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君と創る歴史  作者: 秋月
第2章~悠久の時を超えて~
29/48

第28項:過去、美しき氷のセレナーデ 其の三

俺は夢の中にいた。

私は夢の中にいた。

アタシは夢の中にいた。


意識を失った三人―――シグレ、サン、イグサは不思議な浮遊感を感じていた。

三人はそれぞれが同じ夢を見ている事を知覚していなかった。

言ってみれば三人とも同じ夢を共有して見てはいるものの互いの存在には気づいていない。

そんな状態だった。



周りが森に囲まれる中、大きく開けた小高い丘。

他の場所より少しだけ高いその場所は小さな山と表現してもいいだろう。

山の頂上にはまるで丘を見守るようにどっしりと構えるかの如く大樹が天に向かって伸びている。

大樹に生い茂った青葉は太陽の光を遮り、自身の下にいかにも涼しげな陰を作っている。

そんな小高い丘で、少年達は運命的な出会いを果たした。


『えっと、初めまして』


最初に口火を切ったのは小さい剣を持つ貴族風の少年だった。

短いながらも綺麗な黒髪が風で小さく揺れている。


『うん、初めましてだね!』


真っ先に返事したのはお姫様が着るようなドレスを身に纏った少女。

茶色の肩までかかった髪が印象的な娘でいかにも元気いっぱいである。


『お初にお目にかかります』


続いて丁寧に返事したのは先程の少女と同じで、綺麗なドレスの少女だ。

太陽の光を受けて輝くその長い金髪はドレスのおかげで更に映えて見える。


『あ、あの……初めまして……』


最後にオドオドとしながらも返事したのが猫の獣人の少女。

他の三人とは違い、一人だけが和風の着物を着ている。


樹の下では彼らの母親達だろうか、彼女らが微笑ましそうに子供達を見ている。

一方子供達はそんな事は露知らずに自己紹介へと進んでいた。


『僕の名前はね、シグレって言うんだ! 漢字で書くとこう書くんだって!!』


そう言ってシグレは地面に木の枝で『時雨』とたどたどしく書いた。

それを覗き込んだ三人は多種多様な反応だった。

一人は眉間に皺を寄せ、一人はふむふむと納得したような表情を浮かべ、一人は何をしているのか興味津々……といったように三人が違う表情を浮かべている光景は見ていて面白いものだ。


