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君と創る歴史  作者: 秋月
第3章~王国騎士選抜試験~
36/48

第35項:I am……

朝早く始まった騎士選抜試験。

国を守護する名誉ある騎士になる一番の近道を通過する為に生徒達は奮闘するも……。


『何だよこいつ!』

『きゃぁっ! もっとちゃんとサポートしてよ!』

『おいこっち護れよ! 詠唱できねえじゃん!』

『ちっ。こんな奴と組んでなきゃ……』


癖の強い獣に慣れないパートナーとの共闘は生徒達が思っていた以上に手強く、上手く戦うことの出来ないペアが多数続出する。

その殆どがパートナーと息を合わせることが出来ずに互いに孤立してしまうか、拙いコンビネーションを複数の獣の力で圧倒され成す術もなく終わるかであった。

急遽決まったペアで獣に勝利した者達はほぼ無に等しく、いつも一緒にいる仲間同士でさえもそう上手くはいっていない様子だった。

また、試験が終わった者たちは少しばかり離れた場所で待機している。

結果こそ知らされていないものの、殆どのものが気落ちしているのが目に見える。

そんな中、シグレたちも緊張と言うほど緊張はしていないが、多少気を張り詰めた状態だった。


「はぁ~……ったく情けない。……次、……アニー=トレアベル」

「ひゃ、ひゃいっ!」


ダラダラと呆れた様子でバーンが呼んだ名前はアニー。

気を張り詰め続けていたアニーは声が裏返ってしまったので顔を赤らめつつ人混みの中を何とか人を押し退けつつバーンの前へと歩みを進める。

そのアニーのパートナーであるイグサもまた、続いてバーンの元へと向かうがその途中、サンの隣でピタリと足を止めた。

サンが不思議そうな表情でイグサを見る。


「…イグサ? どう―――」

「アタシ、負けないから」


どうしたのだ、と問いかけようとした矢先、唐突にイグサの言葉で遮られる。

イグサは隣にいるサンにしか聞こえない程度の声量で淡々と話し続ける。


「アイツは王子でアンタは姫様、で……アタシは忍。釣り合わないのは分かってる。サンは綺麗だし、アタシより強い。アタシの持っていないものをたくさん持ってる。……でも」


イグサはポカンとしているサンを横目で見やってキッと目を釣り上げる。


「まだ、決まったわけじゃない。アイツの隣にいるのはアタシ。これだけは、譲れないから」

「イグサ、それはどういう―――」

『おーい! アニー=トレアベルのパートナーは早く出て来い!』


今度はバーンの声で遮られ詰まってしまう。

イグサは目線を前へと戻すと、人混みをすり抜けるかのように走り去ってしまった。

それを後ろから立ち尽くしたまま見詰める。


「一体、なんなのだ……」


サンは訝しげに顔を顰めるも、心の奥で湧き上がっている感情には気づいてはいなかった。




   ***




「遅い。呼ばれたらさっさと出て来い」


バーンの少し苛立ち気味の声に軽く会釈し、イグサはアニーの隣に立つ。

アニーがチラリと此方を見てくる。


「何か、あったのですか?」

「ううん、なんでもないよ。それよりも戦闘はさっき言った奴でいい?」

「はい。私がサポートでイグサ様が攻撃、ですよね」


ヒソヒソと内緒話でもするかのように小声で囁きあう。

が、バーンの額に薄っすらと青筋が浮かんだのを見るやいなや二人は弾ける様に姿勢を正した。


「アニー=トレアベルのパートナーはイグサ=ハーミレイ。間違いは無いな?」


コクリと無言で頷くと、バーンは何かを書く仕草を取る。

それは閉じられたままのノートに情報を記す魔法だったのだが、イグサとアニーはそんな事を知る由もなく、またその行為自体を疑問に思うことも無かった。

やがてバーンが手の動きを止め、すぐさま自身の後方―――先程まで他の生徒が使っていた場所を指差した。


「行ってこい。言わなくとも分かってはいるだろうが、お前たちがフィールドに入ってから約一分後に転移魔法陣が展開される。更に一分経つと転移が始まる。試験獣が出現したらスタートだ。では、健闘を祈る」

