十字架。

聖騎士組は剣と盾を交差させたもの、賢者騎士組は魔方陣、忍騎士組は大きな十字手裏剣のマークである。


「それらのマークに加えて、その人自身の属性の色がシンボルの基調になるんだ」

「属性?」

「あ、そっか。途中から来たから分かるわけないよね」


カディウスは「ごめん」と言って、属性の説明を始めた。

属性は全てで五つあるらしい。というか、それ以外見つかってないらしい。

その五つとは、炎・氷・風・樹・地である。

また、属性には強弱関係があるらしくそれが戦いの基本であり鍵ともなるとのこと。

強弱関係は以下のとおり。

『炎→氷→風→樹→地→炎』

矢印の先にあるのがその属性が優位である相手の属性である。

例えば炎は氷に強く、地に弱い…など。


「炎は赤色、氷は青、風は白、樹は緑、地は茶色なんだよ。ちなみにシンボルの色は着けると変わるからね」

「なるほどね…それじゃさっそく」


シグレはポケットに入れてあったシンボルを自分の左胸の所につける。

真っ黒な服なので、できるだけ目立つ色がいいなとか思ってたりもする。

しかし、結果は希望に反し…


「透明?」

「あれ…ああ、そっか。シグレ、まだ試合やってないんだね」

「試合?しないといけないのか?」

「一度戦わないと属性は出ないんだ。じゃぁ、学園内回る前に相手探そうか」


シグレとカディウスは自分の皿にあった物を全て食べ終えると中庭へ向かった。

中庭には休みにも拘らず多くの生徒で賑わっており、それはいつもの光景らしい。

シグレの一歩前を歩いているカディウスの肩をちょんちょんと叩く。

それに気づいて、彼は振り返った。


「どうやってその相手ってのを探すんだ?」

「簡単だよ。…ほら着いた」


彼の目の前にあったのは小さな鐘楼だった。

小さいが色は金色でいかにも高そうな代物だ。


「じゃぁ、これを鳴らして」

「ああ」


言われるがままに鐘楼の隣においてあった小さな木槌で鐘をそっと叩く。

だが、そっと叩いたはずなのにその凛とした鐘の音は中庭中に広がり、今まで談話していた生徒は一斉に木槌を持っているシグレに注目する。


「彼は試合相手を探している。誰か、相手をしてくれる者はいないか!?」


いきなり自分の隣で大きな声をあげる友人にシグレは少し驚く。

さっきまで自分と離していた時の顔はそこになく、今の彼の顔はとてもキリッとしている。

そのカディウスを見て、周りの生徒達は一斉にコソコソと会話をし始める。

耳を少し傾けてみると―――


「あれって賢者騎士組のカディウス様よね?隣にいる方は誰なのかしら?」

「カディウス様と同じくらいカッコいいんじゃない?いや、むしろもっとカッコいいかも…」

「あのカディウスさんと一緒って事は、隣の奴も上位組か?」

「どうやらそのようだね。彼のシンボル、色はまだないけど聖騎士組のマークだ。おそらく、属性覚醒のための募集みたいだね」

「つーことは、素人?じゃぁ、俺でも勝てるんじゃね?ここで勝てば一躍有名になれるぜ」

「ふ〜ん。そんなに自信あるならやってみろよ。いくら上位でも素人なら勝てるだろ」

「よっしゃ。行ってくるわ」


何か色々言われてるなぁ…。

とか何とか、思っているうちに一人の青年が出てきた。

体つきは良く、服を着ていても分かるくらいの筋肉の持ち主だ。


「俺がやります」


青年はカディウスに一礼すると、自身の武器を取り出した。

カディウスはその一礼を返してスタスタと離れていった。

邪魔にならないためだろう。

歩いていくカディウスから目を離し、相手を見る。

相手が持っている武器はかなり大きな大剣で、少なく見積もってもシグレより大きいのは確かだ。

相手は、大剣を地面にザクッと刺すと一礼してきた。

慌ててこちらも礼を返す。

その様子は、ある人物からも見られていた。

一人はサンである。屋上でごろごろしていた彼女は鐘の音を聞いてシグレを見つけたのだ。


「頑張れ…」


そう言うと再び彼女は寝転がってごろごろし始めた。

そして、もう一人のある人物は校舎三階にいた。

窓越しにシグレを伺う彼女の美麗である黒の長髪は少しだけ舞っていた。


「アイツが噂の転入生か…。さて、実力はいかほどに…」



互いに礼が終わると、彼が地面に突き刺さった大剣を抜く。

どうやら、互いの礼が試合開始の合図のようだ。

シグレはそっと腰の鞘に手をかけると、シャランと音のなりそうな抜き方で刀を抜いた。

その瞬間に周りにざわめきが広がった。

対戦相手も驚愕の表情を隠せていない。


「それじゃ、よろしく」


俺は自分の手にある漆黒の刃を相手に向かって突きつけた。

相手はその挑発のような行動に対して、先程までの驚愕表情を消してジリジリと間合いを取りながら円を描くように動く。

シグレも相手と左右逆の動きをして、互いが円を描くように移動する。

やがて、先に動き出したのは相手だった。

大きく大剣を横薙に払ってくる。大きな剣のわりに早く鋭い一撃だった。

それを大きく下にしゃがんで避けるが、髪の先をチッと掠る。

「あ、あっぶねえ〜〜〜」と心の中で叫びつつも、右足で思い切り地面を蹴りつけ相手の懐に潜り込む。

相手は反応できていない様子。これはチャンスだ。

シグレは刃を逆にし、峰のほうで大きく手を狙って斬り上げた。

その瞬間、漆黒の闇に浮かぶ月は青き光を灯していた。



「ほう…。やはり…」


三界の窓越しから見ていた彼女は感嘆と共に予測どおりの結果からの言葉を漏らした。

今まで開いていた黒の瞳は閉じられ、踵を返してツカツカと歩いていった。



シグレの斬り上げは相手の手を正確に捉え、相手の大剣を弾き飛ばした。

周りはカディウスを除いて唖然としており、そんな中カディウスはスッと手を上げた。

勝負ありのサインだ。


「そこまで!」


シグレはその言葉を聞いてホゥッと息をつくと、刀を鞘にゆっくりと納めた。

一息入れているシグレにカディウスは近づいてきた。


「君の属性は氷のようだね。シンボルと君が弾き飛ばした剣を見てごらん」


そうしてシンボルを見ると今まで透明だったマーク以外の場所が青くなっており、剣を見れば綺麗な氷で包まれていた。


「これ…おれが?」

「そうだよ。聖騎士とは属性付与強化の魔法を操る騎士の事を指すんだ。騎士組なら、下級属性魔法しか使えないんだ」

「そっか…俺が…」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


シグレが自分の掌を見詰めていると、途端に大歓声が上がった。

尊敬や驚愕の声、果てには女子軍の黄色い声までもが混ざっている。


「君に勝利に対する歓声だからさ。応えてあげなよ」

「ああ!」


シグレが刀を思い切り上に上げると、大きな大歓声が再び中庭に響いた。

こうして、シグレの存在は一日にして学園に知れ渡ったのだった。


今回はいつもより少なめです。

次から少し長い物語になるので、短めでいいかなぁ〜っと…。

やたら時間かけたくせにこれかよって感じた方はスイマセン。

さて、これはまだ実行するかは決めておりませんがアトガキの部分でキャラ紹介でもしようかなと思っています。

ネタばれにならないようにかなり後からの紹介になると思います。

ちなみに理由は作者の文章力がない事からくるキャラの理解のしづらさを考えてです。

とにかく、これからも頑張っていきますので。

それでは!

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