『でもこれって、ときあめ……って読むんじゃないの?」


茶色の髪の少女が何気なく尋ねる。


『えっ……でも母上がこう書くんだって』

『大丈夫ですよ。時雨とかいてシグレと読むのは合ってます』


金髪の少女のフォローでシグレはほっと安堵する。


『漢字には特別な読み方もありますの。五月の雨と書いて五月雨と読みますし、海豚とかいてイルカと

読みます』

『ふーん……。えーと、よく分からないからトキ君でいい?』


茶色の髪の女の子が黒髪の男の子に尋ねる。

すると男の子は少し考えてからニカッと笑った。


『トキ……か。うん。別にいいよ!』

『それじゃあ、ワタクシもトキ君って呼ばせてもらいます』

『アタシも、トキって呼ぶー』


金色の髪を持つ女の子と赤い髪を持つ周りの子より一回り小さく、獣の耳がある女の子もそれに習ってトキと呼び出した。


『ありがと! 私はサン。呼び捨てで構わないよ!』

『ワタクシはアイシャスです。気軽にアイシャとお呼び下さい』

『うん。よろしく、サン。アイシャ……ん?』


ふとシグレは自分の服の裾を引っ張られるのを感じた。

後ろを振り向き視線を下げると自分の服を掴んだまま此方を見詰めてくるのは猫の獣人の少女だった。


『トキ……』

『ん、何だい?』

『イグサ』


一瞬、少女が何を言ったのかが理解できなかったが、シグレはすぐにその意味を理解して少女の頭を撫でる。


『よろしくね、イグサ』

『シグレ』

『ん?』

『よろしく』


その時のイグサの表情は初めて見せた満面の笑顔だった。


それから四人にとってはこの場所で遊ぶ事が最大の楽しみとなっていった。

ある時は森で木の実を集めたり……


『美味しそう……いただきます!!』

『あ、サン。その木の実苦い奴……』

『っ! に、苦い』

『がっつぎすぎです』

『トキ、苦い……』

『イグサも、だね』


ある時は近くの川で釣りをしたり……


『やった、また一匹!』

『トキ君凄いね~。これで五匹目だよ!』

『……釣れません』

『アイシャにも釣れるって。ところでイグサは?』

『手で取ってくる、って言って裸になって飛び込んでたよ』

『や、野生的だね』

『……釣れません』


ある時は鳥の観察をしたり……


『トキ、ヤシャツバメがいる!!』

『本当だ。あっちにいるのはイワツツキだね』

『珍しい鳥がたくさんいますね』

『ねえねえ! あれってハチドリでしょ? 本で見た事あるよ!』

『ハチドリってそんな鳥……あれって巨蜂……蜂――――!!』


何だかんだでとても楽しい日々を送っていた。

だが、森で遊んでいるのだから当然危険な事もあった。


それはいつものように四人で森の中へと遊ぶために入った時だった。

太陽が見えないどんよりとした曇りの日、シグレ達は直面した事のない危機に瀕していた。


『あ、あわわわわわ……どど、どうしよう……』

『茶色と白の体毛、鳥のような鋭い嘴。背中にある一対の大きな翼……生物学名グリフォン。各地の森を転々と移動する龍種の一種で性格は極めて獰猛……風を操る力を持つが、天候が極めて良好のときにしか使えず、今日のような曇天や雨の場合は鋭い爪と長い尾で攻撃する。また機動力もワタクシ達を余裕で上回りますわ』