「「はいっ!」」


染み入るようなハッキリとした声を上げ、イグサとアニーは小走りでフィールドへと向かう。

それに続くように二人の後ろを歩いていくバーンの顔には期待の笑みが浮かんでいた。


「(さあ見せてくれ。お前たちの成長を)」


他の誰にも悟られることの無い、バーン自身だけが自覚している笑みを浮かべる。

若い奴ら……と言えば自分が余りにも老けているような感じなので言いたくはないが、若い奴らが成長していく様を見るのは楽しいものだ。

無限に存在する未来の自分へと繋がる可能性というなの道。

どんなヒトがどんな道を進み、どんな結果へと収束するのか……職業にしろ、強さにしろそれを見るのが楽しくて仕方が無い。

ましてやそれが自分の生徒ともなれば尚更だ。

そして、今自分にとって最も興味を惹かれる対象―――気をかけている奴らがこの場に七人いる。

特別な使命を負いながらも退く事無く全てを照らし育む全く正反対の光を放つ二つの存在と、光を受けて無数の道の内最高のものを選び抜き走り続ける五人。

不謹慎ではあるが、バーンは心のうちに潜む興奮を抑えきれないでいた。




   ***




頭の上でピンと立った猫の耳をヒクヒク動かす少女と尾を上下させている少女。

二人は機が来るまでひたすらにそわそわし続けていた。


「いい、イグサ様。お、おおお落ち着いていきましょう」

「…アンタの方が緊張してない?」

「しし、してません。それに! イグサ様だってさっきから耳がずっと忙しなく動いているじゃないですか」

「それは……あれよあれ。周囲の状況を…」


―――ヴン。


「「っっ!」」


やいやい言い合っているうちに二人の前に水色に光る陣が現れる。

六芒星を核とした円を包むように描かれたもう一つの大円。

陣の細々した所まで余す所なく刻み込まれた術式は多量の物質を運ぶ大型転移魔法陣のそれだった。

 普段使っている陣は人だけを運ぶものなので術式もそこまで複雑ではなく、陣の大きさもせいぜい直径一メートルほどだ。

だがこの大型転移魔法陣は直径はゆうに二十メートルはあろうかというまさに大型であった。

 突然現れた魔法陣に驚き、イグサもアニーも尻尾の毛までがビンと逆立つ。

ゆっくりと顔を見合わせて互いに小さく頷き己が武器を構える。

その瞬間、今までのような穏やかな空気は一転して凍りつくような冷たいものへと変わった。


45 44 43……


心の中では陣が現れた瞬間からカウントダウンが開始されている。

メトロノームのように正確かつ変わらぬリズムで少しずつカウントは零へと向かう。


27 26 25 24…


森の中を涼しげな風が通り抜け、二人の髪を小さく揺らす。


12 11 10…


イグサは微かに目を細め、左足に体重をかける。

目を閉じたアニーは心を落ち着かせて集中、魔法の詠唱に入った。

そして……


「(3 2 1……)」


大きく踏み込むと同時にカウントは……終わりを迎えた。


「0!」


イグサが魔法陣に向けて突き進むと同時に、転移されてきた獣たちが光と共に姿を現す。

が、獣たちは視界が開けた瞬間に暗闇へと突き落とされることとなる。

銀の軌跡を宙に残しながら振るわれる忍び刀”獅子王”は鮮血を浴びてもなおその輝きを失わず、小熊のような獣の身体を切り裂いていく。

イグサが魔法陣の上を通り抜けて身体を反転、後ろを振り返れば既に絶命した獣が数体山積みになっている。


「イグサ様っ!」


アニーが声を上げて手にしている錫杖”鈴命”を振りかざすとシャンと音を立てる。

すると鈴命から光が放たれイグサの両目に突き刺さるようにして収まった。

 留まる事を知らない魔法陣からは新たな獣が出現する。

一体の獣がイグサを攻撃しようと下段からの攻撃を仕掛けるも、それを身軽にかわして後方へと大きく飛び上がる。

イグサが獣に投擲の照準を合わせようとする時、視界には獣の動きに合わせて動き回る小さな円が映る。

円は数を増やし、複数の敵を内に捉えると各円の直ぐ横には「LOCK ON」と映し出された。

たったそれだけであるはずなのに、不思議と外す気はしなかった。


「せぇい!」


流麗かつ手早く投擲され獣の身体に一本ずつ綺麗に突き刺さるのは苦無。

深々と身体の奥まで食い込む鉄の塊に悲鳴を上げ怯む獣たち。

イグサは重心を落とし逸早く着地すると逆手に握る獅子王を再び振るう。

しかし、今回は肉を裂くのが目的ではなかった。


「”爆鎖円・改”!」


―――キンッ、と金属同士が触れ合う音が微かに響く。

イグサが群れの中を駆け抜ける際に、一体の獣に突き刺さった一本の苦無に軽く獅子王を当てたのだ。

直後、広場には爆発が起こり、それに釣られるようにして爆発が起き、誘爆していく形で円を描き出した。

仕込み火薬を使ったイグサの十八番の技である。


「流石イグサ様、凄いです……っ!ふぇ……きゃあぁ!」


イグサの技に思わず感嘆の息を漏らしていたアニーだったが、直後にドゴンと鈍い音とアニーの悲鳴が響いた。


「っ!? アニー!」


突如上がった相方の叫び声に即座に反応し転身すると、爆発の余韻が残る煙の中から飛び出す幾つもの岩石と、それ等の岩の弾幕に包まれて縮こまるように伏せているアニーの姿がそこにはあった。

身体のギアを全開にし、すぐさま駆けつけようとしたその時だった。

煙の中から飛び出す複数の岩のうちの一つがアニーに直撃するコースの軌道を進んでいた。

その瞬間、イグサの目が猫のそれのように細くなる。


「うがあああああああああ!!」


手に持っていた獅子王を放り上げるように投げ、それを上手く口で咥えると叫びを上げながらアニーを襲う岩へと全力で突進する。

途中で自身にも襲い掛かる岩を反射的に叩き割るも、砕いた岩石の欠片はイグサの顔や手足に無数の傷跡を残していく。

それでもイグサは猛進を止めようとはしなかった。




   ***




やっぱり私には無理だったのかな―――。


私が兄様たちと一緒に歩いていくことは―――叶うことのない夢なのかな。


そんな考えが、頭の中に入り乱れるように交錯する。

自分に向かって集中砲火のように打ち出される岩石の雨。

その中をアニーはしゃがみ込み、鈴命を抱きつくような形で抱え込んで震えていた。

体のすぐ傍の地面に岩石がめり込む度にビクッと小さく震える。

その大きな瞳にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。


「シグレ兄様…サン姉様…」


掠れるような声で自分が最も慕う二人の名前を呼ぶ。

出会ってからというもの、殆どの間自分の隣には二人のうちのどちらか、もしくは二人ともいた。

流石に学園の授業などのときや用事などがあるときは一緒ではなかったけれど、修行のときやご飯のときはいつも隣にいてくれた。

だから、私はここまでこれた。

だけど……。


「…誰も、いない」


横目で自分の右を見ても左を見ても、頼れる二人の姿は見当たらない。

分かりきっていたことなのについ見てしまうのはもはや癖だろう。

隣に誰もいないことを改めて確認してしまうと、さらに心細くなってしまう。

それでも自分と一緒に戦っているはずのイグサがいるはずだとアニーはふと思い出し、飛んでくる岩石に当たらないように注意しながらゆっくりと顔を上げる。

その瞬間、アニーは驚愕し動けなくなってしまった。


「あ……ああ……」


目の前には自分に向かってまっすぐ飛んでくる巨大な岩。

逃げようとしても反応しない自分の足。

そして…


『うがあああああああああ!!』


どこからか聞こえてくる唸り声のようなイグサの叫び。

幾つもの絶望的な要素が重なり合い、アニーの思考は恐怖・怪我・失格・迷惑…と様々なネガティブな色に染まる。


「(私、死ぬのかな……)」


無駄とわかってはいるものの、本能的に腕で前に壁を作りアニーは目を閉じた。




   ***




「…お前ら、観戦するのは構わんが、いい加減武器を収めろ」


バーンが投げかける先にはそれぞれ自分の武器に手をかけ、今この瞬間にも飛び出して行きそうなシグレたち。

試験官であるバーンの宥めに内心不服ではあったがゆっくりと武器にかけていた手を下ろす。


「今までずっと見て思ってはいたが、お前たちは少しアイツを甘やかしすぎだ。アイツだって一人の騎士見習い。学園に入るには本人の意志が最も尊重されのだし、この選抜試験もまた然り。本人の意志なくして進むことなど不可能なのは分かりきっているはずだ」