『トキ……恐いよ…』

『ぼ、僕が守るから! 絶対に皆を守るから!』


腰に携えてある鞘から剣を抜き取り、グリフォンに向けると同時に自分を激励するために大声で叫ぶ。

後ろの三人は恐怖のあまりに真ん中にいるアイシャスに縋り付く様にして固まっている。


『僕が、僕が守らないと……こんな時のために父上に剣術を教えてもらってきたんだ……うおおおおおおおお!!』


震える足を叱咤して剣を真上に振りかぶりながらグリフォンへと走る。

だが、振りかぶった剣を振り下ろす前にグリフォンの振るった長い尾によって吹き飛ばされてしまった。

自身の体に鈍い痛みが走るが後ろの三人をこれ以上怯えさせる訳にはいかなかった。

シグレはその思いと共に執念で地に足をつけ、辛うじて三人の前で留まることができた。


『と、トキ君……』

『大丈、夫。大丈夫だから』


口では強がりを言ったものの身体が軋むのは止められない。

例えシグレがここで倒れたとしても、グリフォンはそんな事はお構いなしにサン達を続けて襲うだろう。

それだけはどうしても避けなければならない、とシグレは無意識に考えていた。


『僕が守らないで誰が守る……。僕が、僕が……』


切っ先が地に付いた重く感じる剣を持ち上げ、再びグリフォンへと向ける。

さらに、先程よりも大きく剣を振りかぶって……シグレは走った。


『守るんだああああああああぁぁっ!!!』


自分に向かって駆けてくるシグレに向かってグリフォンが爪でのカウンターを繰り出すべく大きく振り上げる。

その瞬間だった。

誰もいないはずのまったくの別方向から地を走る無数の氷の槍がグリフォンを貫き、氷塊の中へと閉じ込めてしまった。

無我夢中で駆け出していたシグレが振り下ろした剣は止める事も叶わず氷塊に当たりキンッと音を立てる。


『……誰……』


シグレはゆっくりと氷が走ってきた方向をみやった。

だが、尾で打たれた際に出来た傷から流れ出す血で目が霞んでいるため誰が走ってきたのかまでは確認出来なかった。

ただ、助かった。

それだけ理解する事が出来たシグレは剣を地に落とし、意識を失った。



それから三日間シグレは昏睡状態だった。

目が覚めた朝に母上に事情を聞けば、自分達を助けに来てくれたのは母上達という事が分かった。

何故危険な事が分かったのか、と一番の疑問点を訊いてみると母上は安心しきった顔で答えてくれた。


『貴方がその首飾りをつけている限り、貴方に危険が迫ればわたしの首飾りが赤くなるの。便利でしょ?』



身体を動かせるようになってからあの丘にも行った。

シグレはサン達からかなりのレベルで心配されたが『大丈夫』とだけ答えると、サン達も良かったと言わんばかりに笑っていた。

それからまた遊んだ。今度は森の奥には入らないようにして。


それから二ヵ月後、夕方。


『トキ、お母さんが明日雪が降るって言ってた』

『わぁ……明日が楽しみだね』

『トキ君トキ君! 雪が降ったら雪合戦だね、雪だるまだね!』

『……かまくらなんてどうでしょう』


やいやい意見が飛び交う中、イグサがくいくいっとシグレの服の裾を引っ張った。


『トキ、アタシ一番最初に来て皆待ってるね。お味噌汁持って待ってる』

『ありがとう、イグサ。じゃ、また明日』

『明日絶対に行くからね!』

『お約束します』


この時は誰もが思わなかった。

この約束が果たされる事はない事を。

再び出会うのが十年ほど先である事を。


シグレ達の夢は、ここで途切れた。




   ***




龍の鳴き声が聞こえる。

苦しげな龍の鳴き声と崩れる壁の音が。

幸か不幸か、騒音のおかげで俺は意識が戻ったらしい。

ゆっくり目を開けると目の前には銀のセミロングを揺らし、涙目になりながら必死で治癒の術式を展開しているアニーがいた。


「アニー?」

「っ! シグレ兄様、気づかれたのですね!! 治癒術を掛け続けた甲斐がありました!!」


俺が気づいた事がよっぽど嬉しかったのか、アニーが治癒の術式を展開したまま飛び込んできた。


「もし、もしシグレ兄様がこのまま目を覚まさなかったら私は、私は……」


震えるアニーの肩をそっと押さえてゆっくりと頭を撫でてやると、落ち着いたのかアニーの震えはなくなっていった。

アニーには悪いが今は状況整理が先決だ。


「アニー。アニーが来てからの事でいい。何が起きていたか教えてくれないか?」

「は、はい! 私が来た時はもうシグレ兄様もサン姉様もイグサ様も倒れていて…………」


涙で濡れた目じりを服の袖でグシグシとふき取り、少し嬉しげな表情になる。

治癒の術式を展開し続けたまま、アニーは今の状況に至るまでの知りうる経緯を話し始めた。




   ***




「おお、シグレが目を覚ましたみたいだ。レクリフ、あの娘の治癒術はなかなかのものだな」


グラスノア王であるオーディンはシグレが目覚めた事にただ嬉々としてレクリフへと話しかける。

しかし、肝心のレクリフはずっとシグレの方を見詰めたままだった。


「どうした」


思わずオーディンが問い掛けるとレクリフはシグレの方を向いたまま、受け答えた。


「いえ、あの少女の治癒の術式……」

「だから言っておるだろう。あの娘の治癒術はなかなかのものだな、と」


するとレクリフはこめかみを押さえ、重く深い溜息をした。

呆れを思わせるその溜息にオーディンは少しばかり頭にきて声を挙げる。


「な、なんだその溜息は!」

「王。貴方様は戦場から離れられていささか観察力が鈍られているみたいですね」

「どういうことだ!」

「あれをご覧ください」


レクリフが示す方向に視線を向けるとシグレとオーディンが知らない少女がいるだけだ。

オーディンは再び抗議の声をあげる。


「シグレとあの娘しかいないだろう。あの二人と俺の観察力が鈍った事に何の関係がある!」

「その少女の、展開している術式をよくご覧になってください」

「術式だと?」


すぐさまオーディンはアニーの術式へと目を向ける。

別段変わったところは無いだろうと思いつつも暫く眺めていると、おかしな点に気づいた。


「あの治癒の術式……地属性の初歩の初歩レベルの術式じゃないか! その術式で何故あそこまで負傷したシグレ達を……」

「術式にはそれぞれ治せる程度が決まっているはず。地属性のあの術式ならば治せはしても気休め程度にしかならないはずです。それが限度を超えて治せているという現実が目の前にあります。考えられる可能性は……」