確固たる意志を持つという事は即ち己が覚悟を決めるという事。

俺はアイツに頼まれてからずっとアニーの事を見続けてきたが、アニーは決して弱くはないし、自分を貫き通す意志も持っている。

だが、最近ここにいる仲間―――特にシグレとサンという尊敬し慕う頼れる二人の出現により、強い一面が影に潜んでしまっている。

だからこそバーンは学園からここに転移する時に少しだけ小細工をしたのだった。

アニーを、全てに置いてアニーが信頼を委ねている二人の隣に転移しないように。


「少しはアイツを―――短い間だがお前たちと一緒に歩いてきたお前たちの仲間―――アニー=トレアベルを信じてやれ。それにアイツは、一人で戦っているわけじゃないだろ?」


バーンがそう言い終えるや否や、辺りに木霊するかのような叫び声が轟く。

何事かと思いシグレたちは自分たちの教師に向けていた視線を声の出所へと向け、そして安堵した。

目に映ったのは忍者と呼ぶに相応しいスピードで一目散に駆ける仲間の姿。

その光景はシグレたちが安心するには十分なものだった。




   ***




目を閉じ、既に諦めの色を隠しきれないアニーは自分に迫っているであろう激突の痛みに只管怯え震えていた。

恐怖によって心が支配され身体は岩のように硬く強張る。

……が、何時まで経っても向かってきていた岩石がもたらす衝撃は訪れない。

恐れと同時に湧き上がる疑問の感情と共に困惑しつつも、アニーは身構えたままゆっくりと目を開いた。

そして、目の前に立ちふさがる存在に呆然としてしまった。


「イグサ………様?」


自分に背を向け、膝を地面につけて口にいつもの忍び刀を咥えたまま、両手で印と呼ばれるものを形作っている。

気づけば薄らとした橙色の立方体が自分たちを覆い、飛来する岩石はすり抜けるかのように後方へと飛んでいく。


「………無事、よね?」

「何で……っ! イグサ様その身体!」


自分と敵の間に立ち塞がるように佇む身体は鋭い何かで裂かれたかのような切り傷が点在し、自慢の忍び装束も所々が破けている。

それを見てアニーはハッと気がつき、ある一つの事柄が頭に浮かびあがる。


「も、もしかして……私、を、助けるために……?」

「…………………」


イグサは肯定も否定もせず、全くの無反応のまま押し黙る。

そこでアニーは先ほどのイグサの叫び声を思い出し、悟ってしまった。

―――さっきの叫びは自分を助けようとして上げていたものだったのだと。


「私、が……弱く、て頼り、ないから…。私が……」


弱い自分を呪うかのようにポツリと言葉を洩らす。


「サン姉様たち、ひっく…みたいに、強く…ないから」


嗚咽交じりの小さな小さな呟きをイグサの耳がピクリと反応して捕える。

イグサは両手で結んでいた印を解いて片手だけで再度新たな印を結び、口に咥えてあった獅子王をもう片方の手で掴むと勢いよく地面に突き立てる。

胸にある鈴がチリンと音を立てた瞬間、パシンと乾いた音が結界の中に響いた。


「……え?」


アニーは呆然とイグサを見ていた。

振り返り際に上げられた手によって叩かれじんわりと赤くなった頬を押さえて。

対してイグサは目を大きく開き見下ろすような形でアニーを見、叩いた側の手をアニーの肩に乗せて口を開いた。


「アンタは誰?」


意味がわからないイグサの不意の問いにアニーは狼狽する。


「アンタはシグレ? サン? カディウス、ウェイバー、カノン…それともヴァルナ? 違うでしょ。アンタは誰?」

「私は……」


謎掛けのような問いに、アニーの涙はいつの間にか止まり、必死にイグサが求める答えを思考する。

だが不意にそんなことを訊ねられてもこの状況下ではそこまで深くは考えられない。

結局のところ、アニーは単純かつごく当然の答えしか思いつかなかった。


「私は……アニー=トレアベル…です」

「そう。アンタはアニー=トレアベル。ならアニー、アンタが戦いですべき事って何?」

「あ…………」

「シグレやサンのように先陣を切って特攻する事? アタシやカノンのように速さで駆け回る事? アニーはそんな騎士だった?」

「私は……私にできる事は……」


何度か自問自答するかのように繰り返した後、目の前のイグサをまじまじと見つめる。

その少し日に焼けた自分でさえも綺麗だと思う肌に浮かぶ痛々しい傷が目に飛び込んでくる。

そしてアニーは悟った―――自分ができることを―――自分がすべきことを。


「ちょっと、失礼します」


自分の肩に乗るイグサの手を恭しく丁寧に退けてシャンと鳴り響く鈴命を振りかざす。

流麗な動作によって鈴命は数回澄んだ音を奏で、杖尻は吸い込まれるように地へと突き刺される。

アニーは祈るように両手を組み合わせた。


「我祷天届望…地癒彼者集給……”救いの雫(エイド)”」


それは聞き慣れない言の葉。

静かに紡がれたが凛と響く詩は岩石の騒乱の中でも確かにイグサに届いた。

―――慈愛が添えられた癒しの力と共に。


「私がすべき事は――――――仲間を、大切な人たちを癒し、支え、護る事です。私、自分を見失ってたんですね」


テヘヘ、と自嘲気味に笑いを零す。

イグサも普段どおりに戻ったアニーを見て穏やかな瞳になるが、直ぐにまた鋭い瞳へと戻る。


「こら、気を抜かない。まだ戦いは終わってないんだからさ」

「は、はい!」

「さっき、岩の間を縫ってここに来るときに確認したけど、相手は岩石兵(ゴレム)。それも相当大きい奴。何よりあの岩を連射してくるのが厄介ね」

「ご、岩石兵…ですか」


岩石兵といえば地属性でも最もポピュラーな獣。

獣なのかといわれれば、分からないと答えるしかないのだがとりあえずは獣、らしい。

全てが岩石で構成された人型の獣―――それが岩石兵である。


「あの連射砲を止めることさえできれば岩石兵はただの置物の様なものなんだけどね…。だけど止めるためには…………アニーにも頑張ってもらわないといけない」

「えっ……!」


思わず素っ頓狂な声を上げてしまったアニーは慌てて恥ずかしげに口元を抑える。

ふふっ、と口元を緩めながらもイグサは続ける。


「まず今アタシたちを包んでる結界。これを解かないとアタシは動くことができない。つまり、一回この結界を解かないとアイツを倒そうにも倒せないわけ」


「大丈夫?」といった視線が向けられるがぶんぶんと頭を上下させて肯定の意を示す。


「で、次にアイツの岩。打ち出す時に相当の反動があるのみたい。そしてその反動に負けないように身体を支えているのは……」

「足、ですか?」

「そ。あの巨体を支えているあのぶっとい足。あれなら岩の放出の反動にも負けないだろうね。……でも、それは足が地に付いている時の話」

「足が地に付いている時の話、ということは……まさかイグサ様っ!」

「そのまさか、ってわけ」


イグサは少しだけ口を笑みで歪ませる。


「だけど、さっきも言ったけど一度この結界を解かないといけない。だからアニー」

「は、はい!」

「アタシがアイツを引き付けるから、一人で岩の射程圏外に行ってアタシのサポート。出来る?」

「私…一人で」


自分は仲間内で一番体力がない。

皆が知っているであろう事だし、情けないと思うけど自分自身で自覚もしている事実。

それを承知でイグサ様は私にそう言った。

それは―――


「アタシはアニーがずっと努力してるのを見てたから。アタシだけじゃない…シグレやサン、他の皆だってそれは認めてる。自信を持って…って言うのも可笑しいか」


「たはは」と照れを隠すように軽くはにかむイグサ。


「と、とにかくアタシは信じてるから! 何と言われようと、アタシたち(・・・・・)は仲間を信じるから」


イグサは照れを隠すためか今度はアニーに背を向ける。

アニーも妙に気恥ずかしくなりはするも、心は嬉しさで溢れていた。

それが例え自分を励ますために言ってくれた言葉でも、今はただその言葉だけで十分だった。


「はいっ!」


快活な返事と共に、アニーはこの戦いで初めて笑顔を見せたのだった。

「亀更新って…何のことなのですか?」BYアニー

「とても更新が遅いって意味だと、作者は捉えてるみたいだよ」BY(最近影が薄い)カディウス



どうも亀更新で有名な秋月です。

部活も無事引退し、塾に入って受験勉強が始まったのはいいのですが……あれです。

まさかの休・日・返・上。

塾の時間割上致し方ないことではあるのですがまさか自分が必死で勉強することにはビックリデス。

中学はぜんぜんやってなかったのに…。

というわけであまり時間が取れない…といえば言い訳ですが、そのため執筆もチマチマといった感じで進んでおります。

一話一話の字数を減らして更新していこうかとも模索中です。

こんな作者ですが、頑張って更新だけは続けていこうと思っていますのでこれからもよろしくお願いします(ペコリ

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