「術式の限界を超す事が出来るほどの使い手か、もしくは特殊な力を持っているか。ありえないとは思うが薬でドーピングでもしてるか」


オーディンが一つずつ挙げていくが、レクリフは言葉の最後―――つまり薬の可能性のところで静かに首を横に振った。


「少女の魔力にまったく淀みが見られない時点で薬の可能性はありませんね。気になる所といえば彼女の魔力の色が地属性にしては明るい感じがするという所でしょうか」

「は? 属性は己が自身の写し身。明度や濃度、色合いは十人十色だろう。気にする所か?」

「いえ。そういった問題ではなく……何と申しましょうか。所々がラメが入っているかの如く光っているのです」


オーディンも全てを見通すかのようにアニーの魔力の色を見たがすぐに目を閉じた。


「……あの娘の事については俺達がこれ以上詮索すべきじゃないな。今はただ、成り行きを見守る。それだけだ」

「かしこまりました」




   ***




『グギャアアアアアアアアアァッ!!』


龍の悲鳴にも似たような叫びは辺りの物体を振動させながら部屋中に響き渡った。

それも全ては一人の素手で戦う謎の少女の力のせいに他ならなかった。

流麗な動きは龍の攻撃を余すことなく全て避け、早く鋭い攻撃は龍の堅甲な鱗を粉々に砕いてゆく。


アニーの状況説明を聞き終えたシグレはすっかりヴァルナと名乗る雪色の少女の動きに目を奪われ、立ち尽くしていた。

そんな中、彼女が一瞬だけ此方を見た気がした。


『マスターの意識が覚醒したのを確認しました。……要契約のための時間を稼ぎます』


まるで舞を舞うような動きは更に加速。

龍という存在に臆する事もなくヴァルナは大胆かつ華麗な動きで龍に接近していく。

接近したヴァルナは射程距離に入るや否や龍の顔の前へと跳び、猛烈な連続攻撃を繰り出した。

空中での回し蹴り二撃。蹴り上げからの踵落としの二撃。放たれた二撃の正拳。

更に二撃の回し蹴りを再び放ち、龍が怯んだ瞬間を見逃さずに怒涛の勢いでの連続の蹴りが叩き込まれた。

そして最初の回し蹴りから数えて額への十三撃目を放った後、少女は龍の額を支えに大きく飛び上がった。

飛び上がり際に始めた前方への回転は飛び上がっている間も、重力に逆らわずに落ちてくる間もその回転数をどんどん増やしていく。


『くらいなさい……七対(チートイ)――――連撃(レンゲキ)


前方への超高速回転から繰り出される恐ろしい速さから繰り出される回転の勢いを載せた踵落とし。

ヴァルナが放った重い一撃は龍の額に炸裂し、計十四の連撃は龍の動きを完全に止めてしまった。

倒れる事もなく止まったままの龍にヴァルナは更に追い討ちをかける。


『続いていきますね』


いつのまに移動したかのわからないヴァルナは龍の腹の下で深く腰を落としていた。

左手で腰の横に構えた右手首を握って、氷の属性が宿った右拳っを真っ直ぐに龍の腹へと向けている。


六花平和(リッカピンフ)


次の瞬間、風を切る音と共に鈍い打撃音が響き渡り、ヴァルナが正拳をお見舞いした箇所から少しずつ龍の身体が凍てついていく。

ヴァルナはその事を確認すると、軽快な動きで跳んできて、邪魔だとは思いつつも龍と少女の方へと近づいていた俺の目の前で跪いた。

思わず俺は慌ててしまう。


「お、おい」

『先程は緊急の事態でしたのであまりお話できませんでしたが……ようやくお会いする事が出来ましたね、マスター』


依然、俺の目の前で跪き続ける彼女に俺も、離れた場所で寝ているサンとイグサの傍らにいるアニーも動揺を隠しきれなかった。

それもそのはずだ。

何たって自分達が知らない人物から『主』と呼ばれているのだから。


『何故か私、ヴァルナはマスターからかけ離れた所で具現しまして。マスターの元へと辿り着くのに時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。さて、些か急ではありますが今後の事について……』

「ちょ、ちょっと待った!!」

『? 何か?』

「さっきからマスター、マスターって……お前は何なんだ」


ヴァルナと名乗る少女は俺が何を言っているのかがよく分からないらしく、しばらく不思議そうな顔をしていたがやがてハッとした顔になり、少し頬を赤く染めた。


『これは失礼しました。まだ挨拶らしい挨拶もしていませんでしたね。私、ヴァルナは氷の精霊であり、マスター、あなたの守護精霊として具現しました。あなたを、マスターを守るために』


一瞬、時が止まった気がした。

アニーはもはや唖然としていて何も耳にはいってない様子だ。

その後すぐに俺の頭の中でフラッシュバックしたのは朧の里でカグヤさんに守護精霊を吹っ飛ばされたことだった。

ヴァルナの話から察するに、本当に俺の守護精霊らしい。

カグヤさんのクゥを見ていたから守護精霊は獣かなとは思っていたがまさか人の容姿をしてるとは。


「……とりあえず、ヴァルナが俺の守護精霊だって事は分かった」

『分かっていただけましたか。それでは……主従の契約をさせていただきます』

「主従の契約?」


初めて聞く単語に俺はヴァルナに疑問形で返した。


『守護精霊と主は主従の契約を結ぶ事で共にいる事を、共に戦う事を誓います。例え味方が全て破れ去り、マスターが一人になろうとも。例えマスターが悪の道を進み、世界中全てを敵に回そうとも。生涯付き添う事をマスターと精霊の魔力で互いの身体に刻み誓うのです。もっとも契約の方法などはそれぞれ違いますが』

「裏切りを許さない絶対無欠の主従の契約であり破棄される事のない完全なる同盟か……で、どうしたらいいんだ?」

『……まずは目をお瞑りください』


俺は言われるままに目を瞑った。

今は龍も凍っている状態だし、特に危険はないだろう。


その時、丁度良いと言っていいのか分からないタイミングで、気絶していたサンとイグサが目を覚ました。


「う、ううん……私は……」

「あ、れ……? アタシ、確か……って何でサンがいんの!?」

「おお、イグサ。無事でよかった!」

「……ハッ! ……あ! サン姉様、イグサ様気づいたんですね!!」


まだ目をショボショボさせているイグサとシャキッとしているサンの話声に今まで呆けていたアニーも我に返った。

サンは戦闘中と言う事を思い出したのか、自分の掌の中にあるサンライズを少しだけ見た。


「ああ、アニーが治療してくれたのだな。ありがとう」

「い、いえ……私、そんなたいした事は……」

「いや。アニーの治癒術は現に私とイグサの傷を癒したのだからな。十分に凄いと思うし、誇れる力だと私は思うぞ?」


サンに褒めてもらったのがよっぽど嬉しかったのか、アニーは顔を赤くしながら「えへへ」と笑う。

まだ眠気のようなものが残っているらしいイグサは目をゴシゴシと擦りながらも「ところでさ……」と再び口を開いた。


「シグレは? それと何でこんな静かなの?」

「あ、それは……」


それはアニーがシグレの場所を指差し、サンとイグサがその方向を向くのと同時の出来事だった。


『それでは、失礼致します』


俺の顔がおそらくはヴァルナの両手だろう、少し冷たい両手で固定された次の瞬間だった。

ふと何か柔らかい感触のものが俺に唇に触れているのを感じた。

恐る恐る目を開くと目には、目を閉じたままのヴァルナの顔がどアップで映っていたのだった。


「(なっ!!)」

「「「!!」」」


シグレはキスされて……いや、していることに。

サン達は俺とヴァルナがキスをしていることに驚愕し、俺達は氷漬けにされた龍と同じように固まり止ってしまった。


『…………これで契約完了です』


ぷはっ、と俺の唇から自身の唇を離したヴァルナの頬は心なしか赤く見えた。

肝心の俺はというとまだ何が起きたのか頭が理解していない状況だった。

そのまま再び龍の方へと向きなおしたヴァルナから『…………ごちそうさまです』と聞こえたのは多分空耳だろう。

むしろ、空耳だと俺は思いたかった。

「あれ、俺らでてなくね?」byウェイバー

「今回の話での僕らの待遇悪いよね」byカディウス

「というより、更新が遅すぎるから更に忘れ去られる可能性があるのでは……」byカノン

「スミマセン」by作者


キミレキ豆知識:ヴァルナの技『六花平和』の六花とは、雪の異称。

六角形の雪の結晶の形から取られたものである。



こんばんわ、秋月です。

中間テストに修学旅行……これらの行事で更新がかなり遅くなりました。

更に余計な事にその後新型インフルエンザのおかげで寝込んでいた始末。

どうしようもない作者でスイマセン(泣)

もっと更新早くしようとしてますが、他の作者様達みたくさらさらと書き進められません…。

ストーリーを考え、文章で表現。

今更ですがとても難しいです。時間かかります。

根性で頑張っていきます!!


それでは!